人は、よく「相手の立場になれ」というが、そう簡単になれないものだ。
「坊主は修業ができているから」と、容易に相手の立場に立ち、相手を理解できるように思っている人も多いようだが、私はいまだにその境地に達し得ない修業不足の田舎坊主だ。
かつて、次女を胆道閉鎖症で亡くすという経験がなければ、原因不明で治療法が確立されていない難病が数多く存在することすら知らなかっただろうし、難病患者の団体を結成し患者会とかかわることもなかっただろう。ましてや難病患者のおかれている現状など知るよしもなかった。
しかしこの経験を通して、少なくとも難病患者家族の立場だけは理解できるようになったし、一生闘病しながらがんばる人たちとも多く出会えた。だからこそ私は難病対策や福祉施策の向上を求めて、毎年街頭署名に立ち、難病患者の現状を訴え国会へ何度も足を運んだりするのだ。
これは法事や葬儀に比することができない、私なりの衆生済度であり、使命でもあるのだ。そしてこれも正しい坊主の有りようだと信じている。
拙書は、現代社会の中で自分の居場所を見失った多くの心疲れた人々に、田舎坊主がぶつぶつと語りかける「自分さがし」の癒しの説法書として書きはじめたのだが、正直なところ現代人への説法とは言いながら、むしろ医療や福祉を志す若者たちや、若き宗教者に是非読んでいただきたいと思っている。そして彼らが綾と織りなす実践努力が大花と結実し、経済効率至上主義の中で見捨てられがちな人々にも、希望を持って生きられる社会が到来することを心から願ってやまない。
私の初版本で、2002年に出版した「田舎坊主のぶつぶつ説法」です。
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