連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

By RKBラジオ『博多さっぱそうらん記』FictionScience Fiction
Download on the App Store

連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』 episodes

  • 博多駅沈没!②かなめが一喝「どげんでんよかけん、協力して博多駅ば沈没から守らんね!」

    「見て! 驛の上!」驛の上空から、怨念の光の束が一本の柱となって立ち昇り、一直線に南東の方角へと向かった。誘導ミサイルの動きを見るようだ。途端に、地震のような揺れが襲った。何が起こったのかと、見通しのいい大博通りに出て、その理由がわかった。「博多駅が、沈みよる!」巨大な駅ビルが、まるでタイタニック号のように、ゆっくりと地下に沈み込もうとしている。「驛長は、博多市の怨念ば集めて、博多市ば実現するって言いよったとに……」カタハネたちはようやく、驛長にいいように利用されていたことがわかったようだ。「お前たちが、驛長やらに騙されて、博多市の怨念ば山んごと集めたけん、こげなことになったとやろうが!」ハンの者たちが、カタハネたちに詰め寄った。互いの羽を激しく震わせて威嚇しあう。一触即発だ。「あんたたち、いい加減にせんねーっ!」「今は博多がひっちゃんがっちゃんになるかもしれん瀬戸際におるとよ!誰が悪かとか、どげんでんよかけん、協力して博多駅ば沈没から守らんね!」

    5 min
  • 博多駅沈没!①なぜ?昔の博多驛が出現、驛長はカタハネに苦言

    何も無かった公園に、突如として建物が出現していた。煉瓦造りの、重厚な建築物だ。「これは……、昔ここにあった博多驛じゃないか?」博がつぶやいて、そんなはずはないというように首を振った。新しい博多駅ができて、この場所にあった昔の博多驛は取り壊され、姿を消したはずなのに……。怨念の瘴気が渦巻く中から、一人の人物の姿が浮かび上がった。「カタハネたちよ……」「まったく、お前たちが愚図でのろまなせいで、怨念を充分に集めるまでに、長い時間がかかってしまった」「驛長、そげな……」カタハネたちは、愕然とした表情だ。ピンと張っていた背中の羽が、見る間に垂れ下がってゆく。「もう、お前たちに用はない。ハンの者たちと共に、そこで指をくわえて見ているがいい」驛長はそう言い捨てると、驛舎の中へと消えてしまった。

    6 min
  • どんたくの「とおりもん」㉙博多市の怨念はどこへ?博多の裏の羽片世界へ

    本来ならば、どんたくはとっくに終了の時間だった。どんたくの間だけの「羽片世界」と現実の博多とが交わる時間を、枡形門による博多部封鎖で引き延ばしていたのだ。枡形門が消え、現実世界の秩序の中に戻ったようだ。「おばあちゃん!」「ああ、かなめね。もう、疲れっしもうた。半日くらいぶっ通しで踊ったごたる気のするばい」どんたくの無限パレードに巻き込まれた人たちが、次々に正気を取り戻していった。「博君、これで万事、一件落着なんかな?」「表の世界の秩序は戻ったみたいだが、裏の羽片世界はまだきっと……」――博とかなめ、良くやってくれた――マイヅル様の声だ。――現実世界と羽片世界の融合は収まったばってん、羽片世界での事態は今も進行中たい。二人とも、こっちに来てもらうばい――目の前に、半透明の姿の傘鉾が浮かび上がった。博と共に、傘鉾の中の闇に飛び込む。次の瞬間、傘のまま、空中に浮かび上がったような浮遊感があった。――さあ、着いたばい――「ここは……?」傘鉾を出た先は、旧博多驛のあった公園の前だった。

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」㉘「通りゃんせ」の合唱で福岡大仏に力を与えろ!

    「もう! 天神様やったら、通りゃんせ、通りゃんせで、するっと通してくれたらいいとに!」「通りゃんせ……? きっとそれだ、かなめ!」「それじゃあ、福岡側から聞こえて来る通りゃんせの音楽が、福岡大仏に力ば与えたっていうことね?」それだったら、もっと近くで聞かせてあげればいい。幸い、福岡大仏のすぐ後ろには、どんたくのアナウンス席があって、マイクとスピーカーが完備されている。司会者や関係者もどんたくに巻き込まれて、席はもぬけの殻だ。かなめはマイクを握った。「通ぉ~りゃんせぇ 通ぉ~りゃんせぇ~こぉ~こは どぉ~この 細道じゃぁ~」「通りゃんせパワー」で、福岡大仏の力が強まった。押され負けた博多大仏が、枡形門の扉に背中を押しつけられた。少しずつ、門が押し広げられてゆく。隙間から吹き込んだ「風」が、怨念の瘴気を吹き飛ばし、周囲の人々が、「博多市の怨念」の影響から脱する。そうして、一人、また一人と、かなめと声を合わせて歌いだす。歌声が広がるにつれて、福岡大仏は、少しずつ、力を増していった。「門が、開いた!」

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」㉗博多大仏と福岡大仏、強いのはどっち?

    ハンの者たちが、片方だけの羽を、大仏に向けて動かした。巻き起こした「福岡の気」をはらんだ風が、福岡大仏の魂を呼び覚ましたようだ。半眼の目が、ゆっくりと見開かれた。「福岡大仏さん、手伝ってもらえるね?」木製の大仏様は、巨木が軋むような音を立てて立ち上がり、ゆっくり歩きだした。門の前で待ち構えていた博多大仏と、福岡大仏ががっぷり四つに組む。巨大な木と金属がぶつかり合った衝撃音が響き渡り、那珂川を渡る橋がぐらぐらと揺れた。福岡大仏が苦戦している。喉輪で追い詰められ、橋の欄干から突き落とされそうになって、何とか持ち直す。相撲の土俵際のような対戦を見守るうちに、おかしな事に気付いた。「なんか、一定の時間だけ、福岡大仏が押しとる気がせん?」

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」㉖藤の花に力を借りて、透明な壁を突き破れ!

    「舞鶴公園では今、藤の花が満開のはずだ。その花を風に乗せてここまで運ぶことができたなら、藤巴の家紋も力を得られるんじゃないかな」風に乗って、藤の花がひらひらと舞い降りてきた。マイヅル様の「力」の導きで、藤の花が、花壇の上に降り注いだ。藤の花に覆われ、名実共に「藤巴」となった花壇は、かなめにもわかるほどに光を増して行った。「行こう、かなめ。早いほうがいい」博に促され、二人でまっすぐ、であい橋に向かった。であい橋の向こうでは、ハンの者たちが封鎖に必死に槍を突き立て、破ろうとしていた。かなめは博と手を携えて、槍の穂先に向けた。藤巴の印に集まった力が、かなめと博の手を通じて、槍を引っ張る。槍が、透明な壁に少しずつめり込んでいった。ハンの者たちの押す力に、花壇の引っ張る力が助力し、少しずつ、槍が押し込まれてゆく。そして、ある瞬間、槍が封鎖を突き抜けた。「ああ、かなめさん。今回もあんたが助けてくれたとか!」「話は後だ! 橋の上の枡形門を、博多大仏を復活させて守りを固めている。対抗できるのは、福岡大仏だけだ」「わ……わかった。とにかく、東長寺に向かうばい!」

    6 min
  • どんたくの「とおりもん」㉒博多駅前陥没事故の真相が、この羽片世界にあったなんて…

    「そもそも、あの陥没事故も、驛長が今の博多駅に怨念ばぶつけようとして、起こったことやけんな」「陥没事故は、本当は博多駅ば狙っとったってこと?」陥没事故の謎。その真相がこの羽片世界にあっただなんて、解明されるはずもなかった。「悠長に話しよる場合じゃなかばい。あの陥没事故で博多駅への攻撃が失敗してから、驛長は今までにも増して精力的に、怨念ば集めるごとなったとたい。このどんたくが、驛長の怨念集めの総仕上げになるはずたい。早よ阻止せんと、博多市の怨念が、どんどん膨れ上がってしまうばい」マイヅル様の声が、焦りでうわずっている。「それだけじゃなかよ。このままパレードば続けたら、みんなどげんかなってしまうよ!」怨念に突き動かされ、人々は食事も休憩もとらずに歩き続けているのだ。パレードには、疲れ切った表情で踊るおばあちゃんが!

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」㉕めぇのはまから雨が降る…そして博はあることに気づいた

    かなめは冷泉公園に向けて走った。工事現場の看板の前だ。「ほら、この写真ば見て。ここにあった噴水と花壇、黒田藩の藤巴の家紋に、似とると思わん?」「確かに、写真は藤巴の紋に良く似てるけど、もう工事で花壇は撤去されてるみたいだし、無理じゃないかなぁ……」傘鉾のマイヅル様と共に、壁の中の工事現場に入り込んだ。――私に残った力で、この場所だけば、一年前に戻してみるばい――傘鉾の回転が速まると共に、地面の下から、一年前までここにあった、藤巴の紋の形の花壇の姿が浮かび上がった。だが、封鎖が破られた様子はなく、相変わらずシュプレヒコールが続いている。――今の私の力じゃ、これが精一杯たい。この藤巴の刻印自体に力ば発揮させんと、槍ば引き寄せられんごたるな――万策尽きてしまった。おばあちゃんは今も、抗うこともできずに踊り続けているのだろう。かなめは思わず、涙を流した。「かなめ……」「な、何ね、泣きよるっちゃなかよ。めぇのはまから雨が降ってきただけたい」

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」㉔黒田藩の力を借りるには?かなめは冷泉公園に走った

    「この橋は、福博であい橋。福岡と博多が出会う場所だから、そう命名されたんだ。この橋には、福博の象徴として、博多側には『三人芸子の博多人形』の像が、そして福岡側には、『黒田節』の杯と槍をモチーフにしたオブジェがおいてある」「あの槍で、ハンの門たちが力を合わせて押したら、結界を一部分だけでも破れるかもしれないぞ」ハンの者たちは、「槍」のオブジェを取り外して、封鎖に向けて突き立てている。何度も試みたが、封鎖の透明な壁は、槍をはじき返している。「黒田節の槍ば引っ張るとやったら、黒田藩の力があればいいっちゃない?」「それは……、そうかもしれないけど、都合良く、そんなものがこの博多部にあるわけが……」「博君、マイヅル様も、こっちに来て!」かなめは冷泉公園に向けて走った。

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」㉓博多大仏に対抗するには福岡大仏を目覚めさせて!

    怨念に突き動かされ、人々は食事も休憩もとらずに歩き続けているのだ。パレードには、疲れ切った表情で踊るおばあちゃんが!「おばあちゃんば救わんと!」かなめが叫んだ。「ねえ、博君。おばあちゃんば助けるために、協力してくれんね」まずはこの無限パレードを終わらせるために、共同戦線を張ることになった。博と手をつなぐ。これで、傘鉾の中に入らないでも、マイヅル様の声が心に響いてくる。「早く枡形門ば開けて、封鎖ば解かんと!」「そうだ! 博多大仏が門を塞いどるとやったら、福岡大仏さんが対抗すればよかやないね!」――福岡大仏ば動かすには、ハンの者たちの力が必要たい――「でも、ハンの者は博多の包囲の外におるとでしょう?」――封鎖ば、一時的でもよかけん、少しだけ破れたら、そこからハンの者たちば中に入れることができろうばってん……「早よせんね! 福岡大仏とハンの者が出逢えるごつせんと……」かなめの言葉に、博が何かをひらめいたように顔を上げた。「出逢える……出逢える……! そうだ、あの場所の、あれが使えるかもしれない! こっちだ、かなめ!」

    5 min

About 連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

From the publisher's feed

2021年3月から9月までRKBラジオで放送した連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』を、2022年3月までの期間限定で配信します。福岡在住の作家・三崎亜記の新作SF小説を福岡出身の声優・加隈亜衣、俳優・松重豊を迎えRKBアナウンサーが中心となって朗読します。1890年の「市制施行時の名前をめぐる騒動(福岡市か博多市か)」と、2016年の「博多駅前陥没事故」から着想を得て、「博多を名付ける勢力が…