Ostović H, Šimac B, Pražetina M, Bradić N, Peršec J. The Effect of Intravenous Lidocaine, Ketamine, and Lidocaine–Ketamine Combination in Colorectal Cancer Surgery: A Randomized Controlled Trial. Anesth Analg. 2025; 140: 67–76.
研究の概要
クロアチアの大学病院で行われた無作為化比較試験(RCT) で、対象は大腸がんの開腹手術を受ける患者82人。患者は以下の4つのグループに分けられました。
- リドカイン+ケタミン
- リドカイン+プラセボ
- ケタミン+プラセボ
- プラセボのみ
手術開始時にリドカイン 1.5 mg/kg またはケタミン 0.5 mg/kg を静脈注射し、手術中はそれぞれの持続投与を行いました(リドカイン 2 mg/kg/時、ケタミン 0.2 mg/kg/時)。
結果
1. 炎症マーカーに対する影響
まず、リドカインやケタミン単独、または併用しても、術後12時間および36時間における炎症マーカー(WBC、CRP、IL-6、IL-8)の有意な低下は認められませんでした。
つまり、これらの薬剤が術後の炎症反応を抑える効果はなかったということです。
- CRP(C反応性タンパク) の推移
- 12時間後:リドカイン群 41 mg/L、プラセボ群 53 mg/L(p=0.034)
- 36時間後:リドカイン群 97 mg/L、プラセボ群 113 mg/L(p=0.096)
→ 統計学的に有意な差はなし
- IL-6(インターロイキン-6) の推移
- 12時間後:リドカイン群 236 pg/mL、プラセボ群 250 pg/mL(p=0.729)
- 36時間後:リドカイン群 103 pg/mL、プラセボ群 145 pg/mL(p=0.082)
→ いずれの時間帯でも有意差なし
この結果から、リドカインやケタミンが術後の炎症を抑える効果は証明されませんでした。
2. 鎮痛効果に対する影響
オピオイドの使用量はすべての治療群で減少し、特にリドカインとケタミンを併用した場合、術中のオピオイド使用量がプラセボ群よりも23 µg少なかったことが分かりました。
- 術中のスフェンタニル使用量
- リドカイン群:41 µg(p < 0.001)
- ケタミン群:43 µg(p = 0.001)
- プラセボ群:55 µg
- リドカイン+ケタミン併用群:41 µg(プラセボ群より23 µg減少)
このスフェンタニル 23 µgの減少は、経口モルヒネ換算で約4.6 mgの減少に相当します。
また、術後のVASスコア(痛みの強さ) は、
- ケタミンを投与したグループで 0.63ポイント 低下(p = 0.003)
- リドカイン+ケタミン併用群では 1.0ポイント 低下(p = 0.003)
という結果で、ケタミンが痛みの軽減に寄与している ことが示されました。
一方で、術後48時間の鎮痛薬の使用量については、リドカイン群でケトプロフェンの使用量が増加(+71 mg、p=0.045) しており、リドカイン単独では痛みを十分に抑えられなかった可能性があります。
3. 腸の回復に対する影響
最初の排便までの時間(腸蠕動運動の回復)には、リドカインやケタミンの影響は見られませんでした。
- リドカイン群:20時間(p = 0.488)
- ケタミン群:20時間(p = 0.491)
- プラセボ群:21時間
これらの結果から、リドカインやケタミンが腸の回復を早めるという証拠は見つかりませんでした。
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