残間光太郎の"闘うものの歌が聞こえるか"

残間光太郎の"闘うものの歌が聞こえるか"

By kotaro zammaBusinessEntrepreneurship
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残間光太郎の"闘うものの歌が聞こえるか" episodes

  • 面白がれるノベーション(1958回)

    筑波大学教授の落合陽一さんが語った、AI時代に大切な能力に関する言葉に、とても考えさせられました。


    落合さん曰く、

    「人間がやっぱり今重要なのは面白がれる能力だと思ってて。


    ただこのネタ面白いねとか、これが面白いねっていうのを他人に伝えられて


    それに、あ、やっぱそれ面白いねと言って、みんなでなんか、じゃあこんな研究したら楽しいよねとか


    あ、じゃあこれって本当に必要だよねっていうのが伝播していくと、すごくいい人材が揃ってくんですけど」


    ここから私は思いました。

    1、面白がれる能力

    2、面白がれるが仲間をつくる

    3、必要性がさらなる仲間を連れてくる


    1、面白がれる能力


    研究やイノベーション活動においては、想定外のことが、たくさん起こります。


    その際に、想定と違うといって、落胆するのか、逆に面白いんじゃない?と思えるのかによって、180度進む方向が変わることがあるなあと思いました


    創造性研究で知られるテレサ・アマビールさんは、

    「人は、仕事そのものへの興味、楽しさ、満足感、そして挑戦によって主に動機づけられているとき、最も創造的になる」

    と言われています。


    創造の出発点は、

    「なんかこれ面白そう」から始まり、さらには

    「逆に面白いんじゃない?」

    なのかもしれないなあと思いました。


    AIは答えを出してくれるけど、自分が心から面白いかと思えることは、自分にしかわからない。なんでもいいから

    「これ、面白い」

    「もっと知りたい」


    と感じられる力そのものが、人間の大切な能力になるのかもしれないなあと思いました


    2、面白がれるが仲間をつくる


    組織心理学者のシガル・バーサードさんは、論文「波紋効果―感情の伝染が集団行動に与える影響」の中で、


    「ポジティブな感情が伝染したグループでは、協力が高まり、対立が減った」

    と報告されているそうです。


    一人の、

    「これ、面白い」

    が、

    「それ、面白いね」

    と周囲へ伝わり、仲間をつくっていく。


    つまり、面白いものが人を集めるのではなく、

    面白がれる人が、仲間をつくっていくのかもしれないなと思います


    そして、自分では気づかなかった可能性を、仲間から『それ、逆に面白いんじゃない?』と言われて発見することもある。そこから、発見した本人がリーダーとなって動き始めることもあるのだと思います


    これは、先日お話しした、最初の仲間ノベーション(1956回)の、起業家デレク・シヴァーズさんのTED講演「ムーブメントの起こし方」にも通じる話として、仲間が大切かもしれないなあと思いました


    3、必要性がさらなる仲間を連れてくる


    そして落合さんは、「これ、面白いね」の先に、「これって本当に必要だよね」と語っていました。


    ここで、単なる興味が、「誰かのために必要だ」「社会にとって意味がある」という大義に変わる瞬間なのかと思いました。


    すると、その大義を実現するために、新たな研究が始まり、研究者や企業、異なる専門性を持つ人たちがさらに集まってくる。

    私は、ここからイノベーターリップルモデルが、さらに大きく回り始めるのだと思います。


    一人の「面白い」というパッションが仲間をつくり、

    「これは必要だ」という大義が、さらに仲間を呼び、

    その波紋が社会へ広がっていく。


    イノベーションの最初の一滴は、

    案外、「これ、面白くない?」「逆に面白いよね」

    という一言なのかもしれないなあと思いました。


    ということで一言でいうと

    面白がれるノベーション


    そんな話をしています


    参考:NHK「首都圏情報 ネタドリ!」『激変!?“AI時代” 私たちはどう働く』2026年9月5日

    ・テレサ・アマビール

    創造性と内発的動機づけに関する研究

    ・シガル・バーサード

    「波紋効果―感情の伝染が集団行動に与える影響」2002年

    15 min
  • 拒絶されに行くノベーション(1957回)

    起業家のジャ・ジャンさんが、カナダ人起業家ジェイソン・コームリーさんの考案した『拒絶セラピー』を実践して得た学びに、感動しました


    曰く、

    「『拒絶セラピー』はカナダ人起業家が発明したゲームです。彼の名はジェイソン・コームリーです。基本的なアイデアは30日間出かけて行って、自ら拒絶を求め、毎日何かで拒絶されることを通じて、最終的には拒絶の痛みに対する免疫をつけるというものです。」


    そこでジャンさんは、これを100日間やってみることにします。


    そこでの学びとして

    「一旦断られても逃げ出さなければ、『いいえ』を『はい』へと覆せる可能性も出てきて、そのための魔法の言葉は『なんで?』だということ。」


    「相手が抱きそうな疑念を聞かれる前に口にすれば、信頼を得られるということです。承諾してもらえる確率が上がるんです。」


    そして最後のメッセージに感動しました


    「私は拒絶から逃げ回ることで、ずっと拒絶に苛まれていました。それから拒絶に向き合い始め、拒絶を人生最大の授かりものに変えたんです。」


    ここから私は思いました。

    1、断っているのは自分

    2、最初の拒絶はNOではない

    3、拒絶は学習データにできる


    1、断っているのは自分


    例えば、好意を持った彼氏彼女へ告白する時、

    「どうせ断られる」「きっと無理だ」「迷惑ではないか」


    と、相手が断る前に、自分で自分を断っていることってあるよなあと思います。


    面白い研究があって、フランシス・フリンさんとヴァネッサ・レイクさんは、人が「お願いしたとき、相手がどれくらい応じてくれるか」を6つの研究で調べました。


    すると人は、実際に相手が応じてくれる可能性を大きく過小評価していることがわかったとのことです。


    つまり、相手がNOと言う前に、自分の中でNOをつくっている。


    これは恋愛の告白を調べた研究ではありませんが、人は相手のYESの可能性を、自分が思っている以上に低く見積もってしまうことがある。


    だとすれば、恋でも仕事でも、最初に越えるべき拒絶は、相手からの拒絶ではなく、自分自身の拒絶なのかもしれません


    そしてジャンさんが、当然断られるだろうと思って頼んだ『五輪マーク型のドーナツを作ってほしい』というお願いを、実際に引き受けてくれる店員さんまで現れます。


    自分の中のNOを越えてみなければ、そこにあったYESには永遠に出会えなかった。


    自分の枠を乗り越えると、思いもよらないことが起きる可能性もある、ということをまざまざと教えていただきました。


    2、最初の拒絶はNOではない


    そしてさらに、一旦は拒絶された上で、「なんで?」と聞いてみると、相手が何を心配しているのかが分かることで


    最初のNOがYESに変わることも出てきたという発見がありました。


    つまり

    最初のNOは、必ずしも最後のNOではない。

    ということなのかなと思いました


    自分の拒絶を乗り越えた上で、何度も拒絶されることによる免疫もつけた上で


    そして拒絶に慣れてくれば、NOを言われても逃げずに、『なぜですか?』と聞けるようになる


    拒絶とは、「終わり」という答えではなく、次の問いを生み出す情報なのかもしれないなあと思いました


    3、拒絶は学習データにできる


    起業家研究者のジェイソン・コープさんは、事業に失敗した8人の起業家を詳細に調査したところ


    彼らは、失敗から単に「何が悪かったのか」だけではなく、自分自身のことや、人間関係やネットワークのこと、そして、事業運営のどこに危険が潜んでいるのか。まで学んでいました。


    そして、その学びが、次の起業活動への準備につながっていたことを明らかにしたということです。


    つまり、ここで大切なのは、失敗しただけで学習になるわけではない、ということだと思います。


    拒絶された。

    そこで「なぜ?」と問い直す。

    振り返る。

    そして、次の行動を変える。


    拒絶 →「なぜ?」→ 学ぶ → 行動を変える。


    そのとき初めて、拒絶は次の挑戦に使える学習データになる。


    だとすれば、拒絶とは失敗の記録ではなく、次の挑戦をよくするための学習データなのかもしれません。


    拒絶されないことが、挑戦なのではない。拒絶されても、そこから学び、もう一度動けることが、挑戦なのかもしれません。


    ということで、一言で言えば、

    拒絶されに行くノベーション。


    そんな話をしています


    参考:

    ジャ・ジャン「100日間の拒絶から学んだこと」TEDxMtHood、2015年。TED公式講演⁠

    ジェイソン・コープ「起業家は失敗から何を学ぶのか――解釈的現象学的分析」『Journal of Business Venturing』第26巻第6号、2011年、604–623頁。

    フランシス・J・フリン、ヴァネッサ・K・レイク「助けが必要なら、ただ頼んでみよう――直接的な依頼への承諾率の過小評価」『Journal of Personality and Social Psychology』2008年


    19 min
  • 最初の仲間ノベーション(1956回)

    起業家デレク・シヴァーズさんのTED講演「ムーブメントの起こし方」に、リーダーについての全く違う見方を教えていただきました。


    一人で踊り始めた男性に、最初の一人が加わり、やがて大きなムーブメントになっていく映像を見ながら、シヴァーズさんは語ります。


    曰く、

    「リーダーシップは、過度に称賛されすぎている。」


    「最初のフォロワーが、一人の変わり者をリーダーに変える。」


    「リーダーは、最初のフォロワーを対等な存在として受け入れる。」


    「最初のフォロワーになること自体が、実は過小評価されている一つのリーダーシップなのだ。」 


    私は思いました。

    1、最初の仲間がリーダーをつくる

    2、リーダーは仲間を対等に扱える

    3、最強の仲間を目指してもいい


    1、最初の仲間がリーダーをつくる


    私は、優れたリーダーがいるから仲間が集まると思っていましたが

    でも、それが逆なのかもしれない、ということに衝撃をいただきました。


    ある人を、まだ誰も信じていない時に、「それ、面白いね。私もやるよ。」と言ってくれる最初の一人。


    実はその人が、変わり者をリーダーに変えていくのだと。


    確かにリーダーは、一人ではリーダーとは言えないので仲間がいて初めてリーダーになりますが、順番が違うのかと


    面白い実験があって、クイーンズランド大学の社会・組織心理学者のキム・ピーターズさんとアレクサンダー・ハスラムさんは、英国海兵隊の訓練生を32週間にわたり5回測定したところ


    「自分はリーダーだ」と認識する人は上官からリーダーとして高く評価される一方、自分をフォロワーだと認識し、周囲からもフォロワーだと見られていた人たちは、仲間からリーダーとして評価される傾向があったということです。


    この研究が、シヴァーズさんと全く同じことを示しているわけではありません。

    でも私は、ここにも「リーダーは一人では生まれない」という共通点を感じました。


    実は、リーダーとは、自分一人でなるものではなく、   誰か信じてくれる人が現れた瞬間に、リーダーになっていくものであると


    最初に挑戦した人だけでなく、最初にその人を信じた人がいるからこそ、イノベーションを生み出しているのかもしれないなあと思いました


    2、リーダーは仲間を対等に扱える


    リーダーとなるべき人に大切なことが一つあって、信じてくれた仲間を「自分についてくる人」にしないことである、ということもとても心に響きました


    「私についてきて」ではなく、「一緒にやろう」。と言える人なのか。ということ


    それがあることで「私の挑戦」を「私たちの挑戦」に変えることができる


    ここにリーダーとなるべき人の、大切な資質があるように思いました。


    組織行動論の研究者のダニー・ワンさんらが42の独立した研究サンプルを統合したメタ分析では、リーダーシップを一人に集中させず、メンバー同士で共有する「共有型リーダーシップ」と、チームの有効性との間に正の関係が確認されました。


    しかも、仕事が複雑になるほど、その関係は強くなる傾向があったとのことです。


    優れたリーダーというと、一人のカリスマが組織を引っ張っていく姿を思い浮かべます。でも、複雑な問題になればなるほど、リーダーシップを一人で握るのではなく、仲間と分かち合うことが力になる。

    シヴァーズさんの「対等な存在として受け入れる」という言葉と、どこか重なるように思いました。


    3、最強の仲間を目指してもいい


    私も学生や社会人の起業家を育成するプログラムを実施していたりしますが、実は起業家というリーダーを育成して生み出していくアクティビティだけでなく


    自分が一緒にやりたい人を探して、自分は仲間としてその人をリーダーにしていく人たちを増やすアクティビティも必要なのではないかと思いました


    「リーダーを育てる教育」はたくさんある。でも、「最初の仲間になる人を育てる教育」は、どれくらいあるのだろう。


    考えてみれば、全員がリーダーを目指さなくてもいいし、そういうのが得意な人もいれば、そうでもない人もいる。


    産業・組織心理学者のアシタ・ゴスワミさんらが行った2つの研究では、フォロワーが自分を単なる受け身の存在ではなく、リーダーシップを一緒につくる「共同生産者」と捉える共同生産型の役割認識が、リーダーとの心理的な近さを介してリーダーへの影響力と結びつき、さらに心理的な近さや関係の質を介して、リーダーの有効性の評価にもプラスにつながることが示されました。


    つまり、最強の仲間とは、ただ、ついていく人ではない。

    誰も信じていない時に信じる。一緒に考える。時には異論を言う。

    そして、リーダー自身をよりよいリーダーにしていく。


    私は、自分が考えているイノベーター・リップルモデルを思い出しました。

    一人の内側にあるパッションに、最初の仲間が共鳴する。

    そこで初めて、一人のパッションが人と人との間に広がり、一人から二人へ、二人から組織へ、そして社会へと波紋になっていく。


    だとすれば、

    最初の仲間こそ、最初の波紋をつくる人なのかもしれません。


    世界を変える最初の一人になるのも素晴らしい。


    でも、

    世界を変えようとしている一人を、最初に信じる一人になるのも、同じくらい素晴らしい。


    最高のリーダーを目指すだけでなく、

    最強の仲間を目指してもいい。


    そんなことを思いました。


    ということで、一言で言えば、

    最初の仲間ノベーション。


    そんな話をしています


    参考:

    デレク・シヴァーズ「ムーブメントの起こし方」TED、2010年 https://www.ted.com/talks/derek_sivers_how_to_start_a_movement?utm_campaign=tedspread&utm_medium=referral&utm_source=tedcomshare

    キム・ピーターズ、S・アレクサンダー・ハスラム「私はフォローする、ゆえに私はリードする―英国海兵隊におけるリーダー/フォロワー・アイデンティティとリーダーシップの縦断研究」『英国心理学誌』2018年 

    ダニー・ワン、デイビッド・ウォルドマン、ジェン・ジャン「共有型リーダーシップとチーム有効性のメタ分析」『応用心理学誌』2014年 

    アシタ・ゴスワミ、カロライン・エバンス、パトリック・コイル「フォロワーの役割志向はリーダーへの影響にどう作用するか」『Journal of Management & Organization』2024年掲載 


    18 min
  • 絶望から始まる人生ノベーション(1955回)

    『華麗なるギャツビー』で知られるアメリカの作家、F・スコット・フィッツジェラルドさんが、若くして成功した後、作家としての低迷、経済的苦境を経験された中、1936年に発表した『崩壊』での言葉に震えました


    曰く、

    「一流の知性があるかどうかは、相反する二つの考えを同時に心に抱きながら、それでもなお行動する能力を保てるかどうかで試される。」


    「たとえば、物事が絶望的であると理解しながら、それでも、それを違うものにしようと決意できなければならない。」


    私は思いました。

    1、絶望の中、なぜ希望を持てるのか?

    2、行動が、希望をつくる

    3、困難が、新たな自分をつくる


    1、絶望の中、なぜ希望を持てるのか?


    なかなかにハードシングスなご経験をされたとのことなのですが、なぜ絶望の中でも行動できるのか、希望を持てるのか、という問いが気になりました。


    カンザス大学の心理学者C・R・スナイダーさんらが、1991年、希望を心理学的に捉える「希望理論」を提唱し、「希望尺度」を開発しましたという話があります。


    スナイダーさんが考えた希望は、単なる「きっとうまくいく」という楽観論ではなく、希望には理論的に二つの力があると言われています。


    一つは、目標へ向かおうとする意志。

    もう一つは、そこへ至る道筋を考える力。


    つまり絶望の中の希望とは、

    「きっとうまくいく」と信じることではなく、「まだ自分にできることがある」と具体的な道筋を思い描くことができることなのかと思いました


    フィッツジェラルドさんは、晩年になっても、決して書くことは諦めなかったそうです。


    それは、絶望していても、「書く」という意思と、自分にできる道筋があったからこそ、希望を持つことができた


    どんな状況でも、自分の目標へ向かう意思と、そこへの道筋を考えること。


    それが絶望から抜け出す一つの秘訣かと思いました


    2、行動が、希望をつくる


    心理学者トレバー・マズケリさんらは2009年、「まず行動する」ことを重視する、<行動活性化>について、34の研究、合わせて2,055人のデータを統合して分析したそうです。


    その結果、抑うつ症状のある人に対して、行動を増やしていくアプローチには、何もしない場合などと比較して、統計的に大きな改善効果があることが示されました。


    大切なのは、

    「まず行動することで、心や環境との関係が変わっていく」

    ということです。


    フィッツジェラルドさんは、絶望がなくなるのを待って書いたのではなく、絶望の中で、まず書く、という行動をとった。


    「希望理論」と合わせると、目標への意志とそこへ到達すべき道筋を思い描くこと


    そしてさらに、それに基づいて「まず行動する」ことが、実は、希望を生み出す原動力になる。


    そんなことを思いました。


    3、困難が、新たな自分をつくる


    そして、その後はどういう道筋を辿るのかについても、興味深い話に出会いました。


    心理学者リチャード・テデスキさんとローレンス・カルフーンさんは、大きな危機や困難を経験した後、人が以前の状態に戻るだけではなく、新しい変化を経験することがあるとして、「心的外傷後成長」を研究したそうです。


    1996年には、その変化を測る21項目の尺度を開発し、そこで捉えられた変化は5つ


    ・新しい可能性を見つける。

    ・他者との関係が変わる。

    ・自分の強さに気づく。

    ・人生への感謝が深まる。

    ・精神的・実存的な価値観が変わる。


    会社の中でも、昔は「若手には修羅場の経験も必要だ」とよく言われた気がします。もちろん、困難を与えれば人が成長するという単純な話ではありません。


    ただ、避けることのできなかった困難と格闘する中で、人がそれまでとは違う自分を発見することがある。そういう変化を、経験的に感じていたのかもしれないなあと思います。


    フィッツジェラルドさん自身も『崩壊』の中で、


    「人はそこから元に戻るのではない。別の人間になり、やがて、その新しい人間が、新しく大切なものを見つける。」


    と書いています。


    絶望は、その時には、人にはいくら説明しても、本人の思いは理解されないほどに、辛い体験だと思います。


    しかし、そこから、時間がかかるかもしれないけれども、立ち上がる方法はあるということ


    自らの目標への意志を思い出し、そこへの到達の道筋を思い描くこと


    どんな状況でも、自分の目標へ向かう意志。これは、私がいつも大切にしている「パッション」にも通じる気がします。


    そして、思うだけではなく、まず行動に移すこと


    その絶望や困難の中での行動が、いつしか自分を変え、これまでとは違う、新たな自分をつくっていく。


    そういうことがあると、知っているか知らないかで、絶望への向き合い方が、変わるのかもしれないなと思いました


    絶望とは、人生が終わる場所ではなく、新たな自分、新たな人生が始まる場所なのかもしれません。


    ということで、一言で言えば

    絶望から始まる人生ノベーション


    そんな話をしています


    参考:


    F・スコット・フィッツジェラルド「崩壊」『エスクァイア』1936年


    C・R・スナイダーほか「意志と道筋――希望の個人差尺度の開発と検証」『パーソナリティと社会心理学誌』1991年


    トレバー・マズケリ、ロバート・ケイン、クレア・リース「成人の抑うつに対する行動活性化療法――メタ分析とレビュー」2009年


    リチャード・テデスキ、ローレンス・カルフーン「心的外傷後成長尺度――トラウマがもたらす肯定的変化の測定」『心的外傷ストレス研究誌』1996年


    19 min
  • 逆ベクトルノベーション(1954回)

    明和電機の土佐信道(とさ のぶみち)社長社長のお話に、イノベーションスピリッツを感じました。


    曰く、


    「工業製品をアートにするっていうのは、もうずっと現代美術でやられてるんですが、アートを工業製品にするという、逆ベクトルは誰もやってなかったんですね」



    「新しい常識を作ることによって、今の常識を変えていきたい」


    「今すでにあるものの、意外な合体によって新しい価値を出す」


    「孫の代まで遊べるとか、楽しみが増える。理想はそれが世界平和になれば一番いい」


    私は思いました。


    1、逆ベクトルに「まだない」がある

    2、意外な合体が新しい常識をつくる

    3、「面白い」に大義を重ねる


    1、逆ベクトルに「まだない」がある


    みんなが同じ方向を向いている時に、「逆はどうだろう?」と問い直すことができるか?という問いを突きつけられた気がしました。


    ミラノ工科大学のステファノ・マジストレッティ准教授らは、2025年、経営学74本、心理学67本、社会科学47本、合計188本の研究を統合し、イノベーションにおける「問題の捉え直し」を研究したそうです


    そこで示されたのは、答えを探す前に、そもそも「何を問題として見るのか」を問い直すことの重要性です。


    問題を捉え直すには、通常とは異なる視点を探索し、既存の枠そのものを変える創造性が必要だと整理されています。


    明和電機の「逆ベクトル」も、


    「工業製品をどうアートにするか」


    ではなく、


    「アートを工業製品にしたらどうなるか」


    と、関係性そのものを反転させています。


    これはまさに、問題の枠を捉え直す一つの方法なのではないでしょうか。


    常識の逆側に、まだ誰も見つけていない可能性がある、ということを、勇気を持って問い直し、そしてそれを実行できるか


    明和電機の素晴らしさはそこにあると思いました


    2、意外な合体が新しい常識をつくる


    「今すでにあるものの、意外な合体によって新しい価値を出す」


    これは、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの「新結合」と重なります。


    シュンペーターが、イノベーションを、

    「新しい組み合わせを実行すること」

    と捉えたのは有名ですが


    この「新しい組み合わせ」を実証的に研究したのが、当時ハーバード大学経営大学院のリー・フレミングという話があります


    フレミングは2001年、米国特許17,264件を分析し、慣れていない要素や新しい組み合わせを使った発明ほど、平均的には成果が低くなりやすい一方で、結果の振れ幅が大きくなり、失敗だけでなくブレークスルーも生まれやすくなることを示したとのことです


    つまり、


    意外な組み合わせは、失敗も増やす。

    しかし、ホームランの可能性も増やす。


    つまり、その失敗が増えることを許容できかどうかに、かかっているということかと思いました


    どんどん失敗して良いんだよ、と口でいうこととは簡単ですが、それに伴う評判、評価、出世への道のり、という仕組みがないと、誰もやらなくなってしまう


    そこにイノベーションの秘密の一つがあると思いました


    3、「面白い」に大義を重ねる


    土佐さんが「孫の代まで遊べる」「世界平和になれば一番いい」と言われたことに関して


    私は、イノベーターリップルモデルとの共通点を感じました。


    リップルモデルでは、まず一人の「面白い」「やってみたい」という内発的な思いから始まり


    そこに、

    「誰のために」

    「何のために」


    という大義が加わることによって、その思いは自分だけのものではなくなり、他者が共感し、参加できる意味を持ちはじめ、その波紋がさらに広がっていく


    実は、この関係と同様の研究が、ペンシルベニア大学のアダム・グラントさんと、ノースカロライナ大学のジェームズ・ベリーさんが行っていました


    二人は、90人の軍施設職員、111人の水処理施設職員、さらに100人の大学生を対象とした3つの研究を行って


    「面白いからやる」という内発的動機が高く、さらに「誰かの役に立ちたい」という他者志向の動機も高いグループの創造性評価は4.96。


    一方、内発的動機は高くても、他者志向の動機が低いグループでは3.81でした


    なぜ、この違いが生まれるのか。


    グラントらが注目したのが、相手の立場に立って考えることで


    「誰かの役に立ちたい」と思えば、その人が何を求めているのか、何に困っているのか、何なら本当に喜んでもらえるのかを考えるようになる。


    その結果、単に奇抜なだけのアイデアではなく、

    「新しい」かつ「役に立つ」アイデアを生み出しやすくなる。


    ということでした。


    「面白い」という自分の内側から湧き出る力「パッション」に、「誰のために」「何のために」という大義が重なる。


    すると創造は社会に開かれ、共感する仲間が現れ、その人たちがまた次の波紋を生み出していく。


    まさにイノベータリップルモデルと符合する関係性だなあと思いました


    常識を逆のベクトルから眺めて

    意外な組み合わせを試行錯誤しながら

    面白いと思ったものが、誰かのためを目指し始めた時に、イノベーションが巻き起こる


    一言で言うと

    逆のベクトルノベーション


    そんな話をしています


    参考:


    ・NHK「100分de名著」アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言』第4回「シュルレアリスムと未来」2026年8月24日(月)放送 https://www.web.nhk/tv/an/meicho/pl/series-tep-XZGWLG117Y/ep/QMWWJ755MR


    ・ステファノ・マジストレッティ/クリスティーナ・トゥ・アン・ファム/クラウディオ・デレラ

    「イノベーションのための問題設定の創造的プロセス―統合的レビューと研究課題」

    『製品イノベーション・マネジメント誌』2025年


    ・ヨーゼフ・シュンペーター

    『経済発展の理論』―「新結合」の概念


    ・リー・フレミング

    「技術探索における組み合わせの不確実性」

    『マネジメント・サイエンス』2001年


    ・アダム・グラント/ジェームズ・ベリー

    「他者の必要性は発明の母―内発的動機、他者志向の動機、相手の視点に立つことと創造性」

    『アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル』2011年


    20 min
  • 確証のない結果を信じる意志ノベーション(1953回)

    哲学者・心理学者のウィリアム・ジェームズさんの言葉に、まだ誰にも見えていない未来へ挑戦するときのヒントをいただきました。


    曰く、


    「まだ確証のない結果を、あらかじめ信じることが、その結果を現実にすることがある。」


    1897年の『信じる意志』に収められた「人生は生きるに値するか」の中の言葉です。


    ここから私は思いました。


    1、直感の正体は、経験の圧縮

    2、確証がなくても、信じる理由がある

    3、反対は、未来のサインかもしれない


    1、直感の正体は、経験の圧縮


    確証のない結果を信じるとは、どういうことなのかについて、とても興味が湧きました


    直感というと、「なんとなくそう思う」という根拠のない勘のようにも聞こえます。


    組織行動・経営学の研究者のデインさんとプラットさんは、2007年に『Academy of Management Review』にて、直感を、過去の知識や経験が非意識的に結びついて生まれる素早い判断として整理しています。


    つまり、


    直感とは、経験の圧縮版で、「ここには何かある。」という感覚が出現する。


    そう考えると、単なる思いつきだからと、捨てることなく、なぜ自分はそう感じるのかについて、掘り下げてみる必要があるのかもしれないなと思いました


    2、確証がなくても、信じる理由がある


    しかし、それを心の底から信じる、というのは、どういう時にできるのだろうと考えてみました


    ジェームズさんは、証拠がすべて揃うまで待っていたら、機会そのものを失ってしまう選択があると考えました。


    ソニーのウォークマンの逸話は有名ですが、社内には反対があったなか、盛田昭夫さんは、自分たちが見てきた経験から生まれた可能性を信じた。


    なぜ確証がなくても賭けられるのでしょうか。


    私は、そこに自分のパッションの源が関係しているのではないかと思います。


    自分が本当に大切だと思ってきたこと。

    どうしても放っておけないこと。

    なぜか心の琴線に触れてしまうこと。


    そこに経験から生まれた直感が重なったとき、


    「まだ証明できない。でも、自分はここに賭けたい。」と思える。


    信じるとは、根拠なく思い込むことではなく、経験から生まれた仮説が、自分のパッションの源に触れたとき、その可能性に一歩賭けてみることなのかもしれないなあと思いました


    3、反対は、未来のサインかもしれない


    ピーター・ティールさんは『ゼロ・トゥ・ワン』で、

    「ほとんど誰も賛成してくれない、大切な真実は何か。」

    と問いかけている話がありますが、そんな中、自分を信じるのはどうしたらいいんだろう?とも思います。


    2024年、ルカ・ジウスさんが67のベンチャーコンテスト、2,650社のスタートアップを分析した研究では、審査員の評価が割れたスタートアップほど、その後成功する可能性が高いという関係が見られたとのこと。


    特に、アイデアがユニークな場合に、その傾向が強かったとされています。


    もちろん、反対されれば成功するという意味ではありませんが、多数決で反対されているから間違っているとも限らないというのがイノベーションかと思います。


    本当に新しいからこそ、まだ多くの人には価値が見えず、評価が割れることもある。


    だから反対されたとき、

    「この反対の向こうに、まだ誰にも見えていない未来があるのではないか。」


    と一度考えてみることが大切な気がします。


    直感には、実は経験という根拠がある。


    確証がなくても、自分のパッションの源に触れるからこそ、賭けられることがある。


    そして反対は、ときに新しさのサインになる。


    誰かが、

    「まだ証明できない。でも、ここには未来がある。」

    と信じる意志から、新しい未来は始まるのかもしれないなあと思いました


    一言で言えば、


    確証のない結果を信じる意志ノベーション。


    そんな話をしています。


    闘うものの歌が聴こえるか。


    参考


    • ウィリアム・ジェームズ『信じる意志』、1897年
    • デイン、プラット(2007)直感に関する研究
    • 盛田昭夫『メイド・イン・ジャパン』、1986年
    • ピーター・ティール、ブレイク・マスターズ『ゼロ・トゥ・ワン』
    • ルカ・ジウス(2024)ベンチャーコンテストにおける評価の不一致とスタートアップ成功に関する研究


    17 min
  • 到底できそうもない目標ノベーション(1952回)

    彫刻家ヘンリー・ムーアさんの言葉に、人生をかける目標について考えさせられました。


    曰く、


    「人生の秘密は、一つの仕事を持つこと。人生のすべてを捧げ、一日一日のあらゆる瞬間をそこに注ぎ込む仕事を持つこと。そして最も大切なのは、それが自分には到底できそうもないことであることだ。」


    80歳になったムーアさんに、詩人ドナルド・ホールさんが「人生の秘密は何ですか」と尋ねたときの言葉だと伝えられています。


    ここから私は思いました。


    1、強制的に変革を促す

    2、終わらない問いをつくる

    3、自分一人を超えろ


    1、強制的に変革を促す


    なぜ、目標は「到底できそうもない」ほど大きい必要があるのかなあと考えてみました。


    大きすぎる目標は、逆にモチベーションを下げてしまうこともある気がします。


    しかし一方で、到底できそうもない目標を置いた瞬間に、


    今までとは違う技術を学ぶ。

    違う人と組む。

    今までの常識や、やり方そのものを変える。


    ということを迫られるのかもしれません。


    つまり、


    到底できそうもない目標は、今の自分では足りない状況を強制的につくる。


    経営学でも、シトキンらは「ストレッチ目標」、つまり一見すると不可能に見えるほど高い目標について論じています。


    こうした目標は、従来のやり方の延長では届かないからこそ、新しい探索や学習、方法の見直しを促す可能性があるとされています。


    ただし、もちろん大きな目標にはリスクもあります。


    目標が大きすぎれば、逆に諦めや混乱を生むこともある。


    だからこそ、大切なのは「無理難題を押しつけること」ではなく、


    今のやり方では届かない目標を置くことで、やり方そのものを問い直すこと


    なのだと思います。


    たとえば新規事業でも、


    「来年度には少なくとも受注が上がるように」


    という目標だけなら、今の事業の延長線上の改善で届くかもしれません。


    しかし、


    「現在の事業と同等、あるいはそれを凌駕するほどの新しい事業をつくる」


    となれば、今までとは全く違うやり方が必要になる。


    「イノベーションを起こそう」というスローガンだけでは変わらない行動を、到底できそうもない目標が強制的に変えていく。


    そんな力があるのかもしれないと思いました。


    2、終わらない問いをつくる


    もう一つの効能は、


    到底達成できそうもない目標は、終わらない問いを生み出す


    ということです。


    達成できる目標は、達成した瞬間に終わります。


    しかし、到底できそうもない目標があれば、


    「自分たちは、本当にそこへ向かっているのか。」


    「まだできていないことは何なのか。」


    「次に何をすべきなのか。」


    と問い続けることができます。


    自分も、会社も、国も、成長し続けるためには、


    問いを生み出し続ける仕掛け


    が必要なのかもしれません。


    到底できそうもない目標は、その一つになり得るのではないかと思いました。


    3、自分一人を超えろ


    そして、到底できそうもない目標は、


    「自分一人で達成する」


    という考え方も超えさせるのではないかと思います。


    以前、哲学者の戸谷洋志さんの「弱い責任」についてお話ししました。


    人間を、一人ですべてを背負える「強い主体」と考えるのではなく、


    一人では生きられず、誰かを頼りながら責任を果たしていく存在


    として考えるというものです。


    到底できそうもない目標なら、なおさらです。


    一人でできなければ、仲間を頼る。


    仲間と一緒につくる。


    さらに、マルテラとペッシは「意味のある仕事」について、


    自己実現だけではなく、自分自身を超えた、より大きな目的に貢献すること


    が重要だと論じています。


    つまり、


    「自分が成功する」から、「自分を超えた大義を実現する」へ。


    この考え方は、以前お話ししたイノベーター・リップルモデルにも重なるところがあると思います。


    一人のパッションから始まり、仲間へ広がり、やがて誰かが喜ぶ大義へとつながっていく。


    場合によっては、自分の人生の中で完成しなくてもいい。


    次の人へ、次の世代へ、その問いを託していく。


    到底できそうもない目標だからこそ、自分一人を超え、仲間や時代を超えていくことができるのかもしれません。


    ということで、


    到底できそうもない目標を持つことは、


    強制的な変革を巻き起こし、

    終わらない問いを生み、

    自分一人や自分の時代を超えた価値へつながっていく。


    それこそが、生きる意味や価値にもつながっていくのではないかと、私はムーアさんの言葉から感じました。


    一言で言えば、


    到底できそうもない目標ノベーション。


    そんな話をしています。


    参考

    • ヘンリー・ムーア

        詩人ドナルド・ホールによる回想、および著書『ライフ・ワーク』で紹介された言葉

    • シトキンほか

        「ストレッチ目標の逆説――一見不可能なものを追求する組織」

        一見不可能に見えるほど大きな目標と、組織の探索・学習・変革に関する研究

    • 戸谷洋志

        『生きることは頼ること 「自己責任」から「弱い責任」へ』講談社、2024年

    • フランク・マルテラ、アンネ・B・ペッシ

        「意味のある仕事とは、自己実現と、より大きな目的に関わるものである」

        意味のある仕事における「自己実現」と「自分を超えた目的への貢献」に関する研究


    動画で観たい方はこちら

    https://youtu.be/6Z5aR-m8Ork

    16 min
  • 不可視光線ノベーション(1951回)

    詩人アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』からの言葉に、私たちは何をもって戦うのか、ということを考えさせられました。


    曰く、


    「シュルレアリスムはいつの日か敵にうちかつことを私たちにゆるす『不可視光線』だ


    『おまえはもうふるえてなんかいない、

    わが瘦軀(そうく)よ』

    この夏、薔薇は青い。

    森、それはガラスである。

    緑の夜におおわれた大地も、私には幽霊ほどのかすかな印象しかあたえない。


    生きること、

    生きるのをやめることは、想像のなかの解決だ。

    生はべつのところにある。」


    『シュルレアリスム宣言』より

    巖谷國士訳


    私は思いました。

    1、非暴力による抵抗

    2、リアリティを諦めない

    3、イノベーションで戦う


    1、非暴力による抵抗


    ブルトンは、シュルレアリスムを、いつの日か「敵にうちかつ」ための「不可視光線」だと思われていたのだなあと感動しました


    敵とは誰なのか?を考えた時に、既存の枠組みや、当たり前と思われているバイアスなど、私はそんなことを思いました


    そして、その方法は、たとえば、ガンジーの塩の行進のように、「非暴力・不服従」な形での抵抗、または改革への意思だったのかもしれないなあと思います


    ブルトンの「不可視光線」とは、これまでと全く違う表現による詩、アート、音楽、そんな手段による、完全非暴力による抵抗の意思だったのかもしれないと感じました


    2、リアリティを諦めない


    理不尽なことや、やるせないことがあると、ついつい、現実逃避をしてしまったり、もういいやと諦めてしまったりする私ですが


    ブルトンさんは、そのリアリティからは、絶対に逃げない、ましてや、生きる/生きるのをやめる、という二択そのものを超えようとしている


    そう言う強い意志を感じました


    あくまでも、リアリティの中で、既存の勢力や圧力などには、服従することはなく、それで、諦めることも決してしない


    自分なりの方法で戦うことを諦めるな、そんな勇気をいただいた気がしました。


    3、イノベーションで戦う


    既存の枠組みや、違和感、やるせなさ、抑圧などを突き崩す力を持つのが、イノベーションだと思います


    できるわけがないという諦めや、あまりにも課題が大きすぎて、複合化しすぎていて、何から手をつけたらいいかわからない


    そんな課題が山積みなところにも、イノベーションのすごいところは、それまでとは全く違う解き方によって、複雑に絡み合った課題を一気に動かす可能性があるところだと思います


    シュルレアリスムも、全く場違いなところに、なぜか出会う。そこから、これまで思いもよらなかった新しいものの見方が生まれる


    それはシュンペータさんが言われた『新結合』にも通じるものを感じます


    それは、目に見えて、何かを攻撃するものではないけれども


    見えない可能性を見つけ、それを現実にしていく。


    暴力ではなく、創造によって戦う。


    それこそが、私たちの時代の「不可視光線」であり、イノベーションで戦うということなのではないかと思いました


    ということで一言でいえば


    不可視光線ノベーション


    そんな話をしています


    参考:NHK「100分de名著」アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言』第4回「シュルレアリスムと未来」8月24日(月)放送 https://www.web.nhk/tv/an/meicho/pl/series-tep-XZGWLG117Y/ep/QMWWJ755MR

    14 min
  • 創造的活動が創造性を高めるノベーション(1950回)

    詩人、作家だけでなく、歌手、ダンサー、俳優、舞台演出、ジャーナリスト、教育者など、非常に多くの表現活動を行い公民権運動にも関わり、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアやマルコムXとも仕事をされていたマヤ・アンジェロウさんの言葉から、創造性について、いろいろ考えさせられました


    曰く、

    「創造性は使い果たすことができない。使えば使うほど、もっと増えていく。」


    ここから、私は思いました。


    1、量が創造性を高める

    2、量だけではない、開放性が鍵

    3、開放的な行動が、開放性を高める


    1、量が創造性を高める


    創造性研究では、アイデアを多く出す人ほど、優れたアイデアに出会う可能性も高まることが示されています。


    これは「Equal-Odds Rule」と呼ばれる考え方とも重なります。


    最初から完璧な一案を狙うのではなく、量を増やすことで、優れたアイデアに出会う可能性が高まる。


    マヤ・アンジェロウさんの言葉と重なるところがあります。


    しかし、


    「ならば、100個出せばいいのでしょうか。」


    どうも、それほど単純ではなさそうです。


    2、量だけではない、開放性が鍵


    2019年、マーティン・フリース=オリヴァリウス、ボー・T・クリステンセンは、154人の大学院生を対象に、身近な物の新しい使い方を考えてもらう研究を行いました。


    そこで注目されたのが、

    「経験への開放性」です。


    研究では、開放性が高いほど、


    アイデアの量と平均的な創造価値との正の関係が強くなりました。


    著者らは、開放性の高い人ほど、多様性や新奇性を解決策に取り込んでいる可能性を論じています。


    つまり大切なのは、


    100個考えることだけではなく、その間に新奇性や多様性を取り込めているか。


    これは、普段から、違う意見や、知らない技術に出会ったとき、「それは違う」ではなく、


    「それは何だろう」と一旦開いてみることをしているか


    常日頃から新奇性や多様性を取り込めるクセがついているか


    そのあたりに、量をさらに創造性につなげる鍵があるのかもしれないなあと思いました。


    3、新しい行動が、開放性を高める


    では、開放性はもともとの性格で決まってしまうのでしょうか。


    Stiegerらの人格変容研究では、日常の中で具体的な行動を意図的に変えていくことで、人格特性が望む方向へ変化する可能性が示されています。


    ポイントは、

    「もっと開放的になろう」と考えるだけではなく、実際に新しい行動をすることです。


    たとえば、普段とは違うことを試してみる。新しい経験に意識的に触れてみる。新しい考えに出会ったとき、すぐに否定せず一度向き合ってみる。


    開放性があるから、新しいことをする


    だけではなく、


    新しいことを実際にやってみることで、開放性そのものも育つ可能性がある。


    つまり、開放的な人でなくても、何か創造的な活動をしていなくても


    後天的に、人は誰もが、創造性を高めていける可能性があと言うことだと思いました。


    自分として、もっと創造性を高めたいなら、


    開放的な行動を心がけて、そして、たくさん創造的な活動をしていくこと


    一言で言えば

    創造的活動が創造性を高めるノベーション


    そんな話をしています


    参考

    ・マヤ・アンジェロウ(1982)『ベル・テレフォン・マガジン』インタビュー

    ・モーテン・フリース=オリヴァリウス、ボー・T・クリステンセン(2019)「完全に等しい確率ではない――経験への開放性は、発散的思考におけるアイデアの量と質の関係を調整する」『フロンティアズ・イン・サイコロジー』第10巻、355

    ・ミルヤム・シュティーガー ほか(2021)「デジタル人格変容介入の支援によって人格特性を変える」『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』第118巻第8号   

    16 min
  • 制約を楽しもうノベーション(1949回)

    芸術家のフィル・ハンセンさんのTED講演「Embrace the shake」に、心が震えました。


    彼は点描画に没頭していた頃、手に震えが生じ、神経の障害によって、それまでのように描くことが難しくなりました。


    一度は芸術から離れますが、その後、「震えをなくす」のではなく、「震えを受け入れる」方向へ発想を転換します。


    そして、震えそのものを作品づくりに取り込み、新たな表現を次々と生み出していきました。


    講演の中で、ハンセンさんはこう語っています。


    「震えを受け入れる事は芸術やテクニックだけの問題ではないからです。それは人生や生きる技術に関係していたのです」


    そして、


    「限界を創造性の源ととらえることで私の人生は変わりました」


    さらに、制約について考えることは、マンネリから抜け出し、カテゴリーや一般に認められた規範そのものを問い直すことにつながると語り、最後にこう投げかけます。


    「制約を楽しもう」


    ここから私は、3つのことを思いました。 


    1、誰にでも制約は必ず訪れる

    2、制約は創造の源である

    3、制約を楽しむために


    1、誰にでも制約は必ず訪れる


    フィル・ハンセンさんにとって、それは手の震えでした。


    しかし、私たちにも、いつか必ず制約は訪れます。


    例えば「老い」。


    若い頃にはできたことが、できなくなることもあります。


    そんな時、


    「昔のようにできれば」


    と、失ったものだけを見るのではなく、


    「今の自分だからできることは何だろう」


    と問い直すことができるのではないでしょうか。


    制約をなくしてから人生を始めるのではなく、


    制約のある自分から、もう一度始める。


    そんな生き方もあるのだと思いました。


    2、制約は創造の源である


    制約は、その人だけの「個性」につながることもあるのではないかと思います。


    例えば、福島智さん。


    福島さんは、視覚と聴覚の双方を失う中で、「指点字」というコミュニケーション方法と出会い、人とのつながりを広げ、研究者としても活動されてきました。


    もちろん、失うことや不自由そのものを美化することはできません。


    しかし、


    失ったものだけを見るのか。


    それとも、


    その経験によって得た、自分だけの視点から何ができるかを考えるのか。


    そこには大きな違いがあると思います。


    人と違う条件。


    人と違う経験。


    人と違う不自由さ。


    それは弱さであると同時に、


    まだ誰も持っていない「問い」を持っている


    ということでもあるのかもしれません。


    新興国国で起こるリバースイノベーションも、インフラが整っていないからこそ、起きるイノベーションの一つと思います


    たとえば、電気を使わなくても、気化熱で冷える冷蔵庫が、今度は、先進国の被災地域で使われたりする


    制約は、多様性につながる。


    そして多様性は、新しい創造の入口になる。


    だから私は、


    制約は創造性を奪うものではなく、創造性にその人だけの形を与えるものなのではないか


    と思いました。


    3、制約を楽しむために


    とはいえ、


    「制約を楽しみましょう」


    と言われても、簡単ではありません。


    苦しいものは苦しいし、怖いものは怖い。


    だから最初から、制約を好きになる必要はないと思います。


    まずは、


    その制約の中で、一歩だけやってみる。


    ハンセンさんも、震えがなくなってから芸術を再開したのではありません。


    震えのある自分のまま、新しい表現を探し始めました。


    そして、むしろ、さまざまな制約をあえて、自分に課すことによって、新しいイノベーションを起こそうとさえしています


    制約がイノベーションを起こす種なのであれば、どんどん制約をつけることによって、もっと面白いイノベーションが起きるのではないかと、楽しむ方向へ持っていく


    また、もう一つ大切なのは、


    一人で制約と闘わないこと


    ではないでしょうか。


    自分では「できない」と思っていることを、


    仲間が、


    「こんなやり方もあるんじゃない?」


    と見せてくれることがあります。


    自分には欠点にしか見えないものを、


    誰かが、新しい可能性として見つけてくれることもあります。


    制約を楽しむとは、


    制約そのものを無理に喜ぶことではなく、


    制約の中にも残されている可能性を、仲間と一緒に探し続けること


    さらには、あえて制約をつけることで、新しいイノベーションの種を見つけにいくこと


    なのかもしれません。


    人生には、これからも制約がやってきます。


    できなくなることもある。


    失うものもある。


    思い通りにならないこともある。


    そんな時、


    「なぜ、こんな制約があるんだ」


    だけではなく、


    「この制約があるからこそ、何が生まれるだろう?」


    と問い直してみる。


    制約をなくしてから始めるのではなく、


    制約があるからこそ始まる創造もある。


    「今を楽しもう」ではなく、


    「制約を楽しもう」


    そんな世界をつくっていきたいなあと思いました。


    一言ていうと

    制約を楽しもうノベーション。


    そんな話をしています


    参考:Phil Hansen, “Embrace the shake,” TED2013, February 2013

    TED公式「Phil Hansen: Embrace the shake」https://www.ted.com/talks/phil_hansen_embrace_the_shake


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