
Sign up to save your podcasts
Or


前編では、主人公が幼い頃から憧れていた大学への進学を果たし、
その背後にあった家族の支えと「言霊」の力が描かれました。
そして時は流れ、今、彼女は結婚式を迎えています。
人生の新たな門出を前に、彼女が思い出すのは10年間使い続けた丸いテーブル。
それは、かつて父と母とともに選んだ、大切な家具でした。
結婚という人生の大きな転機を迎えたとき、
彼女が家族から受け継ぐものとは?
そして、彼女の新しい人生に「丸いテーブル」はどんな意味を持つのでしょうか?
ボイスドラマでも、家族の愛と絆がより深く伝わる作品になっています。
ぜひ、SpotifyやApple、Amazon Musicなどでチェックしてみてください。
【登場人物】
・娘(18歳/29歳)・・・飲料メーカーの商品企画部に所属するマーケター。今日が自身の結婚式。ホームワークは食卓兼ワーキングデスクの丸いテーブル。10年使っているテーブルだが、彼女には結婚しても捨てられない思い出のテーブルだった(CV:桑木栄美里)
・母(44歳/55歳)・・・飲料メーカーの商品企画部に所属するマーケター。結婚式を1か月後に控えている。ホームワークは食卓兼ワーキングデスクの丸いテーブル。10年使っているテーブルだが、彼女には結婚しても捨てられない思い出のテーブルだった(CV:桑木栄美里)
・父(45歳/56歳)・・・45歳当時は物流会社の課長だったが10年後に部長に。目の中に入れても痛くない娘が大学に合格。東京へ出て1人暮らしをするときに家族3人で家具を選んだ。父・母・娘それぞれの思いが詰まった家具とは・・・(CV:日比野正裕)
<シーン1:娘の新居/いま/父母娘>
(SE〜紅茶を飲む音)
母: 「もう11年になるのね。
いつまでも丈夫で素晴らしいわ」
父: 妻が娘の新居で、独り言のように呟く。
なんのことかと思ったら、食卓テーブルのことらしい。
妻が腰をおろしている食卓は少し大きめの丸いテーブル。
母: 「思い出すわねえ、11年前のあの日。
あら、ちょうど今日じゃなかったかしら?」
父: 「ああ、そうかもしれないな。よく覚えてないけど」
母: 「うそおっしゃい。
ちゃんと覚えてるんでしょ」
父: やっぱり、妻はなんでもお見通しだ。
思えば11年前のこの日。
娘の大学受験。合格発表の日だった。
<シーン2:11年前/合格発表の日>
いまどきは、合格発表をインターネットでするのか!と思いつつ、
かく言う自分もキャンパスにいた先輩大学生に、
合否を連絡してくださいとお願いしたんだった。
発表の日、電話の前で正座していつかかってくるかハラハラして待っていたなぁ。
「サクラサク」「サクラチル」
電話代節約なのか、まるで電報のように短い言葉で伝えてくる先輩。なつかしいな。
あ、娘の話に戻そう、、、
丸テーブルで家族全員で発表を見たい!と言い出した。
(娘「丸テーブルで家族全員で発表を見たい!」)
そりゃ、いてもたってもいられないのはわかるけど。
朝から用事で出かけるというと、怪訝な顔をされた。
食卓は今までずうっと家族が集まってきた場所。
丸い食卓テーブルでみんなで合格を祝うのが確かに一番うちらしい。
私はカバンに娘が欲しがっていたスマートウォッチを入れた。
実は、もう合格を信じて、お祝いのプレゼントを買っていたんだ。
そうだ。娘の大好物、ふかし芋も出かける前に作っておいてやろう。
さつまいもは冬の終わりまでが旬だからな。
甘みたっぷりの地元のふかし芋だ。
きっと喜ぶだろう。
娘の喜ぶ顔を想像して、つい口元がほころぶ。
私は蒸しあがったふかし芋を新聞紙に包み、
ラップをかけて、さらにハンカチでくるみ、戸棚にしまった。
<シーン3:11年前/神社>
(SE〜街角の雑踏と足音)
県内でも合格祈願で有名な大きな神社。
家からは少し距離があるが、今日は朝からどうしてもここに来たかった。
拝殿に上がらせていただき、お祓いとお清めを受ける。
娘に買ったスマートウォッチと、娘の受験票。
私の身も含めてすべて祓い、清めていただく。
大願成就の厳かな祝詞が流れ、頭を下げる。
大長編の祝詞だが、その分ご利益も間違いないだろう。
お祓いが終わり、神社をあとにしたのが昼近く。
今から帰れば合格発表の時間には十分間に合う。
途中、花屋さんで大きな大きなバラの花束を買う。
顔が隠れるくらい大きな大きな花束。
周りの人たちがチラチラ私を横目で見る。
今頃、妻と娘は丸テーブルの前で
お茶でも飲みながら、パソコンを開いていることだろう。
発表の時間が近づき、
時計で時間を確かめると、発表1分前だ。私は花束を手に家へ向かう。
大通りを抜け、信号を渡る。家はもう目の前だ。
10秒前。5秒前。
発表の時間になった。
結果は見ない。私は最後まで娘を信じているから。
大きく深呼吸をして、娘に電話をかける。
1回。2回。3回のコールで娘が出た。
娘: 「もしもし」
父: 私は娘より先に、言葉をかける。
「おめでとう!やったな!」
娘: 「うん!ありがとう、パパ」
父: 「いますぐ、お祝いしなきゃ」
娘: 「わかった。早く帰ってきて」
父: 「ああ、もう帰ってるよ」
娘: 「え?」
(SE〜家のドアチャイム「ピンポン!」)
父: 私はインターフォンを押した。
(SE〜ドアが開く音)
チェーンをはずしてドアが開く。
ドアの向こうには、瞳を潤ませた娘が立っていた。
感無量の表情で私に微笑む。
父: 「おめでとう!本当におめでとう!」
妻と娘と私。親子3人で、声をあげて泣いた。
<シーン3:いま/娘の新居>
母: 「3時間くらい、食卓の丸テーブルで泣き笑いしてたわね」
父: 懐かしそうに、妻が思い出を語る。
母: 「結局、家具屋さんへ行ったのは次の日だったのよ」
父: 「ああ、覚えてるよ」
母: 「そこで、これを」
父: 「そうだったな」
母: 「この娘は、小さな部屋だからって小さい四角のテーブルを選ぼうとして」
父: 「ママがそれをとめた」
母: 「実家でも、食卓は優しい丸テーブルなんだもの」
父: 娘は幸せそうな顔で、私たちの思い出話を聞いている。
母: 「丸いテーブルでないと。
丸という形は、部屋をあったかくしてくれるのよ」
父: あの日と同じ笑顔で、同じ言葉を話す。
母: 「テーブルが丸いと、どの位置からでも座れるでしょ」
父: 「そうそう。そう言って、2つの椅子も選んだんだっけ」
母: 「椅子がひとつなんてダメよ。
お友達がきたときにどうするの。
1組あれば、2人はちゃんと座れるでしょ」
父: 「でも、2つじゃ足りないよな」
母: 「そう言って、あなたがもう1脚、
折りたたみの白くて可愛いチェアを選んだのよ」
父: 「よかったじゃないか。3つあればこれから私たちが来ても、みんな座れる」
母: 「最初から、娘の部屋にくること前提なんだから(笑)」
父: 「バレバレだったか(笑)」(「バレバレでしたか(笑)」)
妻は娘の方へ向き直って口元をほころばせながら娘に話しかける。
母: 「でもまさか、あなたが新居にまで持ってくるとは思わなかったわ」
父: 「ママのDNAが受け継がれたんだな」
母: 「そうかもね。
でもね、私は次に食卓を買うときも丸テーブルにした方がいいと思うの」
父: 「わかるよ」
母: 「丸テーブルなら、対面で座っても、横に座っても、距離が近く感じるの」
父: 「娘の結婚式も丸テーブルだしな」
母: 「丸テーブル そう!家族みんなでご飯を食べて、あったかい家庭を作りなさい」
父: 「ママ、もうちゃんと作れてるじゃないか」
■BGM〜「インテリアドリーム」
母: 「あら、そうだったわね」
父: そう言って妻が娘の方へ振り返る。
丸いテーブルの横に置かれたソファに座り、微笑む娘。
その胸には、小さなもうひとりの家族が、優しく抱かれていた。
すやすや眠る小さな命は、丸テーブルの5人目の家族になるだろう。
一脚の丸いテーブルを通して、親と子の絆、成長、そして大切な思い出を紡ぐ物語です。
主人公は、8歳、18歳、そして28歳の3つの時間軸で描かれる一人の女性。
彼女の人生の節目には、いつも家族とともに選んだ丸いテーブルがありました。
幼い頃に抱いた夢、大学受験、そして新しい人生の門出——
そのすべての場面に、家族の愛とぬくもりが詰まっています。
【登場人物】
・娘(8歳/18歳/28歳)・・・飲料メーカーの商品企画部に所属するマーケター。今日が自身の結婚式。ホームワークは食卓兼ワーキングデスクの丸いテーブル。10年使っているテーブルだが、彼女には結婚しても捨てられない思い出のテーブルだった(CV:桑木栄美里)
・父(35歳/45歳/55歳)・・・45歳当時は物流会社の課長だったが10年後に部長に。目の中に入れても痛くない娘が大学に合格。東京へ出て1人暮らしをするときに家族3人で家具を選んだ。父・母・娘それぞれの思いが詰まった家具とは・・・(CV:日比野正裕)
【Story〜「丸いテーブル/新生活/前編」】
<シーン1/いま/結婚式場>
(SE〜結婚式場のBGM/雅楽)
娘: 厳かな神殿での結婚式。
私の28年を寿ぐような美しい祝詞が奏上されていく。
不思議だな。
人生の走馬灯って、ご臨終のときだけじゃなくて
こんなハレの日にも回るんだ。
と、不吉な言葉を口にする私。
大丈夫、これは言霊じゃないから。
私の頭の中に蘇るのは、走馬灯でなく、食卓のテーブル。
テーブルには、大切な思い出がいっぱい詰まっている
私は、姉と10歳以上も離れて生まれた末っ子。
遅くに生まれた子ということもあって、
父と母にこれ以上ないくらい愛されて育った。
たっぷりの愛情に抱かれて過ごした年月が
古い映写機で上映されるように蘇る。
(SE〜映写機の音)
(SE〜家庭内の雑踏)
私の人生で、転機は3回。
ひとつは、8歳のとき。
小学生のときに憧れのダンスの先生がいた。
そのかっこいい先生が卒業した大学にどうしても入りたくなった。
<シーン2/20年前/自宅の食卓>
家の中央に置いてある大きな食卓。
それは父と母のこだわりで大きくて丸いテーブルだった。
父: 「まあるいと、お部屋があったか〜くなるんだよ」
娘: 父はいつも私にそう言っていた。
そのテーブルに座って家族みんなが集まるある日の夕食。
私は、超難関の有名大学を受験する!と、両親に宣言した。
一番驚いたのは父。
座っていた食卓の椅子から身を乗り出して、私に言葉を返した。
普段は声が大きい父なのに、私の目を見てゆっくりと話す。
父: 「その大学って、東京だろ」
娘: 「うん」
父: 「日本一難しい女子大だろ」
娘: 「うん」
父: 「でも日本一素敵な大学だろ」
娘: 「うん!」
父: 「じゃあ、もう一度言ってごらん」
娘: 「え?どうして?」
父: 「言霊だよ」
娘: 「ことだま・・・?」
父: 「うん、良い言葉を口にすると、良いことが起こるんだよ」
娘: 「ホント!?」
父: 「そう。だから言ってごらん」
娘: 「わかった・・・んと・・・私、東京の女子大に合格する!」
父: 「よし!じゃあ、これから、パパとママと一緒にがんばろう」
娘: 「うん!ありがとう!」
父: 「パパは10年後が楽しみだな」
娘: 最初は驚いていた父も母も、諸手を挙げて大賛成。
私はその日から勉強とクラシックダンスに明け暮れるようになった。
<シーン2/10年前/自宅のダイニング>
娘: そして、10年後。
2回目の転機は、もちろん、志望大学の合格発表の日。
私が受験したのは、宣言した通り超難関の女子大一択。
10年前、父に言われた言霊を信じて、まっすぐにすすんできたから。
不合格、なんていう未来は私の中にはなかった。
合否の結果は、
インターネットの受験生専用サイトで決まった時間に発表・配信される。
私はいても立ってもいられず、学校を休んで朝からパソコンとにらめっこ。
丸いダイニングテーブルに座って、
まだ公開されていない合格発表サイトを何度も見返す。
こんなときでも、やっぱり丸いテーブルって落ち着くなあ。
今日に限って、父は
「用事があるから」
と、出かけてしまった。
私と母は、良い結果が出たら、そのまま家具屋さんにいくつもりだ。
頭の中で、部屋に合わせた家具を、必要最小限で考えてある。
あとは、吉報を待つだけだ。
いよいよ、合格発表の時間がやってきた。
ドキドキして心臓が止まりそうになる。
ストレスで喉がカラカラになった。
母と一緒に発表時間をカウントダウンする。
3、2、1、ログイン!
受験者専用の特設サイトには、画面いっぱいに番号が並ぶ。
13765、13984、13990・・・
焦らず、焦らず。
画面をゆっくりとスクロールする。
14001、14012、そして・・・14015!
私の受験番号、14015番が下からゆっくりと現れた!
「ママ!」
そう言ったきり、しばらく言葉が出てこない。
母も私も、無言で顔を見合わせ、瞳を潤ませる。
そのとき、私のスマホが鳴った。
びくっとして、スマホを落としてしまう。
母が笑いながら、パパよ、と笑う。
着信の表示は、見慣れた父の携帯番号だった。
娘: 「もしもし」
父: 「おめでとう!やったな!」
娘: 「うん!ありがとう、パパ」
父: 「いますぐ、お祝いしなきゃ」
娘: 「わかった。早く帰ってきて」
父: 「もう帰ってるよ」
娘: 「え?」
(SE〜ドアチャイム「ピンポン!」)
娘: ドアをあけると、
玄関の外に、大きな花束を抱えた父が立っていた。
■BGM〜「インテリアドリーム」
父: 「おめでとう!本当におめでとう!」
娘: そう言って花束を手渡す父。
私も母も、驚きと喜びで一瞬固る。
次の瞬間、でも、(すぐに)父の胸に飛び込んだ。(私と母)
そのあとしばらく、親子3人、声をあげて泣いていた。
どのくらい、3人で抱き合っていただろう。
やがて思い出したように、父が言葉を絞り出す。
父: 「合格祝い、ちゃんとあるよ」
娘: 「ええっ?もし不合格だったらどうしていたのよ」
父: 「それはありえないだろう。言霊がお前を守ってくれるんだから」
娘: 「パパ!」
父: 「さあ、プレゼントをあけてごらん」
娘: 「うん」
父: 「お前が欲しがっていたスマートウォッチだよ」
娘: 「スマートウォッチ!!え?なんで私がほしかったのしっているの?」
父: 「ん〜」
娘: 「ありがとう!」
父: 「それ神社でお清めしてもらったからな」
娘: 「パパ、朝から神社に行ってたの?
ああ、、それで・・・(居なかったんだ、というニュアンス)」
父: 「いや、ちょっとほかの用事もあったからな・・・
まあ、そんなことはどうでもいいんだよ。
そうだお前の好きなふかし芋も戸棚にあるからな」
娘: 「ホント!?そっちの方が嬉しいかも」
父: 「ん?じゃあ、スマートウォッチはいらな、、、」
娘: 「(前に被せて)いる!!」
父: 「はは・・・どっちもお前が引き寄せたんだよ」
娘: 「ううん。ぜんぶ、パパとママのおかげだね」
父: 「何を言ってる。お前が実力でつかんだ夢じゃないか」
娘: 「違うよ。だって、パパとママがいなかったら、私はこの世にいなんだもん」
父: 「え・・・」
娘: 「パパ、ママ。私を産んでくれて、私を育ててくれて、本当にありがとう!
これから、いっぱい恩返しするから!」
父: 「ああ・・・泣かせるんじゃないよ、、、」
娘: あんなに涙を流した父は、あの日以外見たことがない。
<シーン4/いま/結婚式場>
(SE〜結婚式場の雑踏)
私の結婚を誰よりも喜んで、誰よりも幸せなのは父と母。
泣き笑いの顔を見ているだけで、手にとるようにわかる。ふふ。
私は、10年前を思い出して、一層胸が熱くなった。
パパ、ママ。
いつまでも、その笑顔を絶やさずに。
いつまでも、私のそばにいてね。
前編では、ダンススタジオとレストランでの何気ないやりとりを通じて、二人の関係が少しずつ変化していく様子が描かれました。
後編では、舞台を家具のイベント「インテリアビッグバザール」 に移し、彼と彼女がさまざまなインテリアを体験しながら、心の距離を縮めていきます。
「家具は暮らしを変える」。
新しい空間にふさわしい家具を選ぶことは、単なる「買い物」ではなく、新しい自分への第一歩 でもあります。
そんな「インテリアの魔法」が、二人にどんな影響をもたらすのか?
そして、彼のふとした言葉に込められた想いとは?
ボイスドラマ版では、インテリアの魅力を声と音で伝え、より臨場感のあるストーリーをお届けします。
Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォーム、または服部家具センター「インテリアドリーム」公式サイト でぜひお聴きください!
それでは、物語の続きをお楽しみください!
【登場人物】
・彼(38歳)・・・元バレエダンサー。膝を痛めてバレエを断念したが、思いは断ち切れず、ダンススタジオでインストラクターをしている。本職は広告代理店の企画部勤務。彼女のことを意識しているが、年齢差のコンプレックスがあり言い出せない(CV:日比野正裕)
・彼女(26歳)・・・前編に登場した息子の姉。芸術大学出身。現在はフリーのイラストレーター。幼い頃からバレエを習い、いまでもダンススタジオに週3で通っている。ダンススタジオで知り合った彼とは月に何回か、食事に行くライトな関係(CV:桑木栄美里)
<シーン1:ダンススタジオ>
(SE〜ダンススタジオの雑踏)
彼: 「はい、おつかれ!今日はここまでにしよう」
彼女: 「おつかれさまでした!」
彼: 「お腹すいたな、軽くたべよっか・・」
彼女: ビルの2階にあるダンススタジオ。
通りに面した東側には大きな窓ガラスがはまり、
灯りがともる頃には、外からダンサーたちの動きがよく見える。
彼の指示で私の定位置はいつも窓側。
私は、通りを歩く観客に向かってコンテンポラリーダンスを踊る。
<シーン2:レストラン>
(SE〜レストランの雑踏)
彼: 「なんだか、浮かない顔だね」
彼女: え?私、浮かない顔なんてしてた?
ちゃんと彼の目を見て笑顔で話をしてたつもりだったのに。
こういうとこ、鋭い人だな。
彼: 「実は僕も、今日会社でちょっとミスしちゃってね。
結構ひっぱるタイプだから」
彼女: そう?いつもカラっとしてると思ってたけど。
それに、僕も、って。
私が気分下がってること、確信してるのね。
彼: 「まあ、そういうときは、美味しいお肉をたべて・・・
あ、お肉好きだったよね?」
彼女: 「はい」
彼: 「よし、じゃあ、今日はちょっと贅沢して
飛騨牛のフィレ肉とかいっちゃおうか」
彼女: 「え〜」
彼: 「あれ?食べたくない?」
彼女: 「あ、いえ、食べたいです」
彼: 「オッケー、決まり。
店員さん!オーダー!
あっと、それから・・・
レッスンのとき以外は敬語っぽい言葉遣いやめてくれる?
なんか、くすぐったくて、落ち着かないし」
彼女: 「っと・・・わっかりました〜」
彼: 「うん、それそれ」
彼女: タメ口とか、苦手なんだよなあ。
彼は、ちょっぴり強引だけど、
なかなか1人で決めきれない性質(たち)の私にはちょうどいいかも。
それにしても、口の中で溶けちゃうくらい、柔らかくてジューシーなお肉。
彼: 「どう?美味しい?」
彼女: 「溶けちゃった」
彼: 「あはは、そりゃ、シャトーブリアンだもの」
彼女: 「ん〜!美味しい!」
彼: 「よかった。
それで、舌鼓を打っているところ悪いんだけど・・・
どうしたの?なにかあった?」
彼女: 「えっと・・・
私、引っ越ししようと思って」
彼: 「え?引っ越しって?実家暮らしじゃなかったっけ?」
彼女: 「あ、そうなんです・・・そうなんだけど(笑)
弟が社会人になって私の部屋を明け渡しちゃったから」
彼: 「え、じゃあ、いま、どうしてるの?」
彼女: 「1人暮らし前提だから、いまは倉庫代わりに使ってた狭い部屋。
弟は2間続きのスイートになって大喜びしてるわ」
彼: 「そうか、そしたら明日家具見にいこうか?」
彼女: 「家具?」
彼: 「だって、家具ひとつで、お部屋は明るくあったかくなるんだよ」
彼女: 「へえ〜」
彼: 「ただの家具屋じゃなくて、すっごいところへ連れてってあげる」
彼女: 彼はいつだって特別な場所へ私を誘(いざな)ってくれる。
これって、私が特別な存在ってこと?
ううん、考えすぎだよね・・・
<シーン3:イベント会場「インテリアビッグバザール」>
(SE〜インテリアのイベント会場)
彼女: 「すご〜い!」
彼: 「だろう?」
彼女: 「インテリアのテーマパークみたい!」
彼: 「そこまでじゃない(笑)」
彼女: いやいや。十分にそこまでだし。
広大なスペースの大ホールにゆったりと並べられた家具たち。
ベッド、ソファ、食卓、デスク、雑貨・・・
いったい何台、何本、何点、展示されているんだろう。
ムートンの体感コーナーまであるし・・・
彼: 「寝転がってみたら?」
彼女: 「いいのかなあ」
彼: 「もちろん」
彼女: 店員より先に私を促す彼。
ベッドに敷かれたムートンのうえ、大の字になって寝そべる。
彼: 「気持ち良さそうだなあ」
彼女: ホントに気持ちいい。このまま眠っちゃいそう。
私の楽しそうな表情を見て、彼の口角がさらに上がる。
彼: 「電動ベッドにも寝てごらん」
彼女: 「電動ベッド?私今年25歳だよ」
彼: 「いやいや、いま電動ベッドは若い人に人気なんだよ」
彼女: 「ホント?」
彼: 「まあ、だまされたと思って」
彼女: 「わかった・・・よいしょっと」
彼: 「スマホにアプリを入れて」
彼女: 「アプリ?」
彼: 「スマホで操作するんだ」
彼女: 「すご」
アプリで時間設定すれば、朝ベッドが起き上がって私を起こしてくれるんだって。
しかも寝ているときイビキをかいたら、ベッドが感知して体を少し起こす?
気道を広げて快適な睡眠へ誘う?
寝る前はリクライニングさせたベッドで、
読書したり、ゲームしたり、アニメを見たり、って・・・
ああ、怠惰な私になってしまう〜
彼: 「健康にしてくれるんだよ」
彼女: 確かに。命を守るベッドだ。
私、朝起きるとき、足の浮腫(むくみ)とか結構ひどいからなあ。
ベッドのコーナーには睡眠アドバイザーもいて、そんな相談にものってもらった。
彼: 「小さなワンルームだったら、この電動ベッドがあればソファいらないよね」
彼女: あ、そうか。そうやって考えたら、コスパも高いかも。
それに、向こうには・・・羽毛布団のオーダーメイド?
体型や好みに合わせて、この場で羽毛布団を作ってくれるんだ。
すごすぎる・・・
彼: 「楽しい?」
彼女: 「うん。一日中見てまわりたい」
彼: 「じゃあ、そうしよう」
彼女: 「え、いいの?」
彼: 「大丈夫大丈夫。ゆっくり見てまわれば、どうせ一日かかるよ」
彼女: 「やった。
ねえ、あの一帯みて。75%オフだって。
ここで全部家具決めちゃおうかな」
彼: 「いいんじゃない」
彼女: 「じゃあ、次は食卓みたい」
彼: 「了解」
彼女: あれ?
私、なんかタメ口っぽい。
普段の私なら考えられないのに。
彼が作り出す、異空間に召喚されてしまったみたい。
彼: 「君の笑顔を見ているとね、本当に幸せな気持ちになれるんだよ」
彼女: 「え」
■BGM〜「インテリアドリーム」
彼: 「この時間が永遠に続けばいいのに、って」
彼女: 「あ」
彼: 「あ〜、いやいや。冗談。冗談。忘れて」
彼女: 忘れられるわけがない。
私も、幸せ。
愛とか恋とか、そういうのじゃなくても・・・。
会場いっぱいの家具に囲まれて、
なんだか、現実のその先にある、不確かな未来が見えたような・・・気がした。
はじめまして、またはおかえりなさい!
今回の物語「Happy New Interiors!/家具のイベント」 は、ダンスとインテリアが織りなす、ちょっぴり大人の物語 です。
前編では、ダンススタジオを舞台にした二人の関係 にフォーカスし、彼と彼女が交わすさりげない言葉のやりとりや、レストランでの何気ない時間を描きました。
そして、彼女が引っ越しを決意し、新たな生活に向けて歩み出そうとするところが、後編へのつながりとなっています。
この作品はボイスドラマ となっており、
服部家具センター「インテリアドリーム」公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなど各種Podcastプラットフォーム でお楽しみいただけます。
音声ならではの演出が加わることで、二人の距離感や空気感をよりリアルに感じられるはずです。
さあ、家具とインテリアが織りなす新たな物語の扉 を、ぜひ開いてみてください。
【登場人物】
・息子(22歳)・・・父・母・姉・祖母と5人で暮らす。今年大学を卒業して社会人1年生となる。就職先は銀行。工学部出身だったため銀行でも情報システム部でベンダーを統括する(CV:日比野正裕)
・母(47歳)・・・結婚前は夫と同じ銀行で働き、社内結婚。子供が入学すると同時に退職して専業主婦。現在はフリーのファイナンシャルプランナーとして主婦仲間たちの相談にのっている(CV:桑木栄美里)
【Story〜「Happy New Interiors!/電動ベッド/前編」】
(SE〜玄関のチャイム「ピンポン」)
息子: 「あ、きたきた!」
母: 「なぁに?またなんかくだらないモノ買ったの?」
息子: 「ひどいなあ、母さん。
新生活の家具一式だよ」
母: 「え?家具?
あなた1人で家具屋さん行ったの?いつのまに?」
息子: 「ちょっとちょっと。僕もう今年から社会人だよ。
家具くらい自分ひとりで選べるって」
母: 「大丈夫?不安がいっぱいだわ・・・」
息子: 「もう〜、そんなこと言うなら見に来て。
僕の部屋まで運んでもらうから」
母: 「はいはい。それにしてもいっぱい買ったのね」
息子: 「プログラマーのバイト代ってすごいんだよ。
それもこれも、僕を天才として産んでくれた母さんのおかげかな」
母: 「なに、えらそうに」
息子: 確かに、ボリューム満載の家具たちだった。
だって僕の部屋はいたってシンプルで、
ほとんど家具と言えるものは置いてないからなあ。
ベッドもなくって、布団だし。
TVはリビングで見るからいらないし。
たま〜に、家に帰ってからPCでプログラムをチェックするけど、
作業するのも机なんて呼べるシロモノじゃないし。
でも、今日から僕の部屋はスイートルームに変わっていく。
まあ、もともと二間続きの部屋だったから、スイートっていえばスイートかあ。
バイト帰りに何度も何度も家具屋さんに足を運んで、
自分にとって最高の家具を選んできたからなあ。自信たっぷりさ。
母: 「ぶつぶつ言ってないで、先に掃除機かけなさい」
息子: 「は〜い」
母: 「それ、ホームワーク用のパソコンデスクに、チェア?」
息子: 「うん、会社はリモートが多い‘
いろんな椅子にすわって疲れないチェアを選んできた」
母: 「お、なんか、このサイドボードもおしゃれじゃない」
息子: 「そうだよ。ちゃんとサステナブルな素材なんだ
SDGsの家具ってわけ」
母: 「ふうん、・・・そっちはなに?」
息子: 「インテリアアートだよ」
母: 「インテリアアート?ふうん、意外な趣味があるのね」
息子: 「まあ、見てくださいって」
母: 「どれどれ?お、なんかキラキラしてるんじゃない」
息子: 「そう。素敵でしょ。名画の上からデコレートしてあるんだ」
母: 「なるほど。
ただのレプリカだとちょっとこの部屋には合わないもんね」
息子: 「ヘプバーンの肖像画、かっこよくない?」
母: 「これ、ティファニーで朝食を、の名シーンだわ。
パパと見に行ったっけ。ヘプバーン、可愛かったな〜」
息子: 「リモートミーティングの背景にチラっと映ったら、
お、こいつ、できるなってなるでしょ」
母: 「ならないわよ。
で、最後はベッド?やっと布団暮らしにさよならするのね」
息子: 「これね、ただのベッドじゃないんだ」
母: 「どこが?オシャレだけど場所とらない普通のシングルベッドでしょ」
息子: 「見てて」
(SE〜電動ベッドを動かすモーターの音)
母: 「え?あなた、電動ベッドにしたの?」
息子: 「いまね、電動ベッドがすっごくバズってるんだよ」
母: 「腰でも痛めた?」
息子: 「違うよ。
この電動ベッドはスマホで操作できるんだ。見てて」
母: 「へえ〜」
息子: 「寝るときも起きるときも、ベッドが僕に合わせてくれるんだ。
ベッドから立ち上がるときとか、ベッドに寝転ぶときに
床面を少し高くすれば動くのラクでしょ。
体への負担だって減らせるんだよ」
母: 「ほお〜」
息子: 「こうしてラクな姿勢にリクライニングすれば、
読書するときも動画を見るときも疲れないしね」
母: 「ゲームするときでしょ」
息子: 「おっと」
母: 「動画ったって、アニメだし」
息子: 「アニメはちゃんと確立されたコンテンツだよ」
母: 「そんなこと、あなたに言われなくてもわかってる(笑)」
息子: 「脚が疲れた時は、脚を上げて浮腫み対策もできる」
母: 「すごいのねえ」
息子: 「これがあればソファいらないから部屋のなかはスッキリ」
母: 「あらホント」
息子: 「それに、なんと言ってもすごいのは、
寝てるときいびきを感知すると、ベッドの角度を変えてくれること。
気道を確保して呼吸しやすくしてくれるんだ」
母: 「そうなんだ〜」
息子: 「この春は、社会人生活のスタートだからね。いろいろこだわりたいじゃん。
そしたら家具屋さんでスリープアドバイザーの人がいてさ。
大切なのは睡眠の質をあげること。
枕も自分にピッタリな高さと硬さを選んでもらっちゃった」
母: 「電動ベッドねえ・・・」
息子: 「あれ。母さんも欲しくなった?」
母: 「違うわよ。これ、おばあちゃんにも買ってあげようかな」
息子: 「もう買ったよ」
母: 「え?」
■BGM〜「インテリアドリーム」
息子: 「いま、おばあちゃんの部屋から古いベッドを引き取ってもらってる」
母: 「誰が買ったの?」
息子: 「僕に決まってるじゃん。銀行って給料いいんだから」
母: 「うそ」
息子: 「ホントだよ。
それに大学時代のプログラマーのバイト代、結構たまってたんだぜ」
母: 「おばあちゃんに伝えなきゃ」
息子: 「もう伝えてる」
母: 「ええ〜っ!?」
息子: 「腰とか背中とか痛いところを聞いて、
マットレスも硬いのと柔らかいのどっちがいいかも聞いた。
その上で睡眠アドバイザーに相談したんだ」
母: 「あなたって人は・・・」
息子: 「おばあちゃんの部屋の間取りも測っておいて
配置シミュレーションでどうやっておこうかも考えたから」
母: 「まったく・・・」
息子: 「なに、感動した?」
母: 「さすが私の息子だわ」
(母と息子の笑い)
登場人物
・彼女(25歳)・・・インテリアコーディネーター/大学卒業後インテリアで課題を解決する仕事に憧れて現職に就く(CV:桑木栄美里)
・彼(37歳)・・・公認会計士/30代になって国家試験に合格。リモート打合せが増えてきたためコーディネーターに部屋のインテリアを相談中(CV:日比野正裕)
<シーン1:現在/インテリアショップ>
(SE〜インテリアショップの店内)
彼女: 「遅くなってごめんなさい!」
彼: インテリアショップの入口。
階段横にディスプレイされた華やかな絵画を見ていた僕の元へ
息をきらして彼女が走り込んできた。
彼女は、インテリアコーディネーター。
先月リノベーションした僕のアパートのインテリアを考えてくれている。
今日はインテリアショップの店内で、プランを聞かせてくれるそうだ。
彼女: 「ずいぶん待たせちゃいましたよね」
彼: 「いえ、僕もいま来たところです」
と、答えたけど、それはうそだ。
20分前にインテリアショップに着いた僕は、
ずうっと階段横のところにあるキラキラした絵画を見ていたんだ。
だから、待たされた、という感覚はない。
不快な気持ちがないのだから、
いま来た、と言っても気分的に差し支えないんじゃないかな。
彼女: 「こういうキラキラ系の絵が好きなんですか?」
彼: 「はあ、あまり派手すぎるのは苦手なんですが、
なんか、このモンローに魅入られちゃいまして・・・」
彼女: 「今回のプランに入れましょうか」
彼: 「いや、それは、どちらでも・・・不自然じゃなければ」
彼女: 「うふふ、検討してみますね」
彼: どうも僕の性格的に、イニシアティブをとっているのは彼女のようだ。
ま、クライアントとインテリアコーディネーターという関係なのだから
問題ないのだが。
僕は30代になってから国家試験に合格した遅咲きの公認会計士。
お客さんは若い経営者が多いからだろう。
僕は毎日のように対面でなくリモートミーティングに追われている。
そんなとき、このインテリアショップで彼女と出会った。
街では、街路樹が色づき始める頃だった。
<シーン2:3か月前/インテリアショップ>
彼女: 「ええ、それはスペース的には難しいかもですね。
あ、でも、家具の色をオン・オフで分ける、という方法もありますから。
一度プラン出してみますね」
彼: 聞くとはなしに聞こえてきてしまった電話のやりとり。
ホームオフィスのコーナーで
イヤホンを耳につけた彼女が忙しそうに会話していた。
彼女: 「わかりました。
では、来週。リモートで打合せしましょう」
彼: 電話をきって顔をあげた彼女と思わず目が合ってしまった。
あわてて目を伏せる彼女に、僕は大胆にも声をかける。
いつもの僕なら絶対にありえない行動パターンだけど。
彼: 「あの・・・インテリア関係の方ですか?」
彼女: 「え・・・」
彼: 驚いて顔をあげた彼女はとまどいながら答える。
彼女: 「ええ。でも、このお店のスタッフではありません」
彼: 「あ、はい。わかります。
実は・・・僕、最近、リモートミーティングが増えてきちゃって
ホームオフィスのコーナーを見てたんですけど・・・」
彼女: 「ああ、じゃあ店員さんに聞いたら・・・」
彼: 「はい。でも、その前にあなたの話が聞こえちゃったので・・・」
彼女: 「まあ」
彼: 「あ、いえ、決して、盗み聞きしてたんじゃあないんです。
今さら、と言われそうですけど、
僕のアパートには、ホームワークの環境が全然整っていなくて。
だからせめて画面に映る背景くらいは、ちゃんとしておきたい。
でも、自分ではどうしたらいいかわからない。
途方にくれていたときに。あなたの声が耳に飛び込んできたんです。
あ、なんか、まくしたてちゃってごめんなさい!」
気がつくと、彼女は笑っていた。
気がつくといなくなっていた、という顛末を想像していた僕にとっては
予想外の嬉しいリアクションだ。
彼女: 「よかったら、詳しくお話を聞かせていただけます?」
彼: 「ホントですか」
こうして僕たちは、クライアントとして、インテリアコーディネーターとして
このあとも顔を合わせることになった。
<シーン3:2か月前/カフェ>
(SE〜カフェ店内の雑踏)
彼女: 「今日も遅れてごめんなさい。前のミーティングがおしちゃって」
彼: 「リモートでもいいんですよ」
彼女: 「あら、リモート対策のリノベじゃなかったんですか」
彼: 「はは、そりゃそうだ」
彼女: 「それより、一度おたくにお邪魔しないと」
彼: 「え・・・」
彼女: 「早い方がいいわ」
彼: 僕は頭の中で、部屋の間取りと、散らかった生活の残骸を思い出していた。
彼女: 「ご都合はいかがですか?」
彼: 「じ、じゃあ、来週で」
彼女: 「そうと決まれば、いろいろ準備しておかないと」
彼: なぜか、テンションが上がる彼女に対して、僕の方は冷や汗が止まらなくなった。
まあ、なんとかなるだろう・・・
<シーン4:1時間前〜現在/街角からインテリアショップへ>
(SE〜街角の雑踏/遠くにジングルベルの音など)
彼: 12月の声を聞くと、気の早い街角にはジングルベルが流れ出す。
きらめくイルミネーション。
街を歩く人はみな、早足で家路を急ぐ。
私は人々の流れとは反対方面へ向かう。
目的地はインテリアショップ。
最近ではインテリアスタジオと言うらしい。
ホームオフィスに置くインテリアのプラン。
今日、
インテリアコーディネーターの彼女が最終案を出してくれることになっている。
僕の部屋にまで来てくれて、実際に見て考えてくれたのだから
もう間違いはないだろう。
インテリアショップへ到着したのは、約束より20分も早い午後。
僕は入口にディスプレイされた絵画を眺めながら彼女のことを思っていた。
30代を超えて公認会計士の国家試験に合格するまで、
僕はひたすらあの部屋で勉強し続けてきた。
実は、あの部屋で靴を脱いだ女性は、彼女ただ一人。
そんな彼女に今日はささやかなプレゼントを用意した。
ドイツ製のスケールとメジャー、ボールペンのセットだ。
いつもヒビの入ったスケールとインクが少し滲んだボールペンを
使っていたみたいだから。
ついでに、少し年季の入った真鍮の懐中時計も。
亡くなった父からもらったこれも、ドイツ製だ。
喜んでくれるかな・・・
え?いや、そういう意味じゃなくて。
お世話になった感謝の気持ちを、ってこと。
僕は時間が経つのも忘れ、入口の絵画を見て考えていた。
絵の中で僕に微笑むのは、まばゆく装飾されたマリリンモンロー。
『七年目の浮気』の有名なシーンは、見続けるとなんだか照れてしまう。
彼女: 「遅くなってごめんなさい!」
彼: 気がつくと、息をきらして彼女が走り込んできた。
彼女: 「ここで、実際に家具を見ながらお話しましょ」
彼: 彼女が説明する最終プランは、まさに僕のためのオーダーメイドだった。
三方を壁に囲まれた間取りをうまく使ったレイアウト。
可動式の仕切りを使ってオンオフを切り替えられるようにという配慮。
色もウォールナットの落ち着いた配色で
普段の仕事もリラックスしてできそうだ。
彼女: 「どうかしら」
彼: いつも自信家に見える彼女が、ちょっぴり不安気にたずねてくる。
僕は、”完璧だ”と伝え、バッグからプレゼントを出して彼女に渡した。
彼女: 「え・・」
彼: 彼女はプレゼントをあけると目を伏せた。
やっぱり、僕のひとりよがりだったのかな・・・。
彼女: 「あの・・」
彼: 「あ、はい」
彼女: 「クリスマスって・・・」
彼: 「え?」
彼女: 「クリスマスって好きですか?」
彼: 唐突な質問に僕は言葉を失った。
うろたえる僕に彼女は話を続ける。
彼女: 「実は今日、もうひとつプランを持ってきているんです」
彼: 「はあ」
彼女: 「間取りは同じですが、クリスマスまでの期間限定バージョン」
彼: 彼女が見せてくれたもうひとつのプラン。
そこには、ウォールナットのデスクやキャビネットの横に
小さなクリスマスツリーが飾られていた。
キャビネットの上にも赤いキャンドルとスノードームが明るく光っている。
三方の壁にも星屑のようにイルミネーションが輝いていた。
彼女: 「私、小さい頃からクリスマスって特別なんです。
だから、ついこんなプランも作っちゃって・・・」
彼: 「あ」
彼女: 「もしお気に召さなければ、このBプランは破棄してください」
彼: 「いえ、こちらも採用させてください」
彼女: 「え」
彼: 「プランの中の雑貨は今から買いにいきましょう」
彼女: 「ありがとうございます!
それじゃ、ひとつお願いがあります」
彼: 「はい」
彼女: 「この中のスノードームは私からプレゼントさせてください」
彼: 「え・・・、あ、ありがとうございます!」
彼女: 「私こそ、プレゼントありがとうございました」
彼: クリスマスの小さな奇跡。
賢者の贈り物にはならなかった懐中時計が未来を予感しているようだ。
クリスマスの思い出は、大人になっても心の中に残り続ける特別なものです。
今回の物語は、少女時代の主人公が思い出す“あの年のクリスマス”を描いています。
家族で飾るイルミネーション、待ち遠しいプレゼント、そしてサンタさんへの願い──。
あの夜、サンタの正体を知ってしまった彼女が手にしたものとは?
この物語は服部家具センター「インテリアドリーム」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、Appleなどの各種Podcastプラットフォームでボイスドラマ としても楽しめます。
ぜひ、音声とともにこの温かな物語に浸ってください。
さあ、クリスマスの魔法が始まります──。
登場人物(※設定は毎回変わります)
・娘(5歳)・・・毎年家族で祝うクリスマスを2歳上の兄と共に心待ちにしている。設定は25歳になった女性が少女の頃を思い出すといった内容(CV:桑木栄美里)
・父(37歳)・・・クリスマスを楽しみにしている子供たちのために毎年いろいろな趣向を凝らす。イルミネーションで飾られた家は近所でも有名だった(CV:日比野正裕)
【Story〜「サンタの正体〜クリスマス雑貨/前編」】
<2003年12月24日>
全員: さん、にい、いち、点灯!
(SE〜家族の歓声と拍手)
娘: 「わぁ〜!
きれい・・・」
父: 「さあ、これでクリスマスの準備はパーフェクトだ!」
娘: 今から21年前。リビングの小さなツリーに灯りがともった。
毎年この季節を心待ちにしていた少女が目を輝かせる。
父: 「今年もサンタさん、来てくれるといいね」
娘: 「うん。でも大丈夫かなあ。
ちゃんとうちのこと覚えてくれているかなあ」
父: 「心配いらないよ。きっと来てくれるから」
娘: 「だけどだけど、夏におうちの屋根修理しちゃったでしょ。
サンタさん、迷っちゃうかもしれない」
父: 「だから、お庭と玄関にイルミネーションをともすんだよ」
娘: 「じゃあ今年は早めにイルミネーションともして」
父: 「わかってる。今から準備するところ」
娘: 実は、我が家のイルミネーションは近所でも有名だった。
玄関周りをライトアップするだけでなく、
庭の大きなモミの木や、桜や梅、紫陽花やツツジまで
鮮やかな光に包まれる。
それだけじゃない。
まるで絵を描くように、高い外壁には雪の結晶やスノーマンたちが光り輝き、
父の手作りの仕掛けの中で、トナカイが走っていた。
絡まるツタも星座のように瞬き、父のこだわりで私の魚座が
真ん中で煌めいている。
屋根の下からはつららのような光の粒が降ってきた。
毎年クリスマスシーズンになると、華かやな光に誘われて
見知らぬカップルたちが我が家のイルミネーションの下(もと)に集まってくる。
父も母も、庭に入ってくる男女をとがめることなく、微笑ましく眺めていた。
思えば、いい時代だったんだなあ。
父: 「お手伝い、してくれるかい」
娘: 「うん!」
父: 「えらいぞ。きっとサンタさんも褒めてくれるよ」
娘: 喜んで掃き出し窓から庭へ出ようとする私に父が声をかける。
父: 「ちょっと待って」
娘: 「なぁに?」
父: 「お庭のイルミネーションの前にリビングの飾りつけも仕上げないと」
娘: 「リビング?」
父: 「ああ。さてと・・・
これはなぁんだ?」
娘: 「あ!スノーマン!」
父: 「そう、スノーマンの形をした灯りだよ
これをまず、ツリーの横のキャビネットに飾ってくれる?」
娘: 「はぁい」
父: 「飾ったら灯りをともして」
(SE〜スイッチを入れる音)
娘: 「わあ」
父: 「優しい灯りできれいだろう」
娘: 私の背より少しだけ低い木製のキャビネットの上で、スノーマンの灯りは
部屋を優しく照らした。
父: 「次はこれ」
娘: 「キャンドルだ」
父: 「クリスマスだからね。真っ赤なキャンドルでお祝いしよう」
娘: 「やった!」
父: 「キャンドルはあと4本あるからね」
娘: 「パパ、ママ、お姉ちゃん、お兄ちゃんと私の4人だから?」
父: 「そうだね。いいかい、クリスマスまであと4週間あるだろう」
娘: 「うん」
父: 「これから毎週日曜に1本ずつキャンドルをともすんだよ」
娘: 「うん」
父: 「1本1本灯すたびに、ワクワクが大きくなっていく」
娘: 「うん」
父: 「海外ではね、そうやってクリスマスを迎えるんだって」
娘: 「ふうん」
父: 「さあ、最初のキャンドルに火をともそう」
娘: 擦りガラスの燭台に私が置いた太めのキャンドル。
先日父が買ってきたウォールナットのキャビネットに光が映る。
ツリーのイルミネーションとの調和が見事だった。
父: 「今年のプレゼントはもうサンタさんにお願いしたかい」
娘: 「う〜ん」
父: 「どうしたの?」
娘: 「だってお兄ちゃんが絶対無理だって言うんだもの」
父: 「なんだろうね、パパにだけこっそり教えてくれる?」
娘: 「あのね、あのね・・・雪」
父: 「雪?」
娘: 「うん、雪。雪が見たいんだもん」
父: 「そうかぁ、雪かあ。
これはサンタさんもがんばらないといけないな」
娘: 「やっぱりだめかなあ・・・」
父: 「だめじゃないよ。きっと叶えてくれるさ」
娘: 自信にあふれた父の表情を見て、私は安心した。
このあとキャンドルに4回火が灯り、
最後のキャンドルに火をともす、クリスマスイブの夜が近づいてくる。
サンタさんは本当に来てくれるんだろうか?
私の無茶ぶりなお願いをきいてくれるんだろうか?
心配でたまらない私は兄に相談する。
”じゃあがんばってサンタさんをお迎えしよう”
”眠らないようにして、柱の影からこっそりと待ってみよう”
私たちは子どもながらに密かに計画を練った。
そして、イブの夜。
柱の影からツリーを見守る私たち兄妹の前で
リビングの扉が静かに開き、
赤い服を着たサンタが入ってくる。
”きた”
”しっ”
私たちがそこにいることも知らずに、
サンタはツリーの根もとに3つのプレゼントを置いた。
”でも、雪は?”
まだまだ不安でたまらない私は思わず一歩前へ出る。
フローリング越しに伝わる物音にサンタさんが振り向く。
その瞬間白いひげが床に落ちた。
”パパ?”
一瞬、驚いた表情をしたあと、
サンタさんの姿をした父が私たちの元へ歩いてくる。
兄も驚きを隠せず言葉が出ない。
サンタの父は、いつもの穏やかな表情で私たちに声をかける。
父: 「パパじゃないよ」
娘: 「え?」
父: 「パパの姿をしているけど、私はサンタクロース。
イブの日とクリスマスは世界中の子どもたちのために大忙しなんだ。
だから、みんなのパパ・ママの体を借りて、プレゼントを届けにいくんだよ」
娘: 「すごぉい!
でもでも、私のプレゼント、大丈夫だった?」
父: 「もちろん、大丈夫だよ」
娘: 「ホント!?でも・・・」
父: 「心配なら、いまここであけてごらん」
娘: 「いいの?」
父: 「ああ、サンタの私が言うんだから問題ない」
娘: 私は、おそるおそる包みをあける。
ていねいにあけようとするけれど、焦って包み紙を破ってしまう。
父: 「急がなくてもいいから、ゆっくりあけるんだよ」
娘: 包み紙の中から出てきたのは、真っ白な粉雪が舞うスノードーム。
屋根に雪が積もった小さなおうちと、女の子のお人形が楽しそうに笑っていた。
父: 「これで合ってるかな」
娘: 「うん!すごい!雪だぁ!」
父: 「じゃあ、私はもう行かないと」
娘: 「サンタさん、ありがとう!」
父: 「パパによろしくな」
娘: そう言ってウインクしたあと、空を指差して、
父: 「君はとってもいい子だから、特別なプレゼントも準備したからね」
娘: と、いたずらっぽく微笑んでサンタさんは出ていった。
窓の外には、鈴の音と笑い声が遠ざかっていく。
しばらく呆然としていた私たちは気がついて窓の方へ走る。
開け放たれた窓から顔を出すと、イルミネーションに白い息が照らされた。
空を見上げると、小さな白いものが降ってくる。
手のひらで溶けていくその結晶は、
娘: 「雪だ・・・」
あれは、今でも魔法だと思っている。
あのときの父の姿をしたサンタも。
奇跡が起きても不思議ではないのがクリスマスだから。
前編では、息子の視点から「母の過去」が描かれましたが、今度は 若き日の父と母 の青春の物語です。
夢を追いかけ、大学祭のステージに立つ彼女。
その姿を見守る彼——そして二人の未来へとつながる「家具選び」のエピソード。
あの日、何を思い、何を選び、そしてどんな未来へ進もうとしたのか。
「新生活応援」というテーマのもと、それぞれの人生の選択をじっくりと見つめていただけたら嬉しいです。
登場人物(※設定は毎回変わります)
・母/妻(21歳/28歳)・・・大学生時代は演劇部とダンス部をかけもち/現在はミュージカル劇団に所属して舞台に立っている(CV:桑木栄美里)
・父/夫(22歳/29歳)・・・妻とは高校〜大学の同級生で演劇の世界に憧れるも挫折して会社員に/現在は証券会社の営業(CV:日比野正裕)
(※脚注)
・ピルエット・・・バレエ用語。 体を片脚で支え,それを軸に,そのままの位置でこまのように体を回転させること
・マチソワ・・・フランス語。昼公演が「マチネ」(matinee)、夜公演が 「ソワレ」(soiree)。1日2回公演ある日にどちらも観劇することを「マチソワ」という
<妻21歳/夫22歳>
(SE〜大学祭の雑踏+キャンパスの中におこる歓声と口笛)
彼: オープンカフェの前で、赤いドレスの彼女がピルエット(※)を舞う。
手作りの看板。手書きのメニュー。
大学祭の模擬店は、彼女のおかげで大賑わいだ。
彼女: 「いらっしゃいませ!
ご注文は・・・?
え?ここに書いてあること?
もちろん、本当ですよ」
彼: メニューの横に赤い文字で書かれていたのは、
『スペシャルパフェ』ご注文の方へ。
もれなく、キュートなダンサーがバレエを踊ります』
さっきから、彼女のダンスがひっきりなしにオーダーされる。
彼女: 「ありがとうございました!」
彼: 「大丈夫?疲れてない?もう10回以上続けて回ってるじゃん」
彼女: 「ぜ〜んぜん大丈夫!あ〜楽しい〜!」
彼: 大丈夫なわけないと思うんだけどなあ。
(※)マチソワでミュージカルの舞台をこなしながら、
幕間で模擬店に立っているんだから。
僕なんて、午後1回の朗読劇だけで、ヘトヘトになっているっていうのに。
カメラを向けるお客さんの前でハイテンションのまま、
今度はパンシェ(※)を決める。思わず見惚(みと)れてしまう。
(SE〜カメラのシャッター音)
彼女: 「ねえ、模擬店ハケたら、家具屋さん行くこと覚えてる?」
彼: 「ああ、もちろんさ」
彼女: 「そっちも楽しみだなあ」
彼: 大学を卒業したら1人暮らしをする彼女のために、
今日夕方から家具屋さんに付き合うことになっている。
実は、昨日時間があいたから、1人で見に行ってきたんだ。
新生活応援フェア?
とかいう、ちょうどぴったりなキャンペーンやってて、
イケてる家具がいっぱい並んでた。
彼女に絶対似合いそうな白いベッドにソファ、食卓、スタンドミラー・・・
いつかそこに僕も・・・
いやいやいや、そうじゃなくて。
同じ志を持つ2人が、一緒に頑張っていければいいな・・・
っておんなじことか。
そんなこんなで、いろんなことを考えながら、店内を何周もしちゃったよ。
彼女: 「ねえ、ごめんなさい。
ピルエットの注文いっぱい入っちゃった。
模擬店少し時間延長するって」
彼: 「いいよいいよ、家具屋さんだって早仕舞いはしないから」
彼女: 「ありがとう」
彼: 結局、家具屋さんに着いたのは、もうほとんど閉店間際だった。
それでも、笑顔で迎えてくれるお店の人に感謝して、
僕たちは家具の森を散策していった。
<妻28歳/夫29歳>
(SE〜街角の雑踏)
彼女: 「私、次の公演で舞台を降りるわ」
彼: 「え?」
観劇の帰り道。彼女が笑顔で僕に言った。
lおかげで今日話そうと思っていたことがすっかりどこかへいってしまった。
彼女: 「大学卒業して、もう7年か・・・。
結構がんばってきたなあ」
彼: 「どういうことだよ?」
彼女: 「このままミュージカルを続けていっても
プロとして大成できるとは思えないもの」
彼: 「そんなことないよ。君ならなれるさ。
あきらめるのは僕だけでいいじゃないか」
彼女: 「きっとあなたはそう言うと思ったわ」
彼: 今度は僕の目を見て、寂しそうに笑う。
彼女の瞳、シチュエーションはまったく違うけど、
あの日の瞳によく似ている。
当時は彼女も僕も高校生。
演劇部で舞台の背景係をしている彼女をからかったとき。
彼女は、僕の言葉を聞き流しながら、
公演ポスターの前で寂しく笑っていた。
彼女: 「でも・・・、私なんて無理だもん」
彼: そうつぶやいたあと、今度は僕の手をとり、少しいじわるそうに笑う。
彼女: 「ねえ、今度のミュージカルのタイトル、知ってる?」
彼: 「え?なに?いきなり?わかんないよ」
彼女: 「大切なものは目に見えない・・・」
彼: 「え・・・」
彼女: 「そう。サン・テグジュペリ。星の王子さま」
彼: 「あのときの・・・」
彼女: 「はじめて私が舞台に立った朗読劇」
彼: 「こんなことってあるんだな」
彼女: 「あのときは、無我夢中で、考える間もなく幕引きになっちゃったけど」
彼: 「そうだな。しかも僕の代役だったし」
彼女: 「思えば、自分でもよくやったと思う」
彼: 「本当だな。すごく眩しかった」
彼女: 「なぁに言ってるの」
彼: 「今回は、それをミュージカルでやるんだな」
彼女: 「うん」
彼: 「配役は?」
彼女: 「うふふ」
彼: 「キツネか!?そうなんだな!?」
彼女: 「最後にふさわしいでしょ」
彼: 最後、という言葉が僕の胸に突き刺さった。
ふいに僕は、今日彼女に会った本来の目的を思い出す。
彼: 「わかったよ。君の最後の花道にこれ以上のタイトルはない」
彼女: 「ありがとう」
彼: 「実は僕からも話があるんだ」
彼女: 「なあに?」
彼: 「このあと一緒に家具屋さんへ行かないか?」
彼女: 「家具屋さん?7年前に行ったところ?」
彼: 「うん」
彼女: 「1人暮らしでもするの?」
彼: 「未来を見にいきたいんだ」
彼女: 「未来?」
彼: 「できれば君と2人で生きていく未来」
彼女: 「え・・・」
彼: 「僕もやっと気づいたんだよ。
大切なものは目に見えない・・・」
彼女: 「こころでみなくちゃ、ものごとはよく見えない」
彼: 「そういうこと。
これからは・・・同じ家に帰ろう」
彼女: 「はい」
彼: 思えば10年前のあの日。
彼女に役を譲ったあのときから、僕はこの日を待っていたのかもしれない。
「大学祭のピルエット」は親子の何気ない会話から、時を遡りながら描かれる“人生のワルツ”です。自分の知らなかった母の過去、そして一つの写真をきっかけに明かされる思い出——。新生活を迎えるとき、誰もが思い出の中にある「大切なもの」を振り返ることがあるのではないでしょうか?
この作品は 服部家具センター「インテリアドリーム」 の公式サイトをはじめ、Spotify、Amazon、AppleなどのPodcastプラットフォームで配信 されています
登場人物
・母/妻(51歳/21歳)・・・大学生時代は演劇部とダンス部をかけもち/現在は社会福祉法人で介護士をしながら、市民ミュージカル劇団で教えているが息子は知らない(CV:桑木栄美里)
・息子(21歳)・・・大学4年生でYouTuber。特技を生かして映像作家になるのが夢(CV:日比野正裕)
<息子21歳/母51歳>
(SE〜家庭の環境音/料理の音など)
息子: 「ねえ、ママ。このひとだれ?」
(BGM〜)
母: 息子がキッチンへ持ってきたのは1枚の写真。
それは、スポットライトを浴びてパンシェ(※)を決める、
赤いドレスのバレリーナ。
・・・30年前の私だ。
やあねえ、どこから掘り出してきたのかしら。
息子: 「ママ?」
母: 「さあ、だれかしら?」
息子: 「この写真、パパのカバンから落ちてたんだけど、きれいな人だよね」
母: 「そう?」
息子: 「え・・・ひょっとして・・・これ、ママ・・・なの?」
母: 「どうかな」
息子: 「すご!ママ、カッケー!」
母: 「そういう口の聞き方やめなさい」
息子: 「ダンスとかやってたんだ?」
母: 「クラシックダンス。バレエよ」
息子: 「ぜんぜん知らなかった!」
母: そういえば、言ってなかったわね。
私、幼い頃からクラシックバレエをやってて、いつも踊ってた。
息子: 「これはいつの写真?何歳?」
母: これは・・・
そう、大学最後の年だ。
21歳だからちょうど今のこの子と同い年ね。
大学祭のときのステージだったと思うけど。
ステージで踊り、その衣装のままカフェで給仕もしたんだわ。
同級生のパパとは演劇部で一緒だったんだけど、
私はミュージカル志望だったから、ダンス部とかけもち。
いつか2人でミュージカルの大舞台に立とう、なんて
大それたことも話し合ってたっけ、うふふ。
息子: 「なにエモい顔してんの?」
母: 「おっと、ごめんごめん。
ちょ〜っと思い出しちゃってね」
息子: 「パパとのこと?」
母: 「うん。スマホだけど別の写真も見る?」
息子: 「見たい!」
母: 「はい、どうぞ」
息子: 「え〜なにこれ?家具がいっぱいじゃん」
母: 「大学祭の写真はその1枚しか私持ってないけど、
そのあと2人で家具を見にいったのよ」
息子: 「卒業後に同棲したってこと!?」
母: 「同棲じゃなくて、私の新生活。
ママの引越しが決まってたから、一気に家具を揃えたの」
息子: 「リッチ〜」
母: 「違うわよ。家具屋さんでセールをやってたの。
それで、ソファからダイニング、ベッドにカーテンまでまとめて買っちゃった。
選んでくれたのはパパだけどね」
息子: 「じゃあ、そのときからパパとは付き合ってたんだ?」
母: 「どうかなあ・・・そんな感じじゃなかったけど」
息子: 「でもパパはママのこと好きだったから、今でもこの写真持ってるんでしょ」
母: 「さあ、どうだか」
息子: 「ママってクールだなあ」
母: 「っていうより、昔からパパの方がホットでちょっぴり強引だったのよ。
私、なかなか決められない質でしょ。
オマエには絶対白が似合う!って、すべて純白の家具をパパが選んだの」
息子: 「パパらしいや」
母: 「私も、白い家具が好きだったからいいんだけどね・・・
白い木製の家具、ホントに素敵だったなあ・・・
新婚じゃなくたって、真っ白なインテリアに囲まれた暮らし、憧れてたもの」
息子: 「なにノロケてんの」
母: 「あら失礼」
息子: 「でもいまはうちの家具、割と濃い色の木目じゃん」
母: 「それは、パパが・・・」
息子: 「やっぱパパの趣味かあ」
母: 「いいえ、あなたのために選んだのよ」
息子: 「え?」
(BGM〜インテリアドリーム)
母: 「卒業してから7年後にパパとママが結婚して
あなたが生まれたから」
息子: 「あ・・」
母: 「あなたとの新しい生活のために、パパがこの家具たちを選んだのよ」
息子: 「そっか・・・」
母: 「木の家具を選んだのは赤ちゃんのあなたのため」
息子: 「うん」
母: 「あなたを守るために、自然の優しい材料にして」
「あなたが優しい心を持てるように、優しい木目の色合いにして」
「あなたの未来のために、環境にも配慮して、って」
息子: 「すごいな・・・」
母: 「木の家具は耐久性もあって、お手入れもかんたん。
それに木って呼吸するから、部屋の中の湿度を調整してくれるでしょ」
息子: 「そうなんだ・・・」
母: 「次はあなたの新生活ね」
息子: 「なにそれ」
母: 「1人暮らし?それとも結婚・・・」
息子: 「まだ早くない?」
母: 「人生に早いも遅いもないでしょ。
この世は舞台、人はみな役者なんだから」
息子: 「ママ・・・」
母: 息子が切なそうな表情で私を見つめてくる。
いつまでもそばにおいておきたいけど、
新しい一歩は自分で考えて踏み出さないと。
独り立ちをするとき、
あなたを優しく見守ってくれるのは、きっと新しい家具たち。
そうやって人生を慈しみながら、いつか大切な人を見つけてほしいな。
誰だって、人生の戯曲は自分で書いて仕上げるものだから。
前編では、8歳と16歳の娘と父の思い出 を中心に、「運動会のバトン」と「食卓のバトンリレー」を通じて、家族の絆を描きました。
後編では、娘がさらに成長し、父との関係が変化していく様子 をお届けします。人生の中で家族の役割は少しずつ移り変わっていきますが、それでも変わらない「温もり」とは何か? そんな想いを込めました。
また、この物語は ボイスドラマ としてもお楽しみいただけます!
Spotify、Amazon Music、Apple Podcast をはじめとする各種Podcastプラットフォーム、そして 服部家具センター「インテリアドリーム」公式サイト で配信中です。
音声ならではの臨場感や、キャラクターの息づかいがより深く伝わる作品になっていますので、ぜひ聴いてみてください。
それでは、後編の物語へどうぞ。
【登場人物】
・娘(16歳/24歳)・・・高校=陸上部のアンカー/現在=スポーツインストラクター(CV:桑木栄美里)
・父(59歳/67歳)・・・自ら経営する会社を引退後地元に請われて市会議員に(CV:日比野正裕)
<娘16歳/父59歳>
(SE〜玄関が開く音/引き戸)
娘: 「ただいまぁ」
父: 「おかえり!」
(BGM〜)
娘が疲れた顔で帰ってくる。
今日も陸上部でトラックを何周も走ってきたのだろう。
娘: 「おなかすいたぁ。晩ご飯なあに?」
父: 「お前の大好きな鶏飯だよ」
娘: 「やったぁ」
父: 「さ、汗かいただろうから、先にシャワー浴びてきなさい」
娘: 「うん!秒で入ってくるからすぐ準備して!」
父: 「急がなくていいからゆっくり温まってきなさい」
まったく、また訳のわからない若者言葉を使って・・・。
ああ、それに答えてる私も私か、ははは。
娘は高校1年生。
陸上部に所属してトラック競技の全国大会を目指している。
毎日、早朝の朝練と放課後の部活動。
だから、妻が海外勤務で家を留守にしているいまは
私が朝夕の食事を支度する。
私自身、経営していた会社をリタイアして、若手に道をゆずったばかり。
だからこそできる、アスリートのアシストなのである。
(SE〜料理をする音)
娘: 「おっまたせ〜」
父: 「ちゃんと髪の毛かわかさないと、風邪ひくぞ」
娘: 「わっかりました〜」
父: いつもの、わかっていないときの言い方だな。
しょうがないなあ。
(SE〜料理を食卓に置く音)※ひとつずつSEつける
父: 「はい、鶏飯」
娘: 「わ〜、いい匂い〜」
父: 「今日はささみにシイタケ、パパイヤの味噌漬けとのりを入れてみた」
娘: 「すごつ、アスリートのレシピじゃん」
父: 「それからぶり大根に、」
娘: 「わ、旬の先取りだね」
父: 「さつまあげ」
娘: 「私の好きなものばっかり」
父: 「今日のさつまあげは、ハモのすり身だぞ」
父: 「この食卓、たくさんおかずを置いても広々としてていいだろ」
娘: 「そりゃあ、アンカーの私が選んだインテリアだもの」
父: 先日までダイニングにあった食卓は、船便で妻の住む海外へ渡っていった。
その代わりにバトンを受けついたのが、この楕円形の食卓だ。
娘と2人で使うには少し大きいかもしれないが、
あえてこのサイズを選んだのには訳がある。
食卓、というのは家族が集まる場所。
大きな食卓と座り心地のいいチェアでゆったり時間を過ごす。
食卓を中心に、家族が向かい合って、家族の時間を大事にする。
こうやって、家族の絆=ぬくもりを大切に守っていきたい。
いつまでも・・・
娘: 「パパ、陸上トラックの全国大会、見にきてくれる」
父: 「もちろんさ、リレーはアンカーなんだろ」
娘: 「そうだよ、3位以内でバトンを渡してくれれば、
絶対にトップに出る自信はある!」
父: 「そりゃ頼もしいな」
娘: 「優勝したら、そのバトンはパパに渡すからね」
父: 「そんなことできないだろ」
娘: 「いいの、大会運営の人に頼んじゃうから」
父: 父親の私が言うとただの親バカになるが、娘はすごい。
大会当日、本当に1位になり、私にバトンを渡してくれた。
そのバトンは、娘が24歳になったいまも食卓の上を飾っている。
<娘24歳/父67歳>
(SE〜玄関が開く音/引き戸)
娘: 「ただいま」
父: 「おかえり」
(BGM〜)
一人暮らしをしている娘が、半年ぶりに実家に帰ってきた。
娘の仕事は、スポーツインストラクター。
陸上部にいたときのスキルを生かしてスポーツジムで働いている。
いろいろ疲れているのだろう。
部活帰りでも元気に笑って帰ってきた高校時代とは違い、
口数も少ないまま、食卓に座る。
娘: 「パパ、このバトン・・・」
父: 「ああ、お前からもらった一点モノだよ」
娘: 「あの頃は、なんだってできる気がしてたなあ」
父: 「いまだってできるさ」
娘: 「そう簡単じゃないのよ。仕事となると」
父: 「おお、一人前の口をきくようになったじゃないか」
娘: 「ふざけないでよ」
父: 「ふざけてないさ。
おまえには、お父さんから受け取ったバトンがあるだろ」
娘: 「なにそれ」
父: 「『家族のぬくもり』というバトンだよ」
娘: 「家族のぬくもり?」
父: 「お前が一人暮らしを始めるとき、家具屋さんで食卓を買ったろ?」
娘: 「うん」
父: 「食卓があれば、お父さんやお母さんの温もりがつながっていくんだよ」
娘: 「うん」
父: 「これから先、好きな人ができて、住むところが変わり、
食卓も大きなサイズが必要になったとき、
ぬくもりのバトンは、また受けつがれていく」
娘: 「うん・・・」
父: 潤んでいく娘の瞳の中に、食卓のバトンが滲んでいる。
食卓を通じて、家族のぬくもりは消えることはない。
家族のぬくもりというリレーは、こうして未来永劫つながっていく。
父と娘の絆を「バトンリレー」と「食卓」を通して描いた、温かくて少し切ない家族の物語です。幼いころの運動会の思い出、成長した娘との食卓を囲む日常、そして母への想いが交差する中で、家族の絆がどのように受け継がれていくのか——。
本作は 前後編の二部構成 となっており、前編では 8歳の娘と51歳の父、16歳の娘と59歳の父 を軸にしたエピソードをお届けします。ぜひ、娘と父のやりとりを通して、「家族の温もり」を感じていただければと思います。
さらに、この物語は ボイスドラマ化 もされています!
Spotify、Amazon Music、Apple Podcast をはじめとする各種Podcastプラットフォーム、そして 服部家具センター「インテリアドリーム」 の公式サイトでお聴きいただけます。音声だからこそ伝わる空気感や臨場感を、ぜひ楽しんでください。
それでは、物語の世界へどうぞ。
【登場人物】
・娘(8歳/16歳)・・・高校=陸上部のアンカー/現在=スポーツインストラクター(CV:桑木栄美里)
・父(51歳/59歳)・・・自ら経営する会社を引退後地元に請われて市会議員に(CV:日比野正裕)
【Story〜「父の運動会〜食卓のバトンリレー/前編」】
<娘8歳/父51歳>
(SE〜運動会の音/歓声)
娘: バトンを持った父が先頭集団を抜けて私の元へ走ってくる。
汗をいっぱいかきながら、満面の笑みで私に手渡す。
父: 「あとはたのんだぞ!がんばれ!」
(BGM〜)
娘: 運動会の親子リレー。
44歳年が離れた父は、友達のお父さんと比べてもかなり目立っていた。
出場するお父さんたちの中で多分一番年長。
だけど、運動神経は誰にも負けていない。
そんな私たちを見て、観覧席から母が一生懸命手を振る。
8歳の私と51歳の父。
あのときの父の姿は、記憶の中の宝物だ。
<娘16歳/父59歳>
(SE〜キッチンの音)
娘: 父が会社からのリタイアを決めたのは、私が高校へ進学した年。
朝早く私の弁当を作りながら
若手へバトンを渡すんだと喜しそうに笑った。
母は仕事で海外勤務となり、父と2人だけの生活。
私はというと、中学から始めた陸上トラック競技に夢中だった。
朝練から放課後の部活まで、走っている時間が一日のうち一番長い。
父: 「今度のリレーはアンカーなんだって?」
娘: 「うん」
父: 「じゃあ、食事も気をつけないとな。パンをやめてご飯にするか。
炭水化物が重要なんだろう」
娘: 「それは長距離走でしょ。私は短距離。
スプリンターだから今まで通り、パンにヨーグルト、グラノーラでいいよ」
父: 「そうか。お父さん、会社やめたら時間がいっぱいできるから一緒に朝走るかな」
娘: 「やめてよ。年を考えて。
それにさ、毎日私に付き合ってこんな朝早くに起きなくていいから」
父: 「そんなことしたら、お前が栄養とれないじゃないか」
娘: 「大丈夫よ。コンビニでも、カロリー考えて食べ物選ぶから」
父: 「そうかあ、それなら明日から朝寝坊するかな・・・」
娘: そう言いながら、きっと明日の朝もキッチンに立っているのだろう。
私は食卓に並べられていく朝食を眺めながら父の後ろ姿を見つめる。
父: 「そうだ、忘れていたけど、今日部活のあとで
家具屋さんに付き合ってくれないか」
娘: 「いいけど・・・、家具買うの?」
父: 「実はな、海外にいるお母さんから、
うちの食卓を送ってほしいって言われてるんだ」
娘: 「なにそれ?
ママが住んでるところ、家具つきのコンドミニアムじゃなかった?」
父: 「どうも備え付けの食卓が気に入らないらしい」
娘: 「そんなぁ」
父: 「ああ、だから最初がまんしてたらしいんだけど、
住んでるうちに、どうしてもこの食卓を送ってほしくなったんだって」
娘: 「おんなじような食卓、海外のインテリアショップにもあるでしょ」
父: 「この食卓じゃなきゃだめだそうだ」
娘: 「えー大変だよ。送料だって馬鹿にならないじゃん」
父: 「そりゃ、そうだけど」
娘: 「でいつ送るの?」
父: 「もし今日、新しい食卓を決めたら、入れ替わりにこれを送るよ」
娘: 「えええええ!同じ食卓を買って送るんじゃないんだ」
父: 「お母さんはいま使ってる食卓がいいんだってさ。
お前やお父さんの温もりがしみこんでるからな」
娘: 「やだ、温もりじゃなく、味噌汁やおかずをこぼした跡じゃない?」
父: 「はは、そうかもな」
娘: 「ママ、ホームシックになってるのかな」
父: 「きっとそうだ」
(SE〜インテリアショップの雑踏/娘は走りながら)
娘: 「パパ、おまたせ」
父: 「ああ、きたか」
娘: 「いい食卓あった?」
父: 「いいのはいっぱいあるけど、アンカーはお前だからな」
娘: 「なぁにそれ?」
父: 「これはね、食卓という温もりのバトンリレーなんだよ」
娘: 「ぬくもりのバトン?」
父: 「食卓は家族が集う場所だから、
年月とともに家族の温もりがしみこんでいくだろ」
娘: 「うん」
父: 「お母さんは、きっとその温もりがほしいんだよ」
娘: 「そう・・・」
父: 「お前に選んでほしいのは、温もりをつなぐバトンなんだ」
娘: 「バトン・・・」
父: 「いままでうちで使ってた食卓は、家族3人で座るのにちょうどいい
コンパクトなサイズだったから・・・」
娘: 「まあこうしていろんな食卓をみると確かにコンパクトだったかな」
父: 「今度は、いまより少しだけ大きな6人がけの食卓にしようか」
娘: 「大きすぎない?」
父: 「楕円の食卓にすれば部屋も広く感じるからな」
娘: 「だってママ、しばらく海外から戻らないんだよ」
父: 「いいんだ。いつ家族が増えたっていいようにしておかないと」
娘: 「なあに言ってるの?私まだ16歳だって」
父: 「ああ、そうだったな」
父娘: (笑)
娘: ぬくもりのリレー。
それは8歳の私に父が渡してくれた笑顔のバトンから始まった。
これからもずうっと、バトンを渡し続けていけますように。
パパ、いつまでも元気でいてね。
From the publisher's feed