「この牛丼は、夏希さんなんです」

高砂のテーブルに置かれた牛丼を前に、隣の男が恍惚の表情を浮かべる。

私は今日、結婚する。

自分の花嫁を牛丼に例える花婿と、

披露宴のメイン料理に牛丼を出してしまう牛丼屋のボンボンと、

丸々と突き出たお腹のこの牛みたいな男と！

​

そんなことを思っていたら、

「夏希、迎えにきたよ」

目の前に、あの人が立っていた。

花嫁の私を攫いに披露宴会場まで乗り込んできた彼は、

──私の元恋人だった。

Learn more about your ad choices. Visit megaphone.fm/adchoices