フレンチ・クラシック・カフェ

By 笹川日仏財団

What's フレンチ・クラシック・カフェ about?

笹川日仏財団がお届けするプログラム「フレンチ・クラシック・カフェ」。フランス音楽の素敵なところをちょっと変わった切り口でご紹介します。ご案内役は軽妙なトークで定評のある指揮者の中田昌樹さんです。

《中田昌樹プロフィール》
1951年札幌生まれ。道立札幌西高校卒業。国立音楽大学器楽学科卒業後、フランスに留学。パリ・エコール・ノルマル音楽院指揮科を一等賞首席にて卒業。アメリカ・タングルウッドで小澤征爾、バーンスタインの教えを受ける。
パリ・コンセール・パドゥルー管弦楽団を指揮してヨーロッパデュー、その後、フランス国立リヨン管弦楽団で音楽監督セルジュ・ボドのアシスタントを務める。ベルリン放送交響楽団、ブルガリア国立ソフィア室内管弦楽団などヨーロッパ各地で指揮。
帰国後、新国立劇場開場当初からオペラ制作に携わり、オペラ研修所特任講師も務める。
吹奏楽の分野では、吹奏楽コンクール全国大会/支部大会/県大会の審査、各地の指揮講習会の講師を長年に渡って担当。
札幌大学文化学部 客員教授、新国立劇場オペラ制作部 専門員、新国立劇場オペラ研修所特任講師 、Institut Francais du Kyushu (九州日仏会館) 『フランス音楽の陰影』レクチャー講師 等を歴任。

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LAST EPISODE

#96 心情を吐露するような情景を描く-ベルリオーズ『...

06.02.2023

ベルリオーズ作曲『イタリアのハロルド』の最終回は第1楽章を紹介します。 冒頭の荒涼としたところは、ベルリオーズの心の中に隙間風が吹くような情景を感じさせます。のちの『ファウストの劫罰』やその前に書いた『ファウストの八景』にも少し共通しています。また後半は、リズムの使い方など『幻想交響曲』に近いところもあります。 ビオラのソロはハロルドの語り部であり、そのハロルドの姿というのはベルリオーズが自分を重ねているような感じがしなくもありません。そうだとすれば、ヴィオラのソロの箇所があまり多くないのは、雄弁ではあるけれども多弁ではなかったベルリオーズの性格を表しているのかもしれません。 ベルリオーズは文学的思考が強く、劇的交響曲『ロメオとジュリエット』という曲を作り、オペラでもカンタータでもない形でいかに劇的な効果を生み出すかに腐心していたようです。今の時代からみるとなかなか斬新なことをしていたのではないでしょうか。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】エクトール・ベルリオーズ作曲 交響曲『イタリアのハロルド』 第1楽章 山におけるハロルド、憂愁、幸福と歓喜の場面 レナード・スラットキン/指揮 リズ・ベルトー/ヴィオラ フランス国立リヨン管弦楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 ピアノ/江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

フレンチ・クラシック・カフェ episodes:

06.02.2023

#96 心情を吐露するような情景を描く-ベルリオーズ『イタリアのハロルド』

ベルリオーズ作曲『イタリアのハロルド』の最終回は第1楽章を紹介します。 冒頭の荒涼としたところは、ベルリオーズの心の中に隙間風が吹くような情景を感じさせます。のちの『ファウストの劫罰』やその前に書いた『ファウストの八景』にも少し共通しています。また後半は、リズムの使い方など『幻想交響曲』に近いところもあります。 ビオラのソロはハロルドの語り部であり、そのハロルドの姿というのはベルリオーズが自分を重ねているような感じがしなくもありません。そうだとすれば、ヴィオラのソロの箇所があまり多くないのは、雄弁ではあるけれども多弁ではなかったベルリオーズの性格を表しているのかもしれません。 ベルリオーズは文学的思考が強く、劇的交響曲『ロメオとジュリエット』という曲を作り、オペラでもカンタータでもない形でいかに劇的な効果を生み出すかに腐心していたようです。今の時代からみるとなかなか斬新なことをしていたのではないでしょうか。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】エクトール・ベルリオーズ作曲 交響曲『イタリアのハロルド』 第1楽章 山におけるハロルド、憂愁、幸福と歓喜の場面 レナード・スラットキン/指揮 リズ・ベルトー/ヴィオラ フランス国立リヨン管弦楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 ピアノ/江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

05.26.2023

#95 ヴィオラの独白を堪能する-ベルリオーズ『イタリアのハロルド』

ベルリオーズ『イタリアのハロルド』第3楽章をお聴きいただきます。 古典的な形式では、交響曲の3楽章はスケルツォといって舞曲が入ることが多いのですが、この曲はその形式を踏襲しています。ここでは、農民が収穫が終わってみんなでダンスをしているような音楽が出てきます。ベルリオーズの生家があるラ・コート=サン=タンドレは、リヨンとグルノーブルの間にある山間部の村で、ベルリオーズはパリに行ってからも思い出したりしていたのではないでしょうか。その故郷の村祭りをハロルドが遠くからみていて、ヴィオラの雄弁ともいえるような幅の広い音色で語りかけているかのようです。 そのラ・コート=サン=タンドレで指揮者のセルジュ・ボドが国立リヨン管弦楽団とともにフェスティバル・ベルリオーズを1979年に始めました。何年もかけてベルリオーズ作品を全部やるという壮大な計画で、彼が引退した後はブリュノ・メッシーナという音楽学者が後を継ぎ、今でもフェスティバルは続いています。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】エクトール・ベルリオーズ作曲 交響曲『イタリアのハロルド』 第3楽章 アブルッチの山人が、その愛人に寄せるセレナード レナード・スラットキン/指揮 リズ・ベルトー/ヴィオラ フランス国立リヨン管弦楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 ピアノ/江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

04.14.2023

#89 多様な音の乱舞-プーランク『ニ台のピアノのための協奏曲』

名作のあと書かれた曲は、その威光に隠れてしまって、音楽的にはより充実している筈であるのに、知名度が上がらない事もままあります。チャイコフスキーのやラフマニノフの協奏曲などもその例でしょう。 プーランクが『二台のピアノのための協奏曲』の約20年後、ボストン交響楽団から委嘱された作曲された、もう一曲の『ピアノ協奏曲』(通常の一台のための!)があります。 1950年、プーランク自身のピアノ、シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団で初演が行なわれた素敵な曲です。しかし彼自身は、「弾いているうちに、聴衆の間に興味が停滞して行くのに私は気づいた」という感想を漏らしたと言われます。しかし一方で「ロマン派の協奏曲のような仰々しさを帯びていないし、また主題が伝統的な方法で展開されることもない。旋律自体が協奏曲であり、それがこの曲の特質の一つなのである」と好意的な批評もありました。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】フランシス・プーランク作曲『2台のピアノのための協奏曲』第三楽章 ジャン=リュック・タンゴー/指揮 アイルランド国立交響楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 ピアノ/江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

03.10.2023

#84 パリの爛熟した文化の中で-プーランク『牝鹿』

フランシス・プーランク。1899年、大統領府エリゼ宮近くに住む、代々続く大企業の経営者の家に生まれ、三男にもかかわらず兄ふたりが早世したため家業を継ぐ使命を負わされ、音楽の勉学に進むことを断念せざるを得ませんでした。 しかし、第一次世界大戦以後の爛熟した文化の中心地パリで、音楽家のみならず、ジャン・コクトーなどの文化人、モディリアーニ、ピカソなどの画家、アポリネールをはじめとする多くの詩人たちが活躍する百花繚乱の中、類をな見ない軽妙洒脱、天真爛漫な作風を身につけて行きました。 若きプーランクがかの有名なディアギレフからバレエ『牝鹿』の作曲依頼を受けた事を知ったジャン・コクトーは、協力を申し出ますがそれを敢えて断り、プーランクは台本ナシで作曲を始めます。そして衣装と舞台美術を、淡いパステルカラーの優しい画風のマリー・ローランサンに依頼して素敵な舞台が仕上がります。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】フランシス・プーランク作曲『牝鹿』より第1曲 ロンドー ジャン=リュック・タンゴー/指揮 アイルランド国立交響楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 ピアノ/江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

02.10.2023

#80 いつにない激しさは情熱か?-フランク『ヴァイオリン・ソナタ』

セザール・フランクがいかに無欲、善良、つまり聖者のような人物だったかという人間性については数多くの人の証言があリます。 彼を間近で観察し続けた作曲家のヴァンサン・ダンディは「彼の作曲の動機は、栄光でもなく、金でもなく、安易な成功でもなかった。彼の目的は、芸術を手がかりに自らの思考と感情を表現しようとすることだった。そして、何よりも真の意味で彼は謙虚な人だった」と語っています。 かのドビュッシーは、パリ音楽院在籍中、一時期フランクの和声クラスに属したものの、正統でアカデミックなフランクの教えについて行けず、教室から逃げ出し、別な部屋で自分の好きなハーモニーを引き続けていた事があった時も「好きなだけ好きな和音を弾くといい」と許容したそうな...。 しかし、ドビュッシーがフランクについては深い敬意を持ち続け、彼が嫌ったワーグナーに唯一対抗しうる「フランス音楽」の作曲家という評価もしていた、とも‥.。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】セザール・フランク作曲『ヴァイオリン・ソナタ』第二楽章 西崎崇子/ヴァイオリン イェネ・ヤンドー/ピアノ イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

12.23.2022

#73 華麗なる転調の世界-フランク『交響曲ニ短調』

セザール・フランク(セザール=オーギュスト=ジャン=ギヨーム=ユベール・フランク(César-Auguste-Jean-Guillaume-Hubert Franck)は、現在のベルギー王国リエージュ(当時のネーデルラント連合王国)、時代によって国境線が目まぐるしく塗り変わり、多様な言語が入り交じる地域で、ドイツ系の家系に生まれました。 フランスに赴いてパリ音楽院への入学を志しますが、外国人と言う理由で音楽院長のケルビーニに一度は入学を拒否されるものの、前年チェロで例外的に入学を許されたプロイセン王国(現ドイツ)から来たオッフェンバッハの例を引き合いに出し、特別に入学を許可された経緯があります。後に、パリ音楽院の教授に任命された折は、フランス国籍を取得しています。 このような自らのアイデンティティーの多様さが、フランクの音楽に影響しているのは否めないのかもしれません...。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】セザール・フランク作曲『交響曲 ニ短調』第二楽章 ギュンター・ノイホルト/指揮、ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

12.02.2022

#70 滑らかさと正確さと-「パントマイム」のフルートソロ

モーリス・ラヴェルの最後の棲家があるモンフォール=ラモリー(Montfort-l'Amaury)は、パリの西、ヴェルサイユ宮殿の広大な庭園の脇を走り抜けて間もなくの、小さな村です。 その家は傾斜地にある為、町や周りの森を見渡せる居間の階から、小さな螺旋階段を降りた庭に面したところに寝室があります。 ラヴェルは、夜眠れず森を散歩したりする事も多かったとの事。昼間眠るためか、その部屋は地中海の薄明るい夜のような淡い黄色に塗られていて、壁の四隅にはコリント式の柱頭が描かれています。窓の雨戸(volée)には星と三日月がくり抜かれ、そこから光が漏れて、夜空に輝くような演出。これらは総てラヴェル自身が自らの手で作業をしたのだと。 この不思議な色彩感の空間の中、ラヴェルは天蓋の付いた小さなベッドの上で、若いころ作曲した『ダフニスとクロエ』の舞台になったギリシャへ憧憬を思い出すのでしょうか。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】モーリス・ラヴェル作曲『ダフニスとクロエ』第3場「パントマイム」 レナード・スラットキン/指揮、フランス国立リヨン管弦楽団/演奏 インタビュー/トマ・プレヴォ 元フランス国立放送管弦楽団 フルート主席奏者 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

11.11.2022

#67 バスクのヴィルトゥオーソに捧げられたサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第三番 第二楽章

サン=サーンスと親交が深かったサラサーテは、現在スペイン領ナバラ州で生まれたバスク人。フルネームはバスク風に父方/母方の両方の姓を名乗るパブロ・マルティン・メリトン・デ・サラサーテ・イ・ナバスクエス(Pablo Martín Melitón de Sarasate y Navascuéz)。 マドリードの音楽院で学び、10才のときにスペイン女王イサベル2世の前で演奏を披露し、続いてパリ音楽院に入学、13才で卒業する神童振りを発揮します。 フランスを中心に活躍するも、独特の文化/言語を持つ故郷のバスク地方の音楽への関心も強く、ソルツィーコ(zortziko) という5/8拍子(1+2+2)の伝統的な舞曲を一般に分かり易いように3/4拍子の記譜に直し、リズムを微妙に揺らして、本来の5/8拍子のように弾いて見せたそうです。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】カミーユ・サン=サーンス作曲ヴァイオリン協奏曲第三番 ロ短調 第二楽章 パトリック・ガロワ/指揮 ファニー・クラマジラン/ヴァイオリン シンフォニア・フィンランディア・ユヴァスキュラ/演奏 インタビュー 破魔澄子 元フランス国立管弦楽団 ヴァイオリニスト イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

10.14.2022

#63 自由な発想での管弦楽曲-ドビュッシー『海』

三部からなる管弦楽曲で、交響詩『海』と呼ばれることもありましたが、原題は La Mer, trois esquisses symphoniques pour orchestre(管弦楽のための3つの交響的素描)とあり、フランツ・リストが提唱した自由な発想における管弦楽曲、という枠を超えた、より具体的な表現になり、各楽章ごとに表題も添えられています。 しかし、その表題も、作品がほぼ完成し、出版間際になって変更しました。 例えば第一楽章「サンギネール諸島付近の美しい海(Mer belle aux Îles Sanguinaires)」(作曲のきっかけになったと思われるカミュ・モクレール小説の題)から「海上の夜明けから真昼まで(De l'aube à midi sur la mer)」のように。 それは、自身も語っているように、『総て頭の中にある海の記憶』で、ブルゴーニュ地方の山あいで作曲を始め、のちに訪れるジャージー島やノルマンディ地方の海を目の前にして、何某か変化があったからなのでしょうか‥。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】クロード・ドビュッシー作曲『海』第2曲「波の戯れ」 準・メルクル/指揮、フランス国立リヨン管弦楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団

07.01.2022

#48 ベルリオーズが描く幻想という名の宇宙

フランス南部、リヨン近くの小さな町、ラ・コート=サンタンドレ(La Côte-Saint-André)の裕福な医者の家に生まれたエクトール・ベルリオーズ。でも町にはピアノを持つ家もなく、ベルリオーズ幼少時に与えられた楽器は縦笛とギターだけでした。かくして、ピアノを全く弾かない/弾けない作曲家が誕生する事になります。 しかしながら、それによって、モーツァルトやベートーヴェンのように、ピアノという平板的な響きからは想像し得ない、立体的な宇宙観の音楽が、彼の頭の中だけで鳴り響くことになります。《葬送と勝利の大交響曲》《死者の為の大ミサ曲》など、それを現実の音として形にするには、破天荒と思われるような数百人にも及ぶオーケストラや合唱団、四方に配置された金管バンダというサラウンド方式さえ編み出します。 その発想は、後にヴェルディ《レクイエム》をはじめ、多くの作曲家の指針となったことは間違いありません。 【出演】中田昌樹(指揮者) 【演奏】エクトール・ベルリオーズ作曲『幻想交響曲』第5楽章 レナード・スラットキン/指揮、フランス国立リヨン管弦楽団/演奏 イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行 【提供】笹川日仏財団