フランス・ニースに構えたレストランでシェフをしている松嶋啓介さんをゲストにお招きし、歩きながら1時間、対談する。コロナ禍の世界を今、どう見ているのか。食はどこに向かうのか。
松嶋啓介/1977年、福岡生まれ。25歳でフランスのニースにレストランを開業し、外国人として最年少の28歳でミシュランの一つ星を8年連続で獲得し、フランス芸術文化勲章も最年少で受賞。ルーツ、オリジンが大事、が口癖。ガウディの設計図のない未完の最高傑作"サクラダファミリア"の主任彫刻家、外尾悦郎さんとも親交が深く、こう教えられたという。
「自分はどこからやってきたのか。それを確認する手段がアイデンティティーであり、ふるさとの味の記憶がそれを育む。ふるさとの味を記憶している人間はどこでも自立して生きていくことができる。負けても帰れる場所があるから、東京に出て、あるいは世界に出て挑戦できる。挑戦するためには勇気が必要で、その勇気はふるさとの愛情(家族や友人の支え)があるからこそ生まれる」。
松嶋さん自身、東京で武者修行をしていた時代、実家からダンボールで送られてくる明太子と博多ラーメンに支えられた。フランスに渡るとき、「ダメだったら戻ってくればいい」と、父親から快く背中を押された。そして、渡仏後の苦難の修業時代を支えてくれたのもまた、ふるさとの家族の言葉だったという。だから、勇気を出して勝負できたと当時を振り返る。
ふるさとの味が薄れつつある日本は、上京した地方出身者の根なし草化が進んでいる。世界に挑戦する若者も減っている。例えば、スペインのバルセロナでは、人々はふるさとの味を覚えているから、どんどん世界に出ていく。そして、ふるさとの味を世界に伝える。伝えられた人たちは、バルセロナに行ってみたくなる。だから観光客が多い。「食と観光はセットで、これが日本にはない」という。
ポケットマルシェ代表の高橋博之が、社会を“生きる“ゲストと対談する「高橋博之の歩くラジオ」。ゲストのみなさんは、農家・漁師、起業家、研究者、行政官、メディア、NPO、学生……と様々な立場から、自分たちの生活する場、自分たちの生きる社会をよりよくしていこうと、熱い想いや強い志をもって働きかけている方々です。
「高橋博之の歩くラジオ」では、あらゆる角度から社会についての議論が交わされ、心に響く言葉が生まれています。自分の“生きる“日々を振り返って、ちょっと立ち止まって考えたり、背中を押してもらったり。このラジオが、そんなきっかけになることを願っています。
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