ボイスドラマ〜Interior Dream

ボイスドラマ〜Interior Dream

By Ks(ケイ)、湯浅一敏、インテリアドリームFictionDrama
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ボイスドラマ〜Interior Dream episodes

  • ボイスドラマ「木の温もりと飛騨の匠」後編

    登場人物

    ・娘(24歳)・・・声優を目指す女性/実家から離れて東京で一人暮らしをしている(CV:桑木栄美里)

    ・父(56歳)・・・家具職人/若い頃から飛騨の匠の元で修行して家具職人となった(CV:日比野正裕)

    (SE〜拍手と歓声〜そこにまざってドラムロールの音〜F.O.)

    娘: ステージに立つ7名のファイナリストたち。

    その中に立つ私は、ゆっくりと目を閉じる。

    やがて歓声とドラムロールの音が、私の耳からすうっと消えていった。

    私の頭の中に蘇ってきたのは、幼い日の父の背中。

    ★娘7歳/父39歳

    父: 「いいかい、大きくなっても、温もりを忘れちゃいけないよ」

    (BGM〜inspiring-piano-300473695)

    娘: 父は家具職人。

    幼い私をよく自分の工房へ連れていってくれた。

    木目もあざやかに、磨かれた木材が所狭しと並ぶ小さな工房。

    父は、工具や木工機械で私が怪我をしないよう、

    背中越しに見ているよう言い含めて、いつも私を気遣った。

    ある日、1枚の白木を手にとった父は私を手招きして、

    (SE〜工房の雑踏)

    父: 「ほら、この木をさわってごらん」

    娘: それは、家具に生まれ変わる前の白木(しらき)。

    無垢の清らかな香りが漂ってくる。

    父: 「あったかいだろう」

    娘: そこには、スチールやプラスチックをさわったときとは全然違う

    やわらかくてあったかい感触があった。

    父: 「木の温もり、っていうんだよ」

    娘: 「木の温もり・・・」

    父: 「木は私たち人間と同じで、呼吸しているんだ。

    だから木には体温がある。

    この木で作る家具にも、そのまま温もりが残るんだよ」

    (BGM〜seventeen-street-346951958)

    娘: 確かに父が作る木の家具には、冷たい感触はまったくなかった。

    学校で辛いことがあっても、家に帰って木の家具に囲まれていると

    冷えた心がほんわり暖かく溶けていくような・・・。

    父: 「この椅子を見てごらん」

    娘: それは背もたれの曲線が美しい木製のアームチェア。

    左右の肘掛けにシンメトリーに浮かび上がる木目を見ていて思わず、

    「きれい・・・」

    とつぶやいた。

    父は顔をほころばせて、

    父: 「そうだろう。

    これは”匠”が作った椅子だから」

    娘: 「たくみ?」

    父: 「ああ、たくみさ。

    むかーしむかしに飛騨から都へ送られてお寺とかお城を作った職人だよ」

    娘: 「へえ〜」

    父: 「座ってごらん」

    娘: 「はい」

    座った瞬間、木の温もりに包まれる感じがして、

    心がふわっと軽くなっていった。

    父: 「気持ちいいだろう?」

    娘: 「うん・・・」

    父: 「匠が作る家具はね、毎日のストレスを和らげて、

    安らぎと温もりを与えてくれるんだよ」

    娘: 「ふうん」

    父: 「だから、おまえ自身も、いつだって温もりをなくしちゃいけないよ」

    娘: 「わかった」

    私の方へ振り返ったまま、満足気に微笑む父の笑顔と背中のあたたかさ。

    今でも鮮明に覚えている。

    東京で一人暮らしを始めるときに選んだのも、すべて木の家具たち。

    あ、そうだった。気づかないうちに、私、温もりに包まれていたんだ。

    ★娘24歳/父56歳

    (SE〜会場の大きな雑踏〜そこにまざってドラムロールの音〜F.I.)

    娘: 父と家具たちを思い出しながら

    自分でも不思議なほど落ち着いて、私はゆっくり目をあけた。

    ドラムロールが途切れた次の瞬間、

    私の名前を呼ぶ大きな声が、耳に飛び込んでくる。

    嬉し泣きの声は、歓声と拍手があっという間にかき消していった。

    (BGM〜インテリアドリーム)

    (SE〜拍手と歓声、それにまじってオフで父の「おめでとう」の声)

    娘: 壇上でトロフィーを手にした私が顔をあげると・・・

    客席の一番後ろには父の姿があった。

    笑っているような、でも泣いているようにも見える表情で

    大きく手を叩く父。

    昨日名古屋へ帰るって言ってたのに・・・

    おとうさん、私、おとうさんのような匠になりたい。

    一切妥協せず自分の技能を信じて誇りに思う、職人のような声優。

    大丈夫。私、できるよね。

    匠に、なる。

    だって、私はおとうさんの子どもだから。

    8 min
  • ボイスドラマ「木の温もりと飛騨の匠」前編

    登場人物

    ・娘(24歳)・・・声優を目指す女性/実家から離れて東京で一人暮らしをしている(CV:桑木栄美里)

    ・父(56歳)・・・家具職人/若い頃から飛騨の匠の元で修行して家具職人となった(CV:日比野正裕)

    【Story〜「木の温もりと飛騨の匠/飛騨の家具/前編」】

    (SE〜コンビニの雑踏)

    娘: 「おつかれさまでしたぁ!」

    (SE〜スニーカーで走る足音)

    父: 娘がバイト先のコンビニを出たのは、午後7時10分。

    慌てて走り出そうとする娘を私が制する。

    娘: 「あれ?お父さん!?なんで!?」

    (BGM〜the-springs-peaceful-347491831)

    父: 疑問符を連発する娘に静かに声をかける。

    父: 「明日、大事な声優オーディションなんだろ?」

    娘: 「うん・・・え、それでわざわざ東京まで来てくれたの!?」

    父: 「いや、たまたま東京のお客さんと打合せだったんだよ」

    娘: 「あ、そう・・・」

    父: 「えっと、あ〜実は、ちょっと、軽く弁当作って持ってきたんだ」

    娘: 「え、うそ?」

    父: 「父さんの手作りだから美味くはないけど。

    よかったらで一緒に・・・」

    娘: 「私、今日は早く帰って発声練習とルーティンの課題をこなしておかないと」

    父: 「そうか、そうだったな、じゃあ、もう帰るから。父さんも明日仕事早いからな」

    娘: 「そんな・・・」

    父: 「なあ、あんまり生き急ぐんじゃないぞ。

    たまには歩みを止めて、深呼吸しなさい」

    娘: 「わかってる・・・」

    父: 「明日がんばってな」

    娘: 「うん・・・」

    (SE〜街角の雑踏)

    父: 娘は私の顔をチラリと見てからアパートへ向かった。

    私は反対方向へ歩き出す。

    さて、このあとはどこか適当な居酒屋で夕食を摂るか・・・

    娘が名古屋を出て東京で一人暮らしを始めたのは6年前。

    あのときの娘と私は、一緒に家具屋へ行くほど距離が近かった。

    ★娘18歳/父50歳

    (SE〜インテリアショップの雑踏)

    娘: 「お父さん、口だししちゃいやだよ。私が選ぶんだから」

    父: 「わかってる」

    (BGM〜inspiring-whisper-347314386)

    父: 私の仕事は、家具職人。

    だから家の中は、私の手による、まさに一点ものの家具に囲まれていた。

    食卓も、箪笥も、学習机も、ベッドも、すべて木の家具だった。

    娘からはよく、どうして木の家具しかないの、って訊かれたっけ。

    それは、匠の心と木の温もり。

    むかし、飛騨の匠たちが都へ呼ばれて、宮殿や寺院を建立したときも

    きっと木の温もりを感じながらノミをふるっていたに違いない。

    娘は自分の部屋にどんな家具を選ぶのだろう。

    インテリアショップで楽しそうに見てまわる、娘の笑顔。

    いつまでもこの笑顔を忘れずにいてほしい。

    (SE〜インテリアショップの雑踏)

    娘: 「選び終わった」

    父: 「早いなあ」

    娘: 「だって、小さな部屋だもん。そんなに家具必要ない」

    父: 「どれどれ・・・」

    (BGM〜sunrise-300537095)

    父: 娘の選んだ家具を見て、思わず息を呑んだ。

    いや、まあ、当たり前と言えば当たり前か・・・。

    食卓、ソファ、ベッド、デスク。そのすべてが木の家具。

    手触りも滑らかで柔らかく、デザインは真っ白だ。

    まるで声優になりたい、という夢への挑戦を表現するかのように。

    娘: 「どうかな・・・」

    父: 「い、いいんじゃないか。全部木の家具・・・なんだな」

    娘: 「うちの家具だって、みんな木じゃない」

    父: 「ああ」

    娘: 「お父さん、いつも木には”温もり”があるって言ってたでしょ」

    父: 「うん」

    娘: 「だから、新しい生活をはじめるときも

    寂しくないように、温かくて優しい木の家具にするんだ」

    父: こうして、木の温もりに包まれた娘の新生活がスタートした。

    あれからもう、6年になるのだな・・・

    娘はコンビニでアルバイトしながら、声優を目指して日夜頑張っている。

    ★娘24歳/父56歳

    (SE〜街角の雑踏〜走ってくる靴音)

    娘: 「おとうさん」

    父: 「あ、どうしたんだ?バイト先にわすれものか?」

    娘: 「ううん。

    やっぱり・・・一緒にごはん食べない?」

    父: 「ん?」

    娘: 「久しぶりにおとうさんのまずい料理食べたくなって(笑)」

    父: 「そうか・・・(笑)」

    (BGM〜インテリアドリーム)

    (SE〜歩き出す2つの靴音)

    父: 「あ、なあ、知ってるか。

    木の家具って、釘とかビスとか冷たい金属は表面に見えないだろ?」

    娘: 「なあに?とつぜん」

    父: 「だから、日常のストレスを和らげて、安らぎと温もりを与えてくれるんだよ」

    娘: 「そっか。私、気づかないうちに、温もりに包まれていたんだ」

    父: 「おまえも、これから仕事がどんどん忙しくなっていって、

    息つく暇もなくなって、心に余裕がなくなっていっても、

    温もりを忘れずにいるんだよ」

    娘: 「うん」

    父: 「心のあったかい声優になれるといいな」

    娘: 「おとうさん、実はね、

    私が目指してるのは、・・・”匠”なんだ」

    父: 「え?」

    娘: 「おとうさんが思ってるような、可愛いだけの声の声優じゃなくて」

    父: 「そんなこと思ってないけど」

    娘: 「さりげなくやっていることの一つ一つが高度で緻密、しかも的確。

    納得できるクオリティに仕上げるまでとことん探求する。

    一切の妥協も許さない」

    父: 「ああ・・・」

    娘: 「なりたいのは、そんな声優。

    それって・・・」

    父: 「”匠”だな」

    娘: 「お父さん、やっぱりわかってる」
    父娘: (笑い合う)

    8 min
  • ボイスドラマ「あの日の入学式」後編

    登場人物

    ・娘(5歳/18歳)・・・小学校入学前/東京の大学へ入学が決まる(CV:桑木栄美里)

    ・兄(6歳/19歳)・・・小学校入学直前/東京の大学で先に一人暮らしをしている(CV:日比野正裕)

    【ストーリー】
    娘: 「おにいちゃ〜ん!」

    兄: 新入生を迎える在校生の最前列に並ぶ僕を見つけて、妹は大きく手を振った。

    左右に並んだ家族席では、父と母がいまかいまかと待っている。

    いつものように大きな声で応援する父と、

    あ、おかあさん、また泣いてる・・・

    母の涙に気づいた父は、笑いながらハンカチを手渡す。

    そう、母は1か月前の卒園式でも、3年前の入園式でも大粒の涙を流していた。

    僕も妹も、そんな母が大好きだった。

    無口で口数は決して多くないけれど、誰よりも僕たちを愛してくれる母。

    そんな母の代わりにいつも僕たちを励まし、守ってくれたのは、男気のある父だ。

    僕たち兄妹は、両親の大きな愛に包まれて育っていった。

    2年前、僕たち家族4人でインテリアショップへ出かけたとき、

    (SE〜インテリアショップの雑踏)

    兄: 「お前が好きな学習デスク、あるといいな」

    娘: 「うん!あ、でも今日は、お兄ちゃんのデスク選ぶんでしょ」

    兄: 「いや、オレはゲームしてるから」

    娘: 「え、いいの?」

    兄: 「気に入るの見つかるといいな」

    娘: 「やったぁ!」

    兄: 僕たちの会話を聞きながら、父は優しく微笑む。

    父の横に立つ母はもう目が潤んでいる。

    娘: 「ママ、泣いてるの?悲しいの?」

    兄: 「ううん、そうじゃないんだよ。

    ママはね、嬉しいと涙がとまらなくなるんだって」

    娘: 「ふうん」

    兄: 「さあ、このいっぱいの学習デスクの中から、

    お前のデスクを早く見つけ出してこい」

    娘: 「わかった!」

    兄: 父と母に手をひかれた妹は、じっくりと、本当にじっくり、

    ひとつずつ手で触れながら学習デスクの森を歩いていく。

    そのなかのひとつ、白い色の学習デスクに触れた瞬間、妹は目を輝かせて叫んだ。

    妹: 「私、これがいい!」

    兄: それは、大好きな生クリームのように真っ白な木製のデスク。

    触ると、柔らかくてあったかい、木の優しさが伝わってきた。

    父は笑顔でうなづき、母は目を潤ませて、妹の頭を撫でている。

    妹: 「あ、でも、こっちも・・・」

    兄: 最初に見つけたのは左側に置いてある、エッジに茜色のラインが入ったデスク。

    その右側には藍色のラインが煌めくデスクも置いてあった。

    妹: 「どうしよう、決められない」

    兄: 「じゃあオレが、もう片方のにするよ」

    妹: 「え〜」

    兄: 結局、父は学習デスクを2台購入した。

    妹が選んだのは茜色のラインが入ったデスク。

    そして、僕が藍色のラインの方になった。

    (SE〜階段を上ってくる小さな足音)

    兄: 「お〜い、もう夕ご飯の時間だぞ」

    妹: 「もうちょっと・・・」

    兄: 「しょうがないなあ、また学習デスクに座ってるのか」

    妹: 「だって、楽しいんだもん」

    兄: 「あーあー、お菓子こぼしちゃって・・・

    あー、アニメのシールまで」

    妹: 「だって・・・」

    兄: 「来年小学校へ入るときは汚れちゃってるんじゃないか」

    妹: 「そんときはキレイにするからいい」

    兄: 学習デスクは、妹にとって、自分だけの特別な場所になっていった。

    (SE〜朝の雑踏)

    妹: 「行ってきます!」

    兄: 笑顔いっぱいの妹が、入学式に出かけていく。

    出かける前、部屋の扉越しに声をかけたのは・・・

    いつも座っていた自分の学習デスク。

    そう、入学前の1年間、家にいるときは毎日学習デスクに座り、

    デスクに話しかけながら過ごしてきたのだから。

    なんだか、学習デスクも、

    行ってらっしゃい、

    と返事をしたように見えた。

    (SE〜小学校入学式の雑踏/「おめでとう!」という声があちこちでから飛ぶ)

    兄: ぶかぶかの制服に身を包んだ妹が、会場のステージに向かって歩きながら

    父と母に大きく手を振る。

    その姿を見て、また母が涙ぐむ。

    その横で、父が母を見て笑う。

    その2人を見て、妹が手を振りながら笑う。

    僕は、妹と父母を交互に見ながら、より幸せな気分になっていった。

    (SE〜家庭内の雑踏)

    妹: 「じゃあ、もう行くね・・・」

    兄: あれから12年。

    妹は念願の東京の大学に受かり、家を離れることになった。

    一人暮らしの小さな部屋に学習デスクは連れていけない。

    最後に家を出るとき、妹は学習デスクにそっと触れた。

    そう、まさにあの時、インテリアショップで

    初めてこのデスクに出逢った時と同じように。

    妹: 「いつも寄り添ってくれてありがとう・・・」

    兄: 使い込んだデスクの表面には、インクの染みとシールを剥がした痕。

    それは、デスクが長年連れ添ってきた無二の親友である証だった。

    もう一度、デスクの表面を愛おしそうに(やさしく)撫でながら、妹が呟く。

    娘: 「いままで、本当にありがとう・・・私の大切な家族」

    9 min
  • ボイスドラマ「あの日の入学式」前編

    登場人物

    ・娘(4歳/18歳)・・・小学校入学前/東京の大学へ入学が決まり名古屋を離れることに(CV:桑木栄美里)

    ・父(49歳/62歳)・・・建築関係の会社を経営/いつでも末娘が愛しくてたまらない(CV:日比野正裕)【ストーリー】

    娘: 「いままで、本当にありがとう・・・」


    娘: インクの染みとシールを剥がした痕が残る学習デスク。

    私は木製の白い表面を撫でながら、13年前のあの日を思い出していた。

    (SE〜インテリアショップの雑踏)

    娘: 「わあ!学習デスクがいっぱい・・・」

    父: 「あんまり目移りしてると、決められなくなるよ」

    娘: 「まるでデスクの海みたい」


    娘: 初めて父と母に連れてきてもらったインテリアショップ。

    波間をただよう舟のように、学習デスクの海の中を

    父と母と、手をつないで見てまわる。

    私の足が止まったのは、2台並んでディスプレイされたシンプルな木製のデスク。

    真っ白に磨かれた天板がキラキラと輝いて見えた。

    左側のデスクはエッジに茜色のラインが入り、

    右側のデスクには藍色のラインが煌めいている。

    どちらかを決めるのは、4歳の私にとって簡単ではなかった。

    父: 「決められないのかい?」

    娘: 「うーん・・・」

    父: 「わかった」

    娘: 小さな頭で悩む私の横で、父は店員さんを呼ぶ。

    父: 「この2台、ください」

    娘: 「え?」

    娘: 父は訳あり顔で笑うと、私の肩越しに兄を指差した。

    学習デスクコーナーのすみっこでゲームをしているのは、私の1つ上の兄。

    そうだった、今日はこの春小学校に入学する兄の学習デスクを見に来たんだ。

    兄に聞こえないように、少し声を落として父が、

    父: 「君(お前)が好きな方を選ぶんだよ」

    娘: と言って、優しく微笑む。

    娘: 「ありがとう!」

    父: 「大切に使おうね」

    娘: こうして、小学校へ入学するよりも前に、

    学習デスクは私の元へやってきた。

    入学するまでの1年以上、

    私は、宿題もないのに、毎日学習デスクに座って本を開いた。

    私だけの特別な場所。

    そこは私にとってかけがえのない空間だった。

    (SE〜扉を開ける音〜デスクにかばんを置く音)

    娘: 「ただいま」

    娘: 小学校から中学、そして高校へ。

    いつだって、家に帰ると自分の部屋に直行して、まず学習デスクに声をかける。

    疲れていても、学習デスクが優しくつつんでくれる気がした。

    私の学生生活は、放課後、夕方から放送部、

    そのあとバレエスタジオで夜までバレエのレッスン・・

    家に帰ると、学校の宿題、テスト勉強、受験勉強・・・。

    時には机の上で寝落ちてしまい、知らず知らずインクの染みで

    汚してしまうことも。

    (SE〜扉を開ける音〜デスクに小皿を置く音)

    娘: 「あ・・・」

    父: 「(これ  )母さんから」

    娘: 学習デスクの上で食べる夜食がホントに美味しくて・・・

    美味しくて涙が出るなんてあるんだ、って知った。

    (SE〜扉を開ける音)

    父: 「風邪ひくぞ・・・」

    娘: 寝落ちした私の肩に毛布をかけてくれた父。

    優しい声は頭の中の片隅で聞いていた・・・

    嬉しい時、悲しい時、楽しい時、辛い時。

    学習デスクは私の表情を全部知っていて、どんな時も私のそばで見守ってくれた。

    私の学習デスクは、私の家族の一員だった。

    そして・・・

    (SE〜大学キャンパスの雑踏)

    父: 「おめでとう」

    娘: 第一志望の大学に合格し、上京することが決まったとき、

    一人暮らしの小さな部屋に、学習デスクは連れていけなかった。

    家を出る日、私はもう一度学習デスクに座った。

    最後にその暖かい感触を確かめるように。

    インテリアショップで初めて出会ったときのピカピカのイメージは消え、

    使い込んだデスクの表面には、インクの染みとシールを剥がした痕。

    それもいまは、ぼんやりかすんでよく見えない。

    あの日、学習デスクの海の中でひたすら輝いていた、私のデスク。

    あの日と同じように、もう一度、そっと触れる。

    初めて出会ったあの瞬間のときめきを、一筋の寂しさに変えて。

    娘: 「いままで、本当にありがとう・・・私の、大切な家族」

    8 min
  • ボイスドラマ「ダンサー・イン・ザ・ライフ」後編

    登場人物

    ・彼女/城田(16歳/18歳/26歳)・・・高校の演劇部出身。スポーツジムで働きながらミュージカル女優を目指している(CV:桑木栄美里)

    ・彼/一ノ瀬(16歳/18歳/26歳)・・・高校の演劇部出身。コンビニでバイトしながら演劇を続ける劇団員。城田とは同級生で友達以上恋人未満(CV:日比野正裕)

    【ストーリー】
    彼: 「おつかれ!終わったな!!」

    彼女: 「おつかれさま!」

    彼: その日は大学演劇部の卒業公演だった。

    卒業公演が終わったら芝居とは一切縁を切る、という部員も多い。

    恋人役の彼女が手を差しのべてくる。

    彼女は、高校時代から友達以上恋人未満。

    どちらかと言うと、ほとんど友達なんだけど。

    彼女: 「あとは卒業式ね」

    彼: 「来月からはオマエ、社会人か」

    彼女: 「あなたもでしょ」

    彼: 「オレの本業は役者。昼の顔はただのアルバイトさ」

    彼女: 「私だって目指すのは、ミュージカルの舞台よ」

    彼: 「まあいいさ、これからは別の道を歩くってこと」

    彼女: 「そっか・・・」

    彼: 2人ともたぶん同じことを考えているのだろう。

    卒業したら、それぞれ家を出て一人暮らしをする。

    それでも、2人の間から恋人というワードは遠ざかり、

    今よりもっと友達の方へ傾いていくに違いない。

    彼: 「なあ」

    彼女: 「なあに?」

    彼: 「家具、見にいかないか?」

    彼女: 「え」

    彼: 「オレもオマエも、これから一人暮らしするんだろ」

    彼女: 「うん」

    彼: 「オレ、まだなんにも準備してないんだよ」

    彼女: 「じゃあ、あのアウトレットの家具屋さん行く?」

    彼: 「ああ、高校時代にオマエが背景係だったとき、よく行ってとこだよな」

    彼女: 「あのあとアウトレットからインテリアスタジオに変わって

    オシャレなインテリアがいっぱいあるのよ」

    彼: 「へえ」

    彼女: 「あなた、センスないから、

    コーディネーターさんにコーディネートしてもらった方がいいと思う」

    彼: 「悪かったな」

    彼女: 「ふふ・・・」

    (SE〜家具店の店内)

    彼: 「新生活応援?」

    彼女: 「応援してもらったら?」

    彼: 壁に大きくディスプレイされた「新生活応援」のPOP。

    ベッド、ホームワーク用のデスク、カウチソファ、TVボード・・・。

    彼女が大好きな北欧スタイルのディスプレイから、

    今流行りのブルックリンスタイルまで、見ているだけでワクワクするもんだな。

    彼女: 「家具を選ぶ基準って、なんだと思う?」

    彼: 「え?っと、耐久性とか機能性だろ?」

    彼女: 「もちろん、それもそうだけど、一番大事なのは”夢”じゃないかしら」

    彼: 「夢?」

    彼女: 「頭の中で、自分の部屋に、あなたが気に入った家具を置いてみて」

    彼: 「う〜ん、・・・よし、置いた」

    彼女: 「その家具の中で暮らせば、”夢”を失わずにいられる?」

    彼: 「ああ・・・、そうか・・・」

    彼女: 「難しいけど、それが選ぶ基準じゃないかしら」

    彼: たいせつなものは目に見えない、ってことか。

    ”夢”がなかったら、生きていく意味もない。

    それは、彼女だって同じだろう。

    お気に入りの家具に囲まれて、”夢”をつかむためにがんばる2人。

    そんな姿を頭に描きながら、

    新生活をディスプレイした家具から”夢”を探していった。

    (SE〜観客の大歓声/舞台のイメージ)

    【BGM〜インテリアドリーム】

    彼: 大学卒業から10年。

    彼女の夢はついに叶った。

    昼間、スポーツジムで働きながら、夜オーディションを受ける日々。

    やがて、ミュージカル劇団から声がかかり、

    ブロードウェイでも上演される有名な作品に出演が決まった。

    ステージのセンターに立ち、満員のオーディエンスの前で歌い、踊る。

    客席の最前列で祝福するオレの声は歓声にかき消されていく。

    カーテンコールのあと、舞台裏からオレのところまで走ってきた彼女は、

    彼女: 「今度はあなたの番よ!」

    彼: 「ああ!そうなったら、君との新生活へ誘うよ!」

    彼女: 「なにそれ」(笑)

    彼: 目には見えないたいせつなもの。

    今度はきっと、オレが手にいれる。

    7 min
  • ボイスドラマ「ダンサー・イン・ザ・ライフ」前編

    登場人物

    ・彼女/城田(16歳/18歳/26歳)・・・高校の演劇部出身。スポーツジムで働きながらミュージカル女優を目指している(CV:桑木栄美里)

    ・彼/一ノ瀬(16歳/18歳/26歳)・・・高校の演劇部出身。コンビニでバイトしながら演劇を続ける劇団員。城田とは同級生で友達以上恋人未満(CV:日比野正裕)

    【ストーリー】

    彼: 「なあ、アイス食べて帰らないか?」

    彼女: 舞台メイクを残したまま彼がアイスクリームショップへかけていく。

    高校の部活帰りにいつも寄り道していたのは、私と、私の親友、そして、彼。

    演劇部の仲良し3人組だった。

    ただ、今日はたまたま彼と私の2人だけ。

    彼: 「今日は見にいかないのか?」

    彼女: 「・・・なに?」

    彼: 「大道具だよ、というか・・・家具だけど」

    彼女: 私たちの芝居は、朗読劇が多かったから、基本は立ちっぱなし。

    でも今稽古してるのは、舞台に2つの椅子と1つの机をおいて

    男女の掛け合いがすすんでいく、という実験的な即興劇だった。

    私はいつも背景係だったから、

    画材屋さんと家具屋さんはもう顔馴染み。

    アイスを食べ終えた私たちは、私の行きつけ、アウトレット家具のお店へ。

    店内のPOPに描かれた「新生活応援」の文字。

    私、卒業したら一人暮らしして、もっとお芝居の勉強したいな。

    彼女: 「あ、こんにちは」

    優しそうな店長がいつもの笑顔で迎えてくれる。

    彼: 「へえ、お前も、ちゃんと挨拶できるんだな」

    彼女: 「え・・・」

    彼: 「だ、だってお前いつも・・・」

    彼女: 「なに」

    彼: 「い、いや、なんでもない・・・」

    彼女: そう。

    私って、演劇部とは思えないほど、内向的で、内気な少女。

    でも、舞台に上がれば、違う自分になれる・・・。

    そう思ってがんばってるんだけど、そんなに簡単じゃないんだな。

    彼: 「そういえば知ってるか?

    今度の舞台が終わったら、次の朗読劇、『Little Prince』だって」

    彼女: 「Little Prince?」

    彼: 「知らないのか、星の王子さま」

    彼女: 「名前は聞いたことあるけど・・・」

    やっぱりだめだなあ、私。明日、図書館行って借りてこよう。

    彼: 「お、この椅子いいじゃん。座り心地いいし」

    彼女: 彼が選んだのは、ちょっと派手目のウィンザーチェア。

    ホントはもっとシンプルな椅子の方がいいんじゃないかしら。

    彼: 「よし、これにしよう」

    とまどいの表情の私を店員さんが気遣ってくれる。

    私は苦笑いで応えながら、チェアを抱える彼のあとをついていった。

    (SE〜観客の拍手)

    彼女: 即興劇は大成功で終わった。

    舞台の上、ウィンザーチェアの前に立つ彼は、喝采に笑顔で応える。

    背景係の私は、舞台袖から彼の後ろ姿を見ていた。

    彼: 「みんなお疲れ〜」

    彼女: おどけて舞台裏へ戻ってきた彼は、

    袖で緞帳を操作していた私の元へ近寄ってくる。

    彼: 「なあ、オマエ。次の朗読劇、主役狙ってみろよ」

    彼女: 「え?」

    【BGM〜インテリアドリーム】

    彼: 「たいせつなものは目に見えない」

    彼女: 「あ、それ・・・」

    彼: 「ああ。この言葉、なんとなくわかってきたような気がするんだ」

    彼女: 「でも・・・」

    彼: 「目の前に見えているものだけが真実じゃない」

    彼女: 「・・・」

    彼: 「知ってるんだぞ、いつも図書館で演劇の本読んでること」

    彼女: 「あ・・・」

    彼: 「いつも背景係で舞台を支えてくれているお前だけど、

    見えている姿だけがお前じゃないんだろ」

    彼女: 「・・・」

    彼: 「それに、オマエのセリフ、いっぺんちゃんときいてみたいんだ」

    彼女: 「え・・・」

    彼: 「あ、いや、違う違う。誤解するなよ。

    オレはただ、いろんな人のいろんな表現を見てみたいだけだから」

    彼女: ふふ。なんか、焦って饒舌になった彼の方が、本当の彼らしい。

    目には見えないたいせつなもの、私も探してみようかな。

    7 min
  • ボイスドラマ「ナイトフライト」後編

    登場人物

    ・彼女(34歳)・・・10年目の客室乗務員。独身/ストレスによる不眠症気味

    ・彼(54歳)・・・睡眠外来勤務医/妻とは死別。眠りメカニズムの講演で全国へ

    【Story〜「ナイトフライト/ねむりデザインLABO/後編」】

    (SE〜機内音+機内アナウンス「ポーン」)

    アナウンス:

    皆さま、当機207便をご利用くださいましてありがとうございます。

    日本までの飛行時間は11時間10分を予定しております。

    ご利用の際は、お気軽に乗務員に声をおかけください。

    それでは、ごゆっくりおくつろぎください。

    彼: シートベルト着用のサインが消えると同時に

    微かな、本当に微かな寝息が聴こえてきた。

    いや、失礼のないように言っておくと、多分一般の人には聴こえない音。

    睡眠外来で働く医師でないととらえられない音階かもしれない。

    音の主は、通路を挟んだ反対側に座る・・・キャビンアテンダント・・・?

    ああ、確か・・・デッドヘッドだったか。

    勤務中の移動のため、乗客として搭乗する、ってあれだっけ。

    紺色のカーディガンの下から覗く航空会社の制服がそれを物語っている。

    小さな寝息のリズムのなか、不定期に訪れる不協和音。

    睡眠障害、かな。

    CAって、きっとストレスも多いのだろう。

    知らず知らず、彼女に視線を向けた刹那、瞳がゆっくりと開いた。

    彼: 「あの・・・」

    自分でも信じられないことだったが、通路越しに彼女に声をかけてしまった。

    彼女: 「はい」

    彼: その気怠げな声に思わず気圧(けお)される。

    不眠症と思しき彼女に対し、気づけば私はひどく饒舌になっていた。

    彼女: 「それではまた・・」

    彼: 一期一会に感謝して、会話を終わらせると、

    もう彼女の方へ向き直る勇気などあるはずもない。

    夜間飛行の機内音が子守唄になり、いつしか眠りに落ちていった・・・。

    (SE〜飛行機の機内音)

    (SE〜店内のガヤ)

    彼: 帰国してすぐ、私はインテリアショップに足を向けた。

    そこには眠りに関する私の論文が展示されている。

    不眠の原因や、睡眠の大切さを表示しながら

    快眠を誘(いざな)う寝具の選び方。

    壁一面に、わかりやすいグラフィックとともにディスプレイされた

    眠りの情報たちは、まさにラボ(研究所)のようだ。

    その前にたたずみ、ゆっくりイラストや文字を目で追う一人の女性。

    白衣、ではなく白いコートを着こなすその姿は・・・

    なんと、信じられない偶然が、またしても私の心を震わせた。

    彼女: 「あら」

    【BGM〜インテリアドリーム】

    彼: 「こんな偶然って、あるんですね」

    彼女: 「ホントに」

    彼: 「ひょっとしたら、あなたの不眠を救え、という暗示なのかもしれませんね」

    彼女: 「うふふ」

    彼: 「不眠の原因って、」

    彼女: 「ベッドとか寝具が原因のこともあるんですよね?」

    彼: 「あ、はい・・・」

    2人: (笑)

    彼: 彼女は笑うと小さなえくぼが現れる。

    その笑顔の眩しさに、思わず目を伏せた。

    彼女: 「私、寝姿がよくないんです」

    彼: 「え?」

    彼女: 「っていうか、寝相がとっても悪いの」

    彼: 「そ、それは・・・」

    彼女: 「これも睡眠障害の原因?」

    彼: 「あ、そ、そうかもしれません・・・」

    彼女: 「寝返りばっかりうってるし」

    彼: 「大丈夫、寝返りにもちゃんと役目があるんです」

    彼女: 「枕が合わないっていうのもあるのかしら」

    彼: 「枕の高さも大切ですよ」

    彼女: 「あとは・・・」

    彼: なんだか、私を質問攻めにして、彼女は楽しんでいるように見える。

    人生の1/3は睡眠時間。

    私はいつもその時間が快適に過ごせるよう、睡眠障害の患者さんに接してきた。

    でも今日からは、残り2/3に幸せを見つけるのも悪くない。

    6 min
  • ボイスドラマ「ナイトフライト」前編

    登場人物

    ・彼女(34歳)・・・10年目の客室乗務員。独身/ストレスによる不眠症気味

    ・彼(54歳)・・・睡眠外来勤務医/妻とは死別。眠りメカニズムの講演で全国へ

    【Story〜「ナイトフライト/ねむりデザインLABO/前編」】

    (SE〜機内音)

    彼女: それは夢だとわかっていた。

    霧深い森の中を私は彷徨っている。

    このところ、毎晩同じ夢を見る。

    確か、ドリームキャッチャーをベッドの上にかけておいたはずだけど・・・。

    彼女: 「・・・はっ」

    後輩のCAが私の肩に優しく触れる。

    そうか。今日はデッドヘッド。ナイトフライトの機内だった・・・。

    デッドヘッドというのは、業務外、移動の時間のこと。

    後輩は音を立てないよう、静かに会釈をして通路を歩いていく。

    そうね、私ったら制服を着たまま微睡むなんて・・・。

    彼: 「あのう・・・」

    彼女: 「はい?」

    話しかけてきたのは、通路を挟んだ反対側のシートに座る紳士。

    顔だけこちらに向けて、申し訳なさそうに口を開く。

    彼: 「もしかしたら、不眠症ですか?」

    彼女: 「え?」

    彼: 「いえ、不躾に話しかけたりしてすみません。

    実は私、睡眠外来で働いているんです」

    彼女: 「お医者様、ですか?」

    彼: 「はい。小さなクリニックですが」

    彼女: 「どうして私が不眠症だと?」

    彼: 「微かな音でしたが、呼吸の乱れがありましたので」

    彼女: 「まあ、お恥ずかしい・・・」

    彼: 「いえいえ。すみません、つい職業病で」

    彼女: 「ふふ・・・。いいんです。その通りですもの」

    彼: 「機上の人だから、ストレスとかもいろいろあるのでしょうね」

    彼女: 「ええ、でもそれじゃ、プロとして恥ずかしいわ」

    彼: 「いいえ、大丈夫。今や日本人の20%が不眠に悩んでいますから」

    彼女: 「はあ」

    彼: 「ストレスだけじゃなく、ベッドとか寝具が原因のこともあるんですよ」

    彼女: 「さすが、お詳しいですね」

    彼: 「あ、いや・・失礼しました。お疲れのところを長々と・・・」

    彼女: 「大丈夫です。勉強になりました」

    彼: 「またいつか、どこかでお会いしたら、この続きをお話ししましょう」

    彼女: 「はい、ありがとうございます」

    彼: 「こちらこそ」

    彼女: はにかみながら向き直った彼は、雑誌を開いて視線を落とした。

    すっかり睡魔が消え去った私は、さきほどの夢を思い出していた。

    あれはなんだったんだろう・・・

    首を傾げるそぶりをしながら、右側を見ると、

    お医者様は雑誌を開いたまま、夢の世界の住人になっていた。

    (SE〜飛行機の走行音)

    (SE〜店内のガヤ)

    久しぶりにまとまった休みがとれた土曜日。

    私はまっさきにインテリアショップに向かった。

    不眠の原因がベッドかも、という彼の言葉が脳裏に焼きついていたからだ。

    壁にディスプレイされた睡眠の雑学を読んでいると、

    聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。

    彼: 「こんにちは」

    【BGM〜インテリアドリーム】

    彼女: ドラマじゃあるまいし、こんな偶然ってあるのかしら。

    そう、話しかけてきたのは、空の上で見かけたあの笑顔。

    彼: 「ベッドですか?」

    彼女: 「あ、はい。あなたは・・・?」

    彼: 「このコーナーで僕の論文を紹介してもらっているんですよ」

    彼女: 「まあ」

    彼: 「よかったら、この前の話の続き、いかがですか?ちょうど寝具の前だし」

    彼女: 「はい。よろこんで」

    彼: 「じゃあ、まずは重要なポイント。枕の高さについて・・・」

    彼女: 夢の中と同じ笑顔で、彼は寝姿の話とか、マットレスの構造の話とかを

    丁寧に話し始める。

    考えてみたら、最近夢でうなされることはなくなったような気がする。

    あとは寝具を整えれば・・・

    うふふ。

    人生の1/3は睡眠時間。

    1/3が快適なら、残りの2/3も、きっと素敵な時間になりそうね。

    7 min
  • ボイスドラマ「聖夜の奇跡」後編

    登場人物

    ・彼女(26歳)・・・医薬品メーカー勤務のMR/社会人4年目。仕事に追われる毎日(CV:桑木栄美里)

    ・彼(24歳)・・・システムエンジニア/社会人2年目。彼女と暮らし始めて半年(CV:日比野正裕)


    (SE〜街角の雑踏/クリスマスイメージ)

    彼女: 「がんばってなるべく早く帰るから・・・」

    <BGM〜fantasy-harp-and-irish-300504334.wav>

    彼: TV電話に映る彼女の表情は、申し訳なさでいっぱいだった。

    彼女は、医薬品メーカーに勤めるMR。

    この時期、病床使用率が上がってくると、どうしても忙しくなってくる。

    だから、僕たちのクリスマスは、おうちで過ごす”二人だけのクリスマス”。

    料理の担当は、もちろん、僕だ。

    彼女: 「料理、無理しないでね。私、帰ってから作るから。

    クリスマスに怪我なんてしちゃ、いやよ」

    彼: ふふん。馬鹿にしないでほしいな。

    この日のために、ここ毎日先に家に帰って練習していたんだから。

    僕は念入りに部屋の清掃をすますと、クリスマスの食材を探しに街に出た。

    断続的に流れる車の中から、煌めくイルミネーションに目をとめる。

    そこは、彼女と喧嘩をした日に、偶然見つけたインテリアショップだった。

    彼女: 「イルミネーションって、見ているだけであったかくなる」

    彼: 「そうだね。喧嘩して凍てついた心も溶けるほどに」

    彼女: 「あら、別に私の心は凍りついてないけど」

    彼: 「そういうことにしておこうか(笑)」

    彼女: 「ユニコーン・・・」

    彼: 「え?」

    彼女: 「ほら、この絵、ユニコーンじゃない」

    彼: 「僕には普通の白馬に見えるけど」

    彼女: 「ユニコーンってね、清らかな乙女にしか近寄らないんですって」

    彼: 「ふうん」

    彼女: 「ノアの方舟にも乗ってたのよ」

    彼: 「そうなんだ」

    彼女: 「私の元にも来てくれるかしら」

    彼: 「も、もちろんだよ。君ならきっと、ユニコーンの背に乗ることだってできるさ」

    こうしてクリスタルの白馬、いや、ユニコーンの絵は、

    ぼくたちの家にやってきた。

    雪解けの笑顔を思い出しながら、僕は駐車場へハンドルを切った。

    (SE〜ドアが開く音)

    彼女: 「ただいま・・・」

    「遅くなっちゃって、ごめんなさい・・・」

    「もう、寝てるよね・・・」

    彼: 息をひそめた僕に気づかず、彼女はライトのスイッチをつけた。

    (SE〜スイッチの音)

    彼女: 「あ・・・」

    【BGM〜インテリアドリーム】

    彼: 「メリークリスマス。

    どうかな・・・ホワイトクリスマスに・・・なったかな」

    光の中。舞い散る雪のように、煌めくユニコーン。

    そしてその横、ひときわ大きな、もうひとつのキャンバス。

    ピクチャーレールからワイヤーフックで固定されているのは、

    彼女: 「・・・ヘプバーン!」

    彼: それは、ユニコーンと同じく、クリスタルで装飾されたヘプバーンの肖像画。

    まるで雪が舞っているように、光の結晶が踊っている。

    彼女の表情にもみるみる光がさしてきた。

    彼: 「君、いつも、ヘプバーンみたいになりたいって言ってたよね」

    彼女: 「うん・・・」

    彼: 「賢者の贈り物にならないといいんだけど」

    彼女: 「ありがとう・・・」

    彼女: 「じゃあ私も・・・」

    彼: 「え?」

    彼女: 「Happy Holidays(ハッピーホリデイ)」

    彼: 「これって・・・」

    彼女: 「どう?」

    彼: 「スマートウォッチ?」

    彼女: 「だって、賢者の贈り物になるといけないでしょ」

    彼: 「ありがとう」

    彼女: 「あなた、プログラマーなんだから役に立ててね」

    彼: 僕のピクシーがいたずらっぽく笑った。

    クリスタルの光が部屋の温度を上げていく。

    今夜は冬の妖精と過ごすあたたかいクリスマスになりそうだ。

    6 min
  • ボイスドラマ「聖夜の奇跡」前編

    登場人物

    ・彼女(26歳)・・・医薬品メーカー勤務のMR/社会人4年目。仕事に追われる毎日(CV:桑木栄美里)

    ・彼(24歳)・・・システムエンジニア/社会人2年目。彼女と暮らし始めて半年(CV:日比野正裕)

    【Story〜「聖夜の奇跡/IROTTA CHIC/前編」】

    (SE〜街角の雑踏/クリスマスイメージ)

    彼女: 「眩しい・・・」

    <BGM〜a-dark-silent-night-346733592.wav>

    思わず口を衝いて出た言葉に、周りを見回した。

    ジングルベルの洪水のなか、誰もが足早に家路を急いでいる。

    それはショーウィンドウの中で煌めく1枚の絵。

    描かれた街にはクリスタルの雪が舞っている。

    気がつくと、いつしか私は、絵の中の街を歩いていた。

    腕を絡めて歩くのは・・・あ、パートナーの彼。

    え?彼と私、さっきまで喧嘩してたんじゃなかったっけ?

    彼: 「疲れてない?」

    彼女: 「大丈夫」

    彼: 「この先にあるお城のライトアップを見に行かないか?」

    彼女: お城?ライトアップ?

    そんなもの、この街にあったっけ?

    彼: 「しっかりつかまって」

    彼女: え?バイク?

    いつの間にか私たちは、クリスタルに包まれたバイクに乗っている。

    彼: 「少し飛ばすよ」

    (SE〜バイクのエンジンをかける音〜バイクの走行音)

    ※ここはイメージなのでバイク音にかぶっても大声で話さなくてよい

    <BGM〜christmas-eve-347253497.wav>

    彼女: タンデムなんて、何十年ぶりかしら?

    よかった、スキニージーンズを履いてて・・・

    ってあれ?私、今日、仕事だからスーツだったはず。

    まあ、いっか。

    彼がエンジンブレーキをかけるたびに、

    クリスタルが散らばり、街が煌めいていく。

    彼女: 「きれい・・・」

    彼: 「だろう?でもお城はこんなもんじゃないからな」

    彼女: 「ねえ」

    彼: 「なんだい?」

    彼女: 「さっきはごめんね・・・」

    彼: 「なに?」

    彼女: 「電話で喧嘩、しちゃって」

    彼: 「え?なんのこと?」

    彼女: 「クリスマスの約束のこと」

    彼: 「クリスマスの約束?」

    彼女: 「とぼけないでよ。 来週のクリスマスを白銀の世界で過ごすって約束。

    私、仕事でいけなくなっちゃったから」

    彼: 「なにを言っているんだい?クリスマスは今日だろ。

    ほら、こうして一緒にいるじゃないか」

    彼女: 「え・・・」 

    <BGM〜christmas-fairytale-346742679.wav>

    ほどなく、煌めきに満ちたクリスタルのお城へ到着した。

    夜空に舞うのは、クリスタルの雪。

    彼の肩に頬をよせながら、私の意識は光と同化していった・・・。

    (SE〜街角の雑踏)

    彼: 「お嬢さん、そんな格好じゃ風邪ひきますよ」

    彼女: 「あ」

    【BGM〜インテリアドリーム】

    彼女: クリスタルの夢から私を連れ戻したのは、やっぱり彼だった。

    彼: 「さっきは、電話でごめんね」

    彼女: 呆然と立ち尽くしていた私の後ろで

    落ちかけた私のジャケットをかけ直しながら、

    彼: 「考えたんだけど、クリスマスはおうちで過ごさないか?」

    彼女: 言葉に出しながら、彼がはにかむ。

    彼: 「何時になってもいいから、一緒にクリスマスを祝おう」

    彼女: 凍てついた私の表情もゆっくりと溶けていく。

    彼: 「あ、料理も僕が準備する」

    彼女: 「ホワイトクリスマスにして」

    彼: 「え」

    彼女: 「あれ」

    彼: 「ああ!」

    彼女: 視線の先にあるクリスタルの絵を見て彼の顔がほころぶ。

    彼: 「オッケー。さあ、寒いからお店の中に入ろう」

    彼女: 入口にディスプレイされた煌めく絵画たち。

    まるで宝石のような光の中を抜けて、

    私たちはインテリアショップへ入っていった。

    彼女: 「こたつも必要かも」

    彼: 「あったかいクッションも」
    2人: 笑

    6 min

About ボイスドラマ〜Interior Dream

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インテリアが家族の絆をつむぎだす・・・ハートフルな一話完結の物語を各前後編に分けてお送りします。(CV/ 男性役=日比野正裕、女性役=桑木栄美里)