中島は、標高1030mの北向きの畑、Mへ足を運んだ。今年Yのビニールハウスが増えたぶん、Mまで手が回らなくなっていた。草はすでに手に負えない高さまで伸びている。
暑さが増してきたこの日、目当てはモナルダの収穫だった。妻は作業場でセダムの調整に当たり、中島はひと息つきながらこの記録を録っている。
Mではこれまで、モナルダとフィリペンジュラ、それにクガイソウが採算の取れる品目だった。しかしクガイソウには昨年から黒い斑点が見られ、今年はウイルス病とおぼしき症状が西側一帯に広がっていた。東側はまだ比較的元気な株が残っている。花を切り終えたあとに生きた株を掘り上げ、灌水できる場所へ植え付け直す計画を立てた。
アルケミラとアストランティア・ローマの掘り上げは、昨日ようやく終わったところだ。今年はモナルダとウイキョウをKへ移した経緯もあり、Mという畑そのものを手放すことも頭をよぎった。トラクターで一度耕し直し、草を刈って更地に近い状態に戻す必要がある。
南隣ではカベさんが花豆や野菜をきれいに手入れしている。除草の行き届いたその畑と、自分のMとの落差に中島は苦笑した。鳥の声だけが、変わらずよく響いていた。