皆様は、頭に血がのぼって、怒りを抑えきれなくなってしまった、、、という経験をしたことはありますか?職場においては、怒りはハラスメントにも通じる言動を引き起こすことにもなりかねません。
もちろん、怒りを外に出さないようにしていても、何かのきっかけで感情が抑えきれなくなり、つい普段なら言わないようなことを言ってしまったり、、、、感謝の気持ちがないわけではないのですが、怒りの気持ちのほうが勝ってしまうこともあるかもしれません。相手に怒りをぶつけないとしても、怒りのあまり、自分を攻撃してしまったり、つい涙が出てしまう事もあるかもしれません。外に向けられる分かりやすい怒りでなくても、怒りを心の中にため込んでいる状態はお辛いですよね。職場ではうまく乗り切ったように見えても、職場を出てから家族や初対面のお店の店員さんにキレてしまった。。。ということもあるかもしれません。一人で怒りをどう処理したらいいのかわからずに、自虐的になったり、自己嫌悪に陥ったりしている方も、いらっしゃるかもしれません。
デール・カーネギーは、道は開けるの中で、ある喫茶店経営者のエピソードを紹介しています。そのある喫茶店経営者が経営するお店の料理人がコーヒーをお皿で飲むと言って聞かなかった事に対して、怒り心頭でその料理人を銃を片手に追い回したそうです。結局その経営者はご自身が心臓麻痺で命を落としたそうです。・・・分かりきっていることですが、怒ることは、自分に対しても良い影響を及ぼしません。
そもそも、怒りは二次感情だということはご存じでしたでしょうか?私たちは瞬間的についカッとしてしまいますが、その背景には悲しいとか、寂しいとか、認められなくて悔しい、などの一次感情があります。一次感情の存在に気づいてあげ、その感情を癒してあげることが必要なのです。そして、怒りが体内に発生する化学物質によって引き起こされていることを理解しましょう。私たちの身体が自然な反応を示しているということを理解すると、なんだか自分が愛おしく感じるものです。大切な自分という存在の中に怒りを持ち続けている事は自分の体内に有害物質を増殖させている事だと分かれば、怒りをうまく別のエネルギーに転換できるようになりたいものです。
アンガーマネジメントという言葉をお聴きになったことがある方は多いと思います。デール・カーネギーが100年以上も前に考案した人間関係とストレスマネジメントの原則の中には現代の私たちのアンガーマネジメントにも有効だと思われる原則があります。
それでは、現代のアンガーマネジメントにも有効と思われるデール・カーネギーの原則をみてまいりましょう。今回はストレスマネジメントの原則に特化してお話ししてまいりたいと思います。
1.心身の健康上、悩みに対して支払っている法外な代償のことを思い出す。
これは、前半でも申し上げたことですが、そもそも悩んでいることや、怒っていることで、自分の身体にこそ悪影響を及ぼすということは私たちの誰もが知っている事です。自分のためにもまず、安定した心を持つことを選択しましょう。
2.次の問いの答えを書き記してみる。
a. 問題点は何か
b. 問題の原因は何か
c. 問題のあらゆる可能な解決策は何か
d. 最善の解決策は何か
判断を一時保留にしてみましょう。怒りがこみあげてきそうになったら、目の前で起こっている事柄を客観的に見てみる。場合によっては、自分の怒りの原因は何?どうして怒っている?というような文脈でこのa-dの問いを自分に問うてみることも有効だと思います。そうすると、本当は悲しい。もっと認められたい。。。という本当の願望が出てきたりします。その感情を見つけてあげ、掘り下げて、自ら向き合ってあげると、向けどころがないと思っていた怒りは、自分の本心がむき出しになったことで対処できたり、昇華することもあるかもしれません。
3.祝福を数えて悩みを数えない。
アンガーマネジメントにおいて、6秒ルールというのをお聴きになったことがある方もいらっしゃるかもしれません。実際に怒りの感情がこみあげてきたときは「6秒間花の名前を言ってみましょう。」などというテクニックがあるようですが、人間の直感が思考に切り替わるのが6秒間だと言われています。その感情優位の6秒を花の名前を言って乗り切り、その後、冷静な思考を使って考えるということができるというテクニックです。デール・カーネギー流に言えば、その6秒間は何か自分が普段感謝している祝福を思い出す時間にあててみるのも良いかもしれません。
また、自分を安心させるセルフトークを準備するという事も有益かもしれません。つい笑えるのは、私が少し余裕がなくなってくると、猫好きの同僚が「にゃんとかなる~🐈」と言って和ませてくれます。つい笑ってしまったり、肩の力が抜けると体内にストレス低減に有効なホルモンが分泌されますから、緊急時に自分に掛けるための言葉を常備しておくことはお勧めです。そして素晴らしいことに、リラックスしているときにこそ、パフォーマンスは最大化されるものなのです。
4.敵に仕返しをしない
他者を攻撃しないことは、本当は自分のためであることを、改めてリマインドしたいと思います。他者への激しい非難を始める前に、相手の身になり「人は不完全であり、それゆえに完全である」事を心に留めておきましょう。相手にも何かの事情があるのかもしれません。相手を攻撃しようと思う事は自分の体内に有害な化学物質を増殖している事にもつながるということであれば、いつまでも怒りで心を満たしておきたいでしょうか?太っ腹で許すことが自分にとって最も有益な事ということになります。
5.疲れてしまわないうちに休息する。
実際に体力的に疲れていると心の余裕もなくなります。ストレス耐性を整える意味でも、疲れ切ってしまう前にこまめな休息をとることができていれば、精神的にも強くなり余裕を持てます。休息時間に軽い運動ができればポジティブなエネルギーが充電されます。そうすれば、怒りの感情がそもそも湧きにくい耐性ができてくるのです。また、広い意味で休息ということで、、、怒りが湧いてきたとき、実際に怒りの渦中にいるときは冷静な判断もし兼ねます。目の前に起こっていることから物理的な距離を取り、一旦離れる事も大切です。ここは思い切って一休み。可能でしたら、少し外の空気を吸いに行く。手や顔を洗いに行くことでも良いかもしれません。翌朝に冷静になったら、別の視点で物事が見れるという事も有りますよね。
さて、いかがでしたでしょうか。
「人間は感情の生き物である」と言っているデール本人も「人を動かす」や「道は開ける」の中で、ついカッとなってしまった。というエピソードを共有しています。人間ですから、意図せずに頭に血がのぼってしまうこともあります。そもそも育った環境や、その中で形成された価値観、生まれ持った脳の構造などにより、怒りの耐性、強弱は個人差があるようです。
デール・カーネギーは、起きている出来事や感情の変化による違和感を否定せず味わい、その上で自分は自分で大丈夫と、自己肯定感を持つことで自分にも他者にも寛容になれるというメッセージを現代の私たちに伝えたかったのだと思います。他者に関心を向け、他者の身になったコミュニケーションをとる事で、感情に任せた言動でお互いが傷つくことがない、良好な人間関係を築くことができる方法を30の原則としてまとめ、残したのでした。
論理的で建設的な方であれば、心穏やかに過ごすことが自分を含める周りの全てにとって良い影響をもたらすということはお分かりだと思います。自分の幸せは自分の心が決めている。という事を改めて再確認し、どのような事が起こっても、感謝の心で生きることを決める。ということをしたほうが得策かもしれません。怒りが湧いてうまくアンガーマネジメントを行う事ができるようになることも大切ですが、それでは、一生火の用心をせずに火消しをし続ける人生になってしまいます。
怒っていても不毛なのです。とはいえ、人間は自分で決めた幸せの方向に向き続ける事が、実は一番難しいのかもしれません。たとえ目の前がどんな状況でも、その状況に感謝し、柔和な心でい続けることが私たちの人生の壮大なテーマなのだとすら感じます。
ですから皆さん、常に自分の心はマシュマロのような柔らかく丸い心だと信じましょう。そうすれば、落ちても、ぶつかっても、傷つかない、ふわふわな気持ちでい続けることができます。