「体調はかなり良くなってきた。でも、復職することを考えると怖い」
休職中の方から、よく聞く言葉です。
「また体調を崩したらどうしよう」「仕事についていけるかな」「職場の人にどう思われるだろう」「以前のように働ける気がしない」
家では普通に過ごせるようになったのに、復職のことを考えた途端に不安になる。
すると、
「こんなに不安なのだから、まだ復職できないのでは?」
と思ってしまうことがあります。
でも、私は「不安がある=復職できない」とは考えていません。
むしろ注意したいのは、復職への不安をなくそうとして行っていることが、かえって不安を強くしてしまうことがあるということです。
復職が不安なのは自然なこと
一度、仕事を続けることが難しくなるほど体調を崩し、職場から離れています。
そこへもう一度戻るのですから、不安になるのは不思議なことではありません。
特に、休職前に職場の人間関係で悩んでいたり、仕事量が多すぎたり、失敗した経験が強く残っていたりすると、復職が近づくにつれて当時のことを思い出すこともあります。
ですから、
「不安がなくなったら復職しよう」
と考えたくなるのですが、ここに少し落とし穴があります。
「不安がなくなるまで待つ」と、不安が強くなることがある
復職への不安の多くは、まだ起きていないことに対する不安です。
「上司とうまく話せるかな」「8時間働けるかな」「仕事についていけるかな」「また休職したらどうしよう」
もちろん、復職前に考えておくことは大切です。
でも、家で何度考えても答えが出ないこともあります。
そして、考えれば考えるほど、
「やっぱり無理かもしれない」
という結論に近づいてしまうことがあります。
復職の不安に対して必要なのは、不安をゼロにしてから動くことではありません。
ある程度の不安を抱えながら、少しずつ「働くこと」に近い経験をしていくことです。
復職への不安を強くしやすい3つの行動
一つ目は、ずっと考え続けることです。
「復職したらどうなるだろう」「また失敗したらどうしよう」
何度も頭の中でシミュレーションする。
準備をしているように感じますが、答えの出ないことを繰り返し考えているだけなら、不安を大きくしてしまうことがあります。
二つ目は、復職につながることを避け続けることです。
会社からのメールを見ない。職場の近くへ行かない。復職面談について考えない。生活リズムを整えることも先延ばしにする。
避ければ、その瞬間は楽になります。
でも、「避けたら不安が下がった」という経験が続くと、ますます復職に関係することが怖くなることがあります。
三つ目は、その反対に、不安を無視して一気に戻ろうとすることです。
「もう大丈夫」「復職してしまえば何とかなる」「気合いで乗り切ろう」
これもおすすめできません。
不安や疲労のサインを無視して復職すると、休職前と同じ働き方に戻ってしまう可能性があります。
大切なのは、避け続けることでも、無理やり乗り越えることでもありません。
不安があっても「できた」を増やしていく
まずは、
「私は今、復職することが不安なんだな」
と、そのまま認めてみてください。
そして、不安について考え続けるのではなく、今できることに目を向けます。
朝、決まった時間に起きる。
着替えて外へ出る。
午前中から活動する。
図書館やカフェなど、自宅以外の場所で一定時間過ごしてみる。
パソコンを使って仕事に近い作業をしてみる。
通勤する時間帯に電車に乗ってみる。
こうした経験を少しずつ重ねていきます。
すると、
「朝から動けた」「2時間なら集中できた」「電車に乗っても大丈夫だった」「疲れたけれど、休んだら翌日には回復した」
という事実が増えてきます。
この**「実際にできた」という経験**が、復職への不安を小さくしていきます。
復職への自信は、頭の中だけでは作りにくい
私は復職支援をしていて、復職への自信は「考えて作るもの」ではないと思っています。
「大丈夫」「きっと働ける」
と自分に言い聞かせても、心のどこかで、
「でも、本当に?」
と思ってしまうことがあります。
それよりも、
「やってみたら、案外できた」
という経験を積み重ねる。
すると、
「不安はある。でも、案外できるかもしれない」
という感覚が生まれてきます。
復職前には、この感覚がとても大切です。
だから、復職前にリワークを利用してほしい
ここまで読んで、
「でも、それを一人でやるのは難しい」
と思った方もいるかもしれません。
そのために、私はリワークという選択肢を知ってほしいと思っています。
リワークは、単に休職中の時間を過ごす場所ではありません。
生活リズムを整える。一定時間活動する。仕事に近い課題に取り組む。自分がどのくらい活動すると疲れるのかを知る。休職に至った要因を振り返る。ストレスへの対処方法を練習する。再休職を防ぐための準備をする。
つまり、職場に戻る前に「働く練習」をする場所です。
長期間仕事から離れていた人が、ある日突然8時間勤務に戻る。
それが怖いのは当然だと思います。
休職と復職の間に、少しずつ仕事に近づいていく期間があっていいのです。
リワークは「状態が悪い人だけ」が利用するものではありません
「私はそこまで重症ではないから、リワークまでは必要ない」
と思う方もいます。
でも、むしろ体調がある程度回復して、「そろそろ復職を考えよう」という時期だからこそできる準備があります。
何ができるようになっているのか。
何がまだ難しいのか。
どんな場面で疲れやすいのか。
どんなストレスが再休職につながりやすいのか。
同じような状況になったとき、今度はどう対処するのか。
こうしたことを確認してから職場へ戻る。
リワークの目的は、単に「復職すること」ではありません。
復職したあと、働き続けられる状態を作ることです。
復職の不安は、ゼロにしなくていい
「復職が怖い」「また休職したらどうしよう」「本当に働けるのか分からない」
そんな不安があっても大丈夫です。
目指したいのは、
「まったく不安ではない」
という状態ではなく、
「不安はあるけれど、準備してきたからやってみよう」
と思える状態です。
そして、その準備を一人でする必要はありません。
医療機関のリワーク、地域の復職支援、民間のリワーク、オンラインのリワークなど、さまざまな選択肢があります。
自分に合った支援を利用しながら、少しずつ「できた」を増やしていってください。
復職のゴールは、会社に戻ることではありません。
戻ったあと、自分の状態を把握し、無理をしすぎず、働き続けられること。
復職することが不安な方ほど、そのための準備としてリワークを活用してほしいと思っています。
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