アメリカ人作家が書いた「招き猫(Maneki Neko)」という小説がある※69。日本がまだ未来の香りをまとっていた、そしてまだスマホはなくネットもよちよち歩きだった1997年の短編SFだ。
"招き猫は巨大な助けあいネットワークである。人々はポケコンと呼ばれる架空の謎装置で招き猫ネットワークに接続する。
主人公の剛が喫茶店でモカ・カプチーノを注文しようとすると、ポケコンが鳴って同じものをもう一つ注文しろという。
もう一つテイクアウトして公園に向かい、ポケコンの合図に従って見知らぬ人にモカ・カプチーノを渡す。
すると相手は驚きつつ、それが好物だと語る。ポケコンの指揮に導かれて何かのついでに他人にお土産を届けたりもらったり、ささやかな親切をしあう"
"招き猫ネットワークに繫がった人びとは、それぞれが稼いだお金で空腹をすばやく楽に美味しく満たすだけではない。
助けたり助けられたり、人の経験に相乗りして新しい世界を教えてもらったり教えたり。見知らぬ他人同士が親切や贈与をしあうという見果てぬ夢がそこにある。
お金や国家と同じくらい大規模で、しかし自発的で匿名な親切網だ。 そんな招き猫をもっと太らせ繁殖させよう(図13)。招き猫たちだけで経済が動き、お金はもういらなくなった世界はないだろうか"
ここから私は思いました
1、誰かの痛みと解決できる人のマッチング
2、イノベーション創発システム
3、付加価値と感謝のループが回る
1、誰かの痛みと解決できる人のマッチング
成田祐輔さんのぶっ飛んだイノベーティブな思考に目から鱗が落ちまくりでした。そして、なんて素敵な世界が生まれるんだろうと言うことに、希望と共に暖かい未来を想像させて頂きました
モノやコトだけでなく、感情や痛みや感動などの心や気持ちまでが、全てデータ化される未来に、どんなことが起きてほしいか、私の場合、とかくディストピア的な監視社会を思い描きがちですが、なんと素敵なハピネス溢れる世界の可能性があるのかと、感動しました
心や気持ちまでもが全てデータ化されたとしたら、その人が抱える痛みや困りごとなどが事細かく分析できる世界が来たとして、その心のデータを招き猫アルゴリズムが読み解いて、その付近にいる解決できるマインドセットとスキルを持ち合わせている人がいたら、そこに何かが起きるきっかけをマッチングしてくれる
最初はお互いにに気づかないけど、そのきっかけをもとに新しい付加価値が生まれて、誰かのペインを解決することにつながるかもしれない
サンキューポイントなど一時期流行りましたが、それが自動的に促される仕掛けになるのかと思いました。そしてそれは新しい人間関係を生み出すかもしれないし、公にはしたくないマインドの人は贈与的なものにもなるなあと。その付加価値と感謝のループが経済を回すと言うのはとても感動的と思いました
2、イノベーション創発システム
イノベーションは誰にでもできる。近所の畑の草をむしってあげたり、ヒールが折れた女性の荷物を持ってあげる、みたいに。誰かの困りごとを誰かがなんとかしてあげる、それだけでイノベーションと言っていいのではないかと思ってます
それがさらに仲間とともに沢山の人たちに喜んでもらえるようなものに成長した時に、世の中の人たちが俗に言うイノベーションに育ってったと思うのです。
そう考えると、今回の、"招き猫"は、まさに誰かの痛みと解決できる人の自動マッチングということを考えると、まさに小さな付加価値をで依拠する人を創り出す、イノベーション創発システムと言っていいのではないかと思いました
とはいえ、最終的には、その人の選択に委ねられる部分があるので、うまく行く時もあれば、流されてしまうこともあるかもそれませんが、それでもそのイノベーションが生まれる可能性のセレンディピティを極限まで高めてくれる仕組みは、地球上に新しい価値を生み出しまくる
例えて言えば、キカイダーの良心回路のような、機械仕掛けなのに、そこに人間のあったかい感情を生み出してくれるような、そんな素敵な未来のソリューションだなあと思いました
3、付加価値と感謝の力が経済を回す
誰もが付加価値を出せる機会をたくさん増やしてくれる、そんなマッチングソリューションは、そこから出た付加価値に対して、痛みを解除してくれたという、感謝のフィードバックが出てきて、そこに暖かい気持ちを生み出して、さらに次の人たちにその輪が引き継がれていく、そんな幸せのループが回っていくことになるなあと思いました
そして、必ずしも感謝されないこと、または、全く相手が一生気づかないけども、付加価値を提供してあげた場合には、それは贈与として、明確なお返しはないんだけども、贈与した時点で、実は贈与した人が暖かい気持ちを得てるという意味では、フィードバックが回ってるとも思います
成田さんが言われているように、"見知らぬ他人同士が親切や贈与をしあうという見果てぬ夢"を実現することが、実は未来に実現できる可能性を我々はすでに持っているということに、感動し勇気をいただきました
そんなユートピアを創れるのが"招き猫アルゴリズム"であると
一言で言うと
ユートピアを"招き猫"ノベーション
そんなことを思いました^ ^
参考:本: 22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する 2025年2月20日発行 著者 成田悠輔 発行所 株式会社文藝春秋