#96 心情を吐露するような情景を描く-ベルリオーズ『イタリアのハロルド』
ベルリオーズ作曲『イタリアのハロルド』の最終回は第1楽章を紹介します。 冒頭の荒涼としたところは、ベルリオーズの心の中に隙間風が吹くような情景を感じさせます。のちの『ファウストの劫罰』やその前に書いた『ファウストの八景』にも少し共通しています。また後半は、リズムの使い方など『幻想交響曲』に近いところもあります。 ビオラのソロはハロルドの語り部であり、そのハロルドの姿というのはベルリオーズが自分を重ねているような感じがしなくもありません。そうだとすれば、ヴィオラのソロの箇所があまり多くないのは、雄弁ではあるけれども多弁ではなかったベルリオーズの性格を表しているのかもしれません。 ベルリオーズは文学的思考が強く、劇的交響曲『ロメオとジュリエット』という曲を作り、オペラでもカンタータでもない形でいかに劇的な効果を生み出すかに腐心していたようです。今の時代からみるとなかなか斬新なことをしていたのではないでしょうか。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】エクトール・ベルリオーズ作曲 交響曲『イタリアのハロルド』 第1楽章 山におけるハロルド、憂愁、幸福と歓喜の場面 レナード・スラットキン/指揮 リズ・ベルトー/ヴィオラ フランス国立リヨン管弦楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 ピアノ/江澤隆行 【提供】笹川日仏財団