「須磨帰り」という言葉があるのをご存じでしょうか?長い長い源氏物語を須磨まで読んで途中でリタイアすることを示す俗語です。
いやはや、その気持ち、今ならわかります!だって、須磨のその冒頭からネチネチ・グズグズうるさいんだもん。「はよ行け!」と思う気持ちを抑えつつ、ページをめくってみれば、源氏ときたらあっちにもこっちにも別れの挨拶をし続ける。源氏に関わる大切な人たちのお名前がずらりと並ぶ帖なのでございます。
そういう目線で読んでみれば、それぞれの女君たちの個性や立場、気持ちの違いがよくわかるもの。須磨からタダでは帰しませんよ。今宵もいつものつぼねにお集まりください。
<マラソンの心得>
1)どの現代語訳、原文を読んでいただいてもOKです。
2)途中参戦、途中離脱、出戻り、つまみ食い、OKです。
3)最後までご自分のペースでのんびり完走を目指しましょう!
※自由気ままな古典愛トークですので、学術的・歴史的に正しいものとは限りません。おぎたまの妄想は、決してテストに書かないようご注意ください。※内容は諸説あります。※源氏物語を新鮮な気持ちで味わいたい方は、先に書籍を読むことを強くお勧めします。
<おぎ流あらすじ~須磨~>
光源氏26~27歳ごろのお話。朧月夜との密会が右大臣バレして、仕事もクビになり、流罪になるよりはと自分から須磨に引っ込んだというお話。
<時のしおり>
(00:00) 須磨に到着しましたよ〜!
(04:22) なぜ須磨にいく羽目に?
(07:08) 崖っぷちの源氏くん
(10:06) 延々と続く別れの挨拶
(13:18) 紫の上との時間を大事にして!
(19:01) 対照的!藤壷と源氏
(24:09) “須磨に行くこと”の意味
(30:55) 別れシーンが長い理由
(34:33) 六条様の素敵すぎるお手紙
(37:42) 疑惑のシーンを再び検証
(43:46) やっぱり六条はいい女
(47:22) 源氏くんも成長してます、多分
(51:00) 危なすぎ!朧月夜ちゃんへの手紙
(58:45) あの子が再び登場
(01:01:16) おぎポイント「紫の上のアンサーソング」
(01:09:36) 投票結果&コメントご紹介
<今回ご紹介した和歌>
●藤壷より源氏へ:見しはなくあるは悲しき世の果てを背きし甲斐もなくなくぞ経る
(おぎ訳:後ろ盾だった桐壺帝も今は亡く、今の後ろ盾である源氏は悲しい憂き目に遭っている。出家した甲斐もなく涙が出るばかり)
●源氏より藤壷へ:別れにし悲しきことは尽きにせしをまたぞこの世の憂さは勝れり
(おぎ訳:桐壺帝が崩御した時に悲しさは尽きたものだと思っていたけど、悲しいことはまだあるものなのですね)
●源氏より朧月夜へ※須磨出発前:会う瀬なき涙の河に沈みしや流るる澪の始めなりけむ
(おぎ訳:会う方法がなくて涙が出ます。この気持ちこそが全ての始まりでした)
●源氏より朧月夜へ※須磨到着後:懲りず間の裏のみるめのゆかしきを塩焼く海女やいかが思はん
(おぎ訳:懲りもせずにあなたに会いたい。あなたも泣いてるでしょ?どう?)
●源氏より紫の上へ※須磨到着後:浦人の潮酌む袖に比べ見よ波路隔つる夜の衣を
(おぎ訳:須磨に流されたあなたよりも私の方があなたを想って泣いている。衣1枚よりも、ずっと遠いのだから)
●源氏より紫の上へ:あやなくも隔てけるかな夜を重ねさすがに馴れし夜の衣を
(おぎ訳:今までなんて無駄な時間を過ごしたんだ。衣一枚がとても遠かったよ)
※「葵」帖で源氏が若紫に詠んだ後朝の文。紫の上は「須磨」帖でこの歌に対するアンサーソングを詠んだのです。
<おぎ注>
藤原伊周(ふじわらのこれちか)
:定子様の兄君で、花山院に矢を射かけた罪で流罪。本来ならば大宰府へ行くべきところ、播磨で留め置かれたそうです。この辺り、『大鏡』や『栄花物語』に詳しいです。
藤原隆家(ふじわらのたかいえ)
:定子様の弟君で、花山院に矢を放った張本人。出雲に流された後に許されて帰京。その後は結構仕事を頑張った。
須磨
:現在の兵庫県のあたり。都から1日かかるほど遠い場所で、当時は寒村で人もまばらで寂しい場所だった。その昔、在原行平(業平の異母兄)が流されたところで、都の人にとっては物悲しさを誘う地名であった。
<出典>
「源氏物語」岩波書店 新日本古典文学大系(2)
https://www.iwanami.co.jp/book/b259627.html
「全訳 源氏物語」與謝野晶子/訳 角川文庫
https://www.kadokawa.co.jp/product/200801000436/
「源氏物語 2」角田光代/訳 河出文庫
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309420127/
「源氏物語 二」円地文子/訳 新潮文庫
「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 源氏物語」紫式部 角川書店/編 角川ソフィア文庫
https://www.kadokawa.co.jp/product/200105000075/
「わたしの源氏物語」瀬戸内寂聴 集英社文庫
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-746337-8
「すぐわかる 源氏物語の絵画」東京美術
https://www.tokyo-bijutsu.co.jp/np/isbn/9784808708276/
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