Cobe.fm 本好きコンサル2人の読後感想戦

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By Miki Watanuki/Nozomi TanakaArtsBooks
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Cobe.fm 本好きコンサル2人の読後感想戦 episodes

  • 島崎藤村『破戒』 #2

    今回は、主人公・丑松の「告白できなさ」をどう読むかから始まり、物語の背景にある差別の空気や、土地に根ざした文学の面白さへと話が広がっていきます。丑松の心理を「早く言えばいいのに」と感じながら読むみきと、長野・飯山の感覚を強く引き寄せながら、作品の中にいる“嫌な人物たち”の生々しさに反応するのぞみ。二人の読みのズレを通して、『破戒』が単なる告白の物語ではなく、土地のニュアンスや共同体の権力構造まで含んだ小説であることが見えてきます。大阪ローカル小説や東京の文学の不在にも話が及び、「その土地を知っているからこそ読める小説」とは何かを考える回です。

    23 min
  • 島崎藤村『破戒』 #1

    島崎藤村『破戒』を読むpart1。今回は、作品の舞台・飯山がまさに地元だというのぞみと、物語をより外側から読んだみきが、主人公・丑松の「告白」に至るまでの重さを入り口に語り合います。部落差別を主題にしたこの小説を、単なる古典としてではなく、「自分ではどうしようもない出自を背負うこと」「空気として存在する戒め」「田舎のコミュニティに漂う見えない圧力」といった感覚へ引き寄せながら、それぞれの実感で読み直していく回です。地元だからこそ見えてしまう作品の生々しさと、現代の感覚から読む切なさが交差して、『破戒』がただの告白の物語ではなく、社会の空気そのものを映した小説であることが浮かび上がります。

    24 min
  • われらみな食人種:レヴィ=ストロース随想集 #3

    part3では、タイトルにもつながる「カニバル」を手がかりに、食と性、芸術、そして家族制度の話へと広がっていきます。食べることと成功することが同じ語源で結びついているという話や、女性の食事シーンが“エロすぎる”とされた古典の感覚。さらに、木彫りの彫像に口づけする男の神話を通して、食と性の「過剰」が文化の中でどう重ねられてきたのかを考えます。

    また、芸術家は社会の上位に置かれながら、失敗すれば死を強いられることもあるという極端な例も紹介されます。芸術は異界とつながる特権であり、同時に命がけの営みでもあるという感覚が浮かび上がります。

    後半では、「3人の母と2人の父」を持ちうる家族制度の話へ。補助生殖や代理出産、女性同士の婚姻、複数婚などの事例から、私たちが当然だと思っている家族の形が、実は数ある可能性の一つにすぎないことが見えてきます。

    奇妙に見える慣習も、それ固有の文脈を踏まえなければ理解できない。結果だけでなく、その背後にある神話や構造を読むことの大切さを、レヴィ=ストロースは静かに示します。三回にわたる読書の締めくくりは、「文脈を見る」という視点を改めて確かめる回になりました。


    21 min
  • われらみな食人種:レヴィ=ストロース随想集 #2

    part2は、「天ぷらは“揚げる”のか“沈める”のか?」という言葉の違いからスタート。

    そこから、日本では自我は“原因”ではなく“結果”として立ち上がる、というレヴィ=ストロースの指摘へ。場や環境が先にあり、そこから主体が形づくられる──その視点を手がかりに、日本の創作文化や集団性についても二人で仮説を広げます。

    さらに印象的なのは、ボロロ族の生=硬さ/死=柔らかさ という世界観。ピアスや装飾を「生を守る装置」として読むくだりは、この回のハイライト。

    後半は、なぜ金だけは太古から価値が揺らがないのか、という話題へ。理屈を超えて惹かれてしまうものの正体をめぐり、思わぬ“スピ”の話にも。

    言葉のズレから、自己・文化・身体・価値へ。レヴィ=ストロース的な視点が、じわじわ日常に入り込んでくる回です。


    26 min
  • われらみな食人種:レヴィ=ストロース随想集 #1

    サンタクロースの火炙り事件から、農耕・文字・進歩の“当たり前”が揺さぶられていく。

    今回の課題本は、レヴィ=ストロース晩年の論考集『我ら皆カニバル』。新聞寄稿を中心にした文章だけに、専門用語で押し切るのではなく、身近な出来事を入口にして社会の深層構造へ潜っていくのが面白さです。

    part1ではまず冒頭の「サンタ人形火炙り事件」を手がかりに、贈与やイニシエーション、子ども/大人、生者/死者といった対立のフレームが立ち上がる瞬間を二人で追体験。さらに「農耕は進歩だったのか?」「原因だと思っていたものが、実は帰結かもしれない」といった視点から、人類史を“必然の一本道”ではなく“無数の可能性の一断面”として捉え直していきます。

    「しょうもない炎上を、構造で説明できる人になりたい」という憧れと、「ポスト○○って次どうするの?」という脱線ツッコミが交差しながら、現代社会の見え方が少し変わる回です。


    27 min
  • 水を差す仕組みとサラリーマン:山本七平『空気の研究』#3

    空気が「なぜ壊れないのか」「どう壊せるのか」を、具体例と仕事感覚で一気に掘り下げる回。のぞみは高校野球経験者として、真夏の甲子園が暑さの限界を超えてもなお維持されるニュースを取り上げ、「誰も説明できないのに決まってしまう」古空気の手触りを久々に見たと語る。そこから本書後半の核心である「空気と水」へ。水差しは個人の勇気に回収されがちだが、現実に空気を動かすには“集団で水を差す”仕組みが要る——ただし、その運営には「水を差す空気」も同時に設計しなければならない、という難しさに踏み込む。

    さらに終盤では、難解な一節「合理性を追求させる原動力は、非合理的な力」を咀嚼し、非合理をゼロにも絶対化にもできないというバランス感覚へ着地。のぞみはその“逃がし先”としてスポーツや演劇のような虚構の必要性を補助線として提示する。ラストは「会社員であるだけで人間として十分だと思えてしまう」空気の正体へ議論が移り、会社員という概念、普通(デフォルト)、硬いピラミッド構造が“水を差させない空気”を強化しているのではないか、という問いを残して締める。次回課題本はレヴィ=ストロース『われわれみな食人種』。


    35 min
  • 臨在感的把握のこと:山本七平『空気の研究』#2

    山本七平『空気の研究』回のpart2は、「いき」と「空気」の違いを、ふたりの“ものの見方”の差から掘り下げていく。みきは、人を理解するとき「心の中(何を考えているか)」に意識が寄りやすいので、「いき」のほうが手がかりにしやすいと自己分析する。一方でのぞみは、人そのものの内面というより、相手がまとっている“周辺情報”(会社での位置づけ、場の配置、振る舞いの輪郭)を読むほうが馴染む感覚があり、「空気」は合意形成を経ずに状況として立ち上がり、場全体を支配するものとして“ただ分かってしまう”と輪郭をつけていく。鍵になるのが、空気の成立条件としての「臨在感的把握」。幽霊、森、古いものへの畏れ、無意味な会議を終わらせたい空気まで、言語化しにくい“ある感じ”を例で押し広げる。さらに、ハベルの寓話を引用したダボス会議のスピーチを足がかりに「空気は日本固有なのか?」へ論点が越境し、同調圧力としての空気と、アニミズム的な感受性としての空気が同じ線上にあるのかを探っていく。終盤は、一神教と多神教の差、進化論と現人神が同居するエピソードを通じて、矛盾を矛盾のまま運用してしまう日本的な思考の切り替えに触れ、のぞみの仕事観(空気で決まる意思決定を“整える”)にも接続していく回。


    30 min
  • 確実はそこにあるもの:山本七平『空気の研究』#1

    本好きのふたり・みき/のぞみが、山本七平『空気の研究』を読み解く回のpart1。

    水曜休みの効用、嬉野温泉の湯豆腐セットで始まった長い昼、ガンダム映画を“2作目から”観てしまった話、中型免許(MT)教習の筋肉痛まで、近況トークを経て本編へ入っていきます。

    後半では『空気の研究』へ。「空気はKY世代の新しい現象だと思っていたけれど、1970年代にすでに言語化されていた」という驚き、田舎で“空気”に押されてきた幼少期の体験、そして「最近は言葉としては使わないのに、空気は確実にある」という実感が共有されます。さらに、のぞみは仕事の経験を通じて「相手がどう決めそうか」「どんな空気を作ると流れが動くか」を読む感覚が育ってきたと振り返り、みきは『いきの構造』との違い(空気のほうが相対的に捉えやすい)から手触りを整理。次回の議論につながる助走がつく回です。


    36 min
  • 九鬼周造『いきの構造』#3

    最終回は、「渋い」と「いき」の差分を、さらに日常語へ降ろしていく回。女性の“渋さ”は成立するのか、樹木希林の「土渋」や年齢・経験量の議論を経て、渋みは“少量で後から効く”山椒のようなものだ、という比喩に辿り着きます。

    一方で話題は、失敗談の扱いへ。にじみ出る深みは渋いが、ひけらかす失敗は野暮。NewsPicks的「失敗語りビジネス」を俎上に、想像の余地を残す振る舞いの難しさを検討します。

    さらに『いきの構造』後半の「優しさ/哀れみ」論を手がかりに、助言は優しさとして成立するのか、それとも暴力(哀れみ)になるのかを自己点検。「成立しない可能性があっても言いたいか」という判断基準が提示され、粋の核心にある“諦め(軽やかさ)”とも接続します。

    締めは、令和でも強度を保つ言葉「垢抜け」。湯上がりの“抜け”や薄化粧の粋、そして「垢」の解像度のズレ(都会の垢抜け/農村の“物理垢”)まで掘り下げ、粋の感受性が現代の身体感覚にどう残っているかを照らします。次回課題本は山本七平『空気の研究』に決定。「日本社会の研究」2冊連続へ。


    28 min
  • 九鬼周造『いきの構造』#2

    『いきの構造』を読み進めながら、議論は「いきな人とは誰か」から「いきな仕事とは何か」へ。白い部屋に“バン!”と光を当てるような「わかりやすさ」の誘惑と、そこから一歩引いた“野暮じゃない”振る舞いの難しさを、みき・のぞみが自分たちの働き方に重ねていきます。

    後半の主役は「手土産」。高すぎず安すぎず、甘すぎず渋すぎず、相手に“返してね”を匂わせない絶妙なバランスに、粋の構造が露わになる。さらに「ビジュイイじゃん」という現代の褒め言葉を俎上に、ルッキズムを回避しながら肯定を差し出す“言葉遣いの粋”も検討。

    そして九鬼の「甘み/渋み」軸に苦戦するのぞみは、「渋いおっさんになりたい」という欲望を自覚し、渋みは表層ではなく経験から醸成されるのだと痛感する。粋は“避ける”だけでは到達できない。その「あいだ」に立ち上がる倫理と美意識を、雑談のようでいて妙に実務的な手触りで掘り下げるpart2。


    28 min

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コンサル×アートでフリーランスっぽく働くみき(左)と、コンサル・リサーチ会社を経営するのぞみ(右)の二人で、1冊の本を実際に読んで感じたこと、思ったことをふんわり楽しく話します。ビジネス書から戯曲・小説、SF、ノンフィクションまで幅広く取り上げています。読書が好きな人、本が好きな人、学びが好きな人、ぜひお耳に合いましたら。

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