ビジネス達人の教え

クローズせずにセールスがうまくいく方法


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セールスの現場では、「案件をクローズする」という言葉がごく自然に使われています。しかし、その言葉の前提を少し見直すだけで、商談の進め方も、お客様との関係性も、大きく変わることがあります。

デール・カーネギーの原則に基づく、世界的なセールス・リーダーシップ研修の考え方では、「クローズ」ではなく「コミットメント」という捉え方が有効です。セールスを一方的に契約を締める行為ではなく、双方が未来に向けて約束を交わすプロセスとして捉えることで、信頼が深まり、長く続くビジネスパートナーシップにつながります。

なぜ「クローズ」より「コミットメント」が大切なのでしょうか?

「案件をクローズする」という表現は一般的ですが、主語がセールスパーソン側に置かれやすい言葉です。つまり、契約プロセスを終えること自体が目的化しやすく、セールスパーソンの都合や成果に視点が寄りやすくなります。

一方で「コミットメント」という言葉には、セールスパーソンとクライアントの双方が主語になる感覚があります。お互いが納得し、一緒に仕事を進め、成果をつくっていくことに合意するという意味合いが含まれます。セールス活動を、自分たち目線で契約を取り切るための活動ではなく、お互いが幸せになるための約束を交わす活動に変えていくのです。

これは、日本企業の稟議文化や、外資系企業を含む法人営業の決裁プロセスにおいて特に重要です。東京の法人営業の現場でも、商品スペックだけで判断されることは少なく、「この人となら一緒に進められるか」「導入後も安心できるか」という信頼の要素が強く問われています。

ミニサマリー 「クローズ」から「コミットメント」へ発想を変えることで、セールスは売り手主導の活動ではなく、信頼に基づく共同意思決定へと変わります。

コミットメントを得る前に、セールスパーソンはどのような姿勢で臨むべきでしょうか?

セールスパーソンが行うべきことは、「買ってください」「この商品は良いですよ」「おすすめです」と一方的に伝えることではありません。クライアントが本当に欲しいものを共につくり、自分たちがどのように役に立てるのかを明確に伝え、双方向のパートナーシップとしてのコミットメントを得ることです。

そのためには、良い質問が欠かせません。お客様の主要な関心事を把握し、何に悩み、何を実現したいのかを理解し、さらに購入に至る個人的な動機まで掘り下げていきます。この「個人的な購買動機」を理解していることが、他のセールスパーソンとの差別化になります。

デール・カーネギーの原則でも、人は自分のことを理解し、尊重し、関心を持ってくれる相手に心を開くと考えます。お客様は情報だけで意思決定するのではありません。その商品やサービスが、自分の目標、安心、立場、未来像にどうつながるかを実感したときに、前へ進もうとします。

ミニサマリー コミットメントを得る前に重要なのは、表面的なニーズだけでなく、お客様の深い関心や個人的な購買動機まで理解することです。

なぜ説明がうまい人や話し上手な人が、必ずしも一番売れるわけではないのでしょうか?

スペックや機能の説明が完璧なセールスパーソンが、必ずしも最も売れるとは限りません。話し方が上手で、よどみなくプレゼンできる人が、常にトップセールスになるわけでもありません。

なぜなら、商品説明や機能比較のような一方向の情報提供は、AIでもかなり担える時代になってきているからです。これからのセールスパーソンに求められる価値は、情報を伝えることそのものよりも、「この人なら信頼できる」と感じてもらえることにあります。

クライアントは、売ったら終わりではなく、その後も自分に何らかの価値や安心を届けてくれる人から買いたいのです。「この人は、今後も自分の仕事や人生に光を灯してくれる存在だ」と潜在的に感じてもらえるかどうかが重要です。複雑な意思決定や社内調整が伴う法人営業では、こうした信頼は情緒的な要素ではなく、成果に直結する営業資産です。

ミニサマリー 最も売れるセールスパーソンは、説明が上手な人ではなく、お客様に継続的な安心と信頼を感じさせる人です。

では、どのようにコミットメントへ導けばよいのでしょうか?

クライアントバイイングジャーニーの最後には、双方のコミットメントにつながる問いかけが必要です。ここで大切なのは、相手を追い込むことではなく、お客様にとって自然な次の一歩を取りやすくすることです。

ここからは、クライアントがコミットメントを受け入れやすくなる6つの問いかけの方法を見ていきましょう。

1. 直接要請するときは、どのように尋ねればよいのでしょうか?

やんわりと「次のステップに進んでも大丈夫でしょうか」とお聴きする方法です。私たちはお客様の問題解決のパートナーになろうとしているのですから、穏やかに、仲間意識を持って問いかけることが大切です。

ただし、クライアントがまだ迷っている段階でこれを口にすると、急に距離を感じさせてしまうことがあります。これまで築いてきた信頼を損なわないためにも、相手の状況や心理状態をしっかり把握したうえで問いかける必要があります。

ミニサマリー 直接要請は、信頼関係が十分に育っているときには有効ですが、タイミングを誤ると逆効果になります。

2. なぜ二者択一の提案は効果的なのでしょうか?

お客様に2つの選択肢を提示し、どちらを選んでも前進になる形にする方法です。たとえば、「お支払いは一括と分割のどちらが良いでしょうか」「納期は今月中と来月のどちらがよろしいでしょうか」とお聴きします。

この方法の良いところは、押しつけがましさを感じさせにくい点です。買うか買わないかという重い問いではなく、どう前に進むかという実務的な問いに変わるため、お客様の心理的負担が軽くなります。

ミニサマリー 二者択一の提案は、圧迫感を与えずに、お客様を自然に前進する選択へ導きやすい方法です。

3. なぜ小さい事柄の決断を仰ぐことが有効なのでしょうか?

クライアントに、いきなり大きな決断を求める必要はありません。購入に関連する小さな決断を一つずつ進めることで、自然に次の段階へ進むことができます。

たとえば、「領収書は必要ですか」「決済はクレジットにされますか」「ご請求書の宛名はどなた宛てがよろしいでしょうか」といった質問です。これによって、お客様に購入の意思があるのか、あるいはまだ何か障害が残っているのかを見極めることができます。

大切なのは、勝手に話を進めていると受け取られないことです。あくまでも、お客様の準備状況を丁寧に確認する姿勢が必要です。

ミニサマリー 小さな意思決定を確認することで、お客様の本当の準備状況や、残っている障害が見えやすくなります。

4. 次の段階を提示することには、どんな意味があるのでしょうか?

購入後に起きることを先に想像していただき、その先の意思決定を尋ねる方法です。たとえば、「ご購入後の最初のフォローアップ点検は、来期と再来期のどちらに設定するのがよろしいでしょうか」といった問いかけです。

この方法は、お客様の意識を「買うかどうか」だけでなく、「導入後にどう活用し、どんな価値を得るか」という未来へ向けます。未来の姿が具体的に見えるほど、人は意思決定しやすくなります。

ミニサマリー 購入後の次の段階を具体化することで、お客様は導入後の成功をイメージしやすくなり、意思決定が前向きになります。

5. 特典はどのように伝えるのが誠実なのでしょうか?

キャンペーン、期間限定割引、初回限定価格、料金改定前の案内など、期限付きでお客様が利益を得られる情報を伝える方法です。

たとえば、「来月から料金改定が予定されています」「今月中はキャンペーン価格が適用されます」といった情報は、本当に購入を検討しているクライアントにとって背中を押す材料になります。

ただし、目的は微妙なプレッシャーをかけることではありません。あくまでも、お客様の利益につながる情報を誠実に伝えることが重要です。その浮いたお金で何ができるかまで一緒に楽しく話せれば、お客様の中で未来のビジョンがより鮮明になります。

ミニサマリー 特典は、圧力としてではなく、お客様の利益になる情報として誠実に伝えることで効果を発揮します。

6. お客様が決めきれないときは、どうすればよいのでしょうか?

クライアントが最終決定を下せずに止まっているときは、購入する理由と購入しない理由を、あえて両方見える化する方法があります。紙やホワイトボードの中央に線を引き、右側に購入する理由、左側に購入しない理由を並べていきます。

このとき、ネガティブな点を出すのは良くないのではないかと思われるかもしれません。しかし、ポジティブな要素だけでなく、ネガティブな要素も隠さず共有することは、むしろ信頼につながります。お客様の立場でありのままを見つめ、判断材料をすべて出し切るセールスパーソンには、長期的に信頼が積み上がっていきます。

ミニサマリー 決めきれない場面では、メリットと懸念点を両方可視化することで、かえって信頼が高まり、納得感のある判断につながります。

コミットメント型セールスの理想的な着地点とは何でしょうか?

本来理想なのは、私たちが無理に導かなくても、クライアントの方から自然に「この先に進むにはどうしたらよいですか」「クレジットカードは使えますか」「請求は2回に分けられますか」「請求書は○○宛てでお願いします」と言ってくださる状態です。

それは、お客様が押し切られて決めたのではなく、信頼と納得の中で次の一歩を選んでいる証拠です。セールスがプレッシャーではなく、相手の成功を支える仕事へと変わっていきます。

セールス組織を率いる立場の方にとっても、この考え方は大きな意味があります。関係性の質が上がり、継続率が高まり、セールスパーソン自身の仕事の幸福度も高まるからです。売り込む仕事ではなく、共に未来をつくる仕事としてセールスを再定義できるのです。

ミニサマリー 理想のセールスは、無理にクローズすることではなく、お客様が自然に次の一歩を望む状態をつくることです。

重要なポイント

· 「クローズ」ではなく「コミットメント」と捉えることで、信頼と長期的な関係性を築きやすくなります。

· 優れたセールスパーソンは、商品説明だけでなく、お客様の個人的な購買動機や不安まで理解しています。

· コミットメントを得る問いかけは、契約を迫るものではなく、双方にとって自然で前向きな次の一歩を支えるものです。

デール・カーネギー・トレーニングは、1912年に米国で創設され、100年以上にわたり世界各国でリーダーシップ、セールス、プレゼンテーション、コミュニケーション、エグゼクティブ・コーチング、そしてDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の分野で個人および企業向けの研修を提供してきました。 東京オフィスは1963年に設立され、日本企業および外資系企業、さらには個人の方々の成長もサポートし続けています。単なるスキルトレーニングではなく、組織文化の変革やリーダーとしての成長を後押しすることで、ビジネスの成果につなげます。 私たちは毎週、日本語で役立つビジネス・コンテンツを発信しています。 ビジネスプロTV:隔週木曜日配信(動画+音声)―リーダーシップ、営業、プレゼンテーションなどを深掘り。 ビジネス達人の教え:隔週火曜日配信(音声のみ)―リーダーシップ、セールス、プレゼン力を鍛える実践知をお届け。 公式サイト:www.dale-carnegie.co.jp

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