
Sign up to save your podcasts
Or


2026/8/23㈰午前。マイクを持つのはサラリーマンなおき。昼間はサラリーマン、休日は花屋として活動する。花の世界の魅力を日本中に広げることを使命とし、YouTubeやInstagramで発信中。花の産地へ足を運び、生産者を掘り下げる活動を展開している。マイクとカメラを手に、ハナボウズを訪れた。
初のゲスト回【環境音】
2026年8月15日13時33分、中島は自宅の前で録音を始めた。前夜の祭りで酒を飲みすぎ、疲れを残したままの声である。この日の記録は畑ではなく、住宅の前から始まった。
午後から畑に出て、草取りと防除を少しやっておこうと考えていた。しかし昨日から今日にかけて異常な雨が降り、大雨のために畑へ通じる道が封鎖された。予定は道の封鎖という一点で崩れる。山の農地は、天候ではなく道によって断たれることがある。
この日はインスタグラムで知り合った岡田花屋さんが六合地区に遊びに来ており、ハナボウズにも立ち寄る約束になっていた。中島は封鎖の旨をメッセージで送り、他の場所を見ていってほしいと詫びた。妻と子は明日のバーベキューの買い出しと日常の買い物へ出かけ、中島は家に一人残された。やらねばならないことを数えるうち、産地見学会に来る人のためのハナボウズの概要資料を、画像を入れてもっと固めようと思い立つ。畑に行かなくとも、やることはあった。
最後に雑記として、中島は人に言っていなかった話をひとつ語った。
八月九日、曇り。中島はKのハウスを歩きながら、しばらくぶりの記録に取りかかった。アルケミラとアストランティア・ローマのマルチの穴から出てきた雑草を抜きながら、義母とおばに贈った花に喜びの電話をもらった出来事を振り返る。お金のためだけでなく、感謝そのものが価値の交換になるという気づき。二棟目のセダムハウスでは自身の背丈近くまで伸びた雑草と、こぼれ種から育ったアマランサス・ベルベットカーテンの観察。鳥の声からセミの声へと、いつの間にか変わっていた環境音も記録に残る。ルドベキア・リトルヘンリーの生育不振、ユーフォルビア氷河の開花、アマランサスのピンチ試験区画の経過報告。8月28・29日には市場経由の来場者を迎える準備として、圃場の草取りを進めていく。
お盆前の出荷を控えた午後、圃場Aの作業場にて一人での作業。娘と妻がともに体調を崩し、いつも二人で行う切り花の選別・調整をこの日は中島一人でこなした。ヘレニウムとセダムは調整を終え、残るは直送便の仕上げとミックス箱、そしてソリダゴ・ファイアワークス。朝は冷え込み、昼は27〜28℃まで上がる寒暖差に体は応え、気分は2。
蝉の声とウグイスの地鳴きが、疲れた一日の記録に重なる。
曇り、雨のち曇り。7月27日の朝、M圃場は猪に掘り上げられた畑。注文分のファイアワークスを切りながら、雨が来る前に今日の分を仕上げる。気分は3、平常運転。明日はA圃場の草刈りと防除が待っている。
中島は六合地区の自宅から支所へ向けて徒歩で移動していた。これから花に関する勉強会(部会)、お弁当付きの会に参加する予定である。
会議に向かう道すがら、中島は不安を感じ、ビールを何本か飲んできたことを口にした。良くないことだと自覚しながらも、そのまま歩みを進めている。
勉強会への参加を前に、中島は「責任を持って黙って席についていよう」と語った。
録音は「あれ?」という短い発話で終わっている。この後、録音は停止されたが、花農家の先輩が後ろから来て中島をピックアップしてくれたとのこと。
七月二十一日、火曜日。九時三十一分。中島はセダムとフロックスの防除作業を終えた。週に一度の作業である。あわせて、市場向けの箱詰めも済ませた。Kの石のベンチに腰掛け、山ログを録っている。
今朝は出発が早かったため、朝食はバナナとコーヒーのみで済ませた。先ほど、妻が買ってきてくれたフルーツスティック——湿ったフルーツの入った、カロリーメイトに似た菓子——を口にし、いくらか力を取り戻した。今日の気分は五段階中四。
空は曇りがちで、今は日が陰っているが、晴れ間も見える一日である。一昨日ほど前から、草刈り用にバートルのエアークラフトという空調服を導入した。装着して電源を入れると、涼しさがすぐに感じられる。
父・シンジの誕生日、曇り空の下で始まった一日。注文取りこぼしへの対応、セダムとフィリペンデュラの調整を終えた夕方、今年Mの畑を襲ったイノシシ被害を振り返る。モナルダのピンクをはじめクガイソウやマウンテンミントまで無防備のまま掘り返され、拾えたピンクはわずか五本。毎年注文をくれる花屋への申し訳なさと、暑さと重なる落ち込みの一日。数日前の関東農政局の取材では、公務員と花屋とで響く語り口の違いに気づかされた——ハイドパークやアメリカ研修の実体験が、感性や哲学よりも届いたという独り言。
ハナボウズ圃場コード:たびたび登場する、畑の定義です。
K|湿地・開放農地・森林が接するエッジ環境
A|アトリエ(現在の作業場の隣)
G|ゴリラ形の岩がある枝もの畑(Aから約100m)
M|開拓時に水鉄砲がぶら下がっていた畑、標高1030m・北向きの最高地点(Gの隣)
Y|100坪のビニールハウス(町から借用)
小雨の朝、Kの一棟目のハウスで中島は録音を始めた。鎌を手に作物の脇の草を刈ったところだ。一時間後には取材が来る。それだけの理由で、畑は少しだけ人に見せる顔をする。しかし人が数えようとしなければ気づかなかった数字がある——枝物を除いてなお九十種。中島自身、七十のつもりでいた畑だった。
雨が弱まるにつれ、体は自然と動き出し、気分は一から二を経て三へと上がっていく。植物と同じように、人もまた環境に応じて姿勢を変えるのだと、この朝は静かに教えている。
草に負けたAの畑、そこから生き残った株だけを掘り上げて作った新しい場所へ。量は去年に及ばないが、来年への期待はすでに芽吹いている。畑はきれいに管理されているというより、草より花のほうが元気に生きられる場所のように管理している。中島はそれを、ナチュラルガーデンと呼んだ。
前夜、妻との会話の中で、ハナボウズが何種類の花を育てているのか数えてみようという話になり、中島が数えることになった。三年前に数えたときは五十種類だった。今回、取材を機にあらためて正確な数を数え直そうと、出荷準備を終えた後、録音機を手に畑へ向かう。
一番下の水道のそばから数えは始まり、シュウメイギク、クレマチス、ブルーベリー、セダム、ネペッタ、ロシアンセージ、モナルダ、アキレア、ジャーマンアイリス、マウンテンミント、サンゴミズキ、アリウム数種、水仙……と続いていく。路地に出てからは、沓掛さんからもらったレイセステリア、移住当初からよくしてくれた山本さんの奥さんがくれたチョウジソウ、花楽の里のヤスエさんから譲り受けたバーベインやジョーパイウィードなど、人とのつながりを伴う株も次々と現れる。フジバカマの草取りが追いついていないことも、率直に語られる。
K圃場をひと通り数え終えた後、頭の中で整理しながらM、G、Yへと移動し、それぞれの圃場の株を加えていく。数え終えた時点で、確認できた品目は聞き取り不明瞭なものも含めて合計104件。三年前の五十種類とは数え方の前提が異なるため、単純比較はできないが、この日思いつく限りの株はひと通り記録された。晴れて暑い日、体を動かして気分は良い。午後は植え付け、草刈りへと続いていく。
From the publisher's feed