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高知県産婦人科医会と高知産科婦人科学会の主催で、2025年5月17日に講演。
📚 背景高知県では、これまで無痛分娩の実施がほとんどなかったが、県と高知大学がタッグを組み、無痛分娩の導入プロジェクトを本格化させている。背景には、妊産婦の満足度向上と医療安全の確保、地域医療の充実がある。加えて、人口減少と分娩数減少が進む中、周産期医療の強化が急務となっている。
🔬 方法無痛分娩の導入に向けて、県や大学が教育体制の整備や専門医の育成を計画。無痛分娩を「産痛緩和」という観点から、薬物を使わない方法(マッサージやアロマなど)と、薬物を使う方法(全身投与・局所投与)に分類して説明。痛みの伝達経路や麻酔の仕組み、脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の違いも詳述し、無痛分娩の理論的基盤をわかりやすく解説した。
📊 結果埼玉医科大学のアンケート調査によると、無痛分娩の導入により「痛みがなかった」「ほとんどなかった」「許容できた」と回答した妊産婦は約88%。満足度は98%と高く、痛みを取ること以上に「産後のケア」「助産師とのコミュニケーション」「緊急時の備え」など、総合的な満足度向上につながることが示された。
🧩 考察高知県では、令和7年度に試行的な導入、令和8年度以降にハイリスク分娩から段階的に実施拡大する計画。ただし、ハイリスク分娩から始めることの難しさ(技術的課題や症例数の少なさ)が指摘され、経産婦の低リスク症例からの段階的な普及が望まれるとされた。また、帝王切開の術後鎮痛にも通じる考え方として、痛み管理は「手段」であり、最終的な目的は妊産婦が主体的に出産を迎えることだと強調された。
✅ まとめ無痛分娩の導入は、痛みを和らげるだけでなく、母体の満足度や安心感の向上、地域医療体制の強化につながる重要な取り組みである。高知県の挑戦は、全国の周産期医療の在り方を問い直すきっかけとなるだろう。
Gleicher Y, Siddiqui N, Mazda Y, et al. Reducing acute hospitalization length of stay after total knee arthroplasty: a quality improvement study. J Arthroplasty. 2021; 36: 837-44.
🧠 背景近年、人工膝関節全置換術(TKA)後の入院期間の短縮と費用削減が求められており、特にバンドル支払い制度の導入が医療機関に質の向上とコスト効率の両立を促している。従来の長期入院から、早期回復を促進するERAS(術後回復強化プログラム)への転換が注目されている。
🛠️ 方法カナダ・トロントのマウントサイナイ病院で実施された単施設前後比較研究であり、2017年を介入前、2018年~2019年を介入後として比較した。多職種チームによるルートコーズ分析を行い、次の4つの介入を含むERASバンドルを導入した:(1)末梢神経ブロック(ACB)、(2)デキサメタゾンによるPONV予防、(3)ルーチンの導尿カテーテル回避、(4)術前教育の強化。
📊 結果平均在院日数は2.82日から2.13日に短縮(p<.001)、2日未満の退院率は18.3%から69.3%へ上昇した。リハビリ転院率は20.2%から10.7%に低下(p=.002)。24時間以内のモルヒネ換算使用量は60mgから38mgへ減少(p<.001)。PONVと中~重度疼痛の発生率も有意に減少し、30日以内の救急受診率も12.9%から7.3%に改善した。
💡 考察本研究の強みは、汎用的なERASプロトコルの導入にとどまらず、施設固有の問題点を根本原因分析で明確化し、それに即した介入を実施した点にある。特に医療資源の限られた中でも、実現可能性の高い介入を厳選し、多職種連携によって実行された点が成功の要因と考えられる。
✅ まとめERASバンドルの導入は、TKA後の在院日数とリハビリ転院率の大幅な削減に寄与し、コスト削減と患者アウトカムの改善を同時に達成した。施設特有の課題に合わせた柔軟なERAS導入が、今後の標準的アプローチとして広がる可能性がある。
1. ゴールを明確化する
2. プロジェクトの目的を特定する
3. 根本原因分析を行う
4. 改善項目を選択する
5. 測定項目を決定する
6. プロジェクトをモニターする
7. 日常診療をアップグレードする
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Ikeda Y, Sugiyama T, Shiko Y, et al. Association between maternal cardiac output and fetal acidaemia in Caesareandelivery under spinal anaesthesia with norepinephrine infusion: a retrospective cohort study. Br J Anaesth. 2022; 130: e4-7.
🧠 背景
帝王切開時の脊髄くも膜下麻酔による母体の血圧低下は、胎児に悪影響を与える可能性がある。ノルエピネフリンは近年、心拍出量を維持しやすいという理由でフェニレフリンよりも好まれるが、心拍出量そのものが胎児に与える影響は明らかでなかった。
🔬 方法
2020年に予定帝王切開を受けた125名を対象に、非侵襲的心拍出量モニター(esCCO)を用いて脊髄くも膜下麻酔から児の娩出までを1分ごとに計測。心拍出量が基準の80%未満であった時間が25%以上の妊婦を「低心拍出群」と定義し、正常群と比較した。
📊 結果
臍帯動脈pH(胎児の酸性度)は、低心拍出群で7.32、正常群で7.33と、統計的有意差はなかった。一方でベースエクセス(酸塩基バランスの指標)は、低心拍出群で−2.66、正常群で−1.81と有意に低下していた。
🤔 考察
母体の心拍出量の低下は、胎盤血流の軽度の低下を示唆する可能性があるが、明確な胎児のアシドーシスには至っていなかった。血圧を優先的に維持する現行の管理方針は妥当と考えられる。ノルエピネフリンの用量や個人差により、過剰な後負荷が心拍出量を下げるリスクもあるため、注意が必要である。
✅ まとめ
母体の血圧を適切に維持していれば、心拍出量の一時的な低下は胎児に大きな悪影響を及ぼさない可能性がある。非侵襲的な心拍出量モニタリングは有用だが、現時点でのルーチン使用は推奨されない。
Rao U, Phillips T, Rao S. Local nitroglycerin to facilitate radial arterial catheterization in adults: a systematic review and meta-analysis. Can J Anesth. 2025;56:1234–52.
🧠 背景
橈骨動脈カテーテル挿入は、周術期モニタリングや冠動脈インターベンションにおいて重要な手技である。しかし、血管痙攣や細径による穿刺困難例が多く、成功率向上と合併症予防が課題となっている。
🧪 方法
2024年2月までに報告された15件のRCTを対象に、局所ニトログリセリン(皮下注射または皮膚塗布)の効果を検証するシステマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。総対象者数は2,370人。
📊 結果
・皮下注射によるニトログリセリンは、初回穿刺成功率を1.61倍、痙攣リスクを0.43倍に改善した。
・皮膚塗布では、初回成功率が2.45倍に向上したが、痙攣予防には有意差なし。
・穿刺までの時間短縮、穿刺回数の減少、血管径の拡大も認められた。
・副作用として懸念される低血圧や頭痛の増加は有意ではなかった
。・全体としてエビデンスの確実性は「低」であった。
🤔 考察
皮下注射によるニトログリセリンは、皮膚塗布よりも吸収率が高く、臨床効果が大きい可能性がある。ただし、収載研究の多くにバイアスのリスクが存在し、さらなる高品質なRCTの実施が求められる。
✅ まとめ
局所ニトログリセリンは、橈骨動脈カテーテル挿入の成功率向上および合併症予防に一定の有用性を示した。今後の実用化には、エビデンスの強化とコスト・供給体制の整備が必要である。
Kim M, Rubright SM, Pham T, et al.Intrathecal morphine 100 µg versus 150 µg for post-cesarean delivery analgesia: a retrospective cohort study (2020–2022). Int J Obstet Anesth. 2025;62:104348. 🧠 背景
帝王切開後の鎮痛に広く用いられている脊髄内モルヒネ(ITM)は、副作用と鎮痛効果のバランスが課題となっている。モルヒネの投与量を150µgから100µgに減量することで、安全性と効果の最適なバランスが得られるかが不明であった。
🔬 方法
2020〜2022年に帝王切開を受けた3,925人を対象とした後ろ向きコホート研究を実施。ITMを100µgまたは150µg投与された患者の術後72時間以内のオピオイド使用量と副作用の発生率を比較した。
📊 結果
100µg群では術後オピオイド使用量がわずかに増加したが、150µg群と比べてかゆみ(オッズ比1.85)や吐き気(オッズ比1.65)の発生率が有意に低かった。
💡 考察100µgのITMは、副作用を大幅に抑えつつ、実用的なレベルの鎮痛を提供する可能性がある。術後の快適さや安全性を重視するケースにおいて有用な選択肢と考えられる。
✅ まとめ
本研究は、帝王切開後の鎮痛において、100µgのITMが副作用のリスクを抑えながら、十分な効果を発揮する可能性を示した。投与量の最適化に向けた貴重な知見を提供するものである。
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