連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

By RKBラジオ『博多さっぱそうらん記』FictionScience Fiction
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連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』 episodes

  • 博多駅沈没!㉒「どんな咎めも受ける」驛長に対し、マイヅル様が下した決断は?

    「驛長……。あんたはもう、この場所にはおられんばい」「わかっています。どんな咎めも受けます」「マイヅル様、驛長さんは怨念に操られとったとよ。咎めやら……」かなめが取り成そうとしたが、マイヅル様は頑固に首を振った。「うんにゃ。たとえ操られとったにせよ、博多の街ば壊滅させようとした罪は重かばい。驛長という存在は、私が今日限りで消し去ってしまうばい」「マイヅル様、そんな!」かなめが叫ぶと、マイヅル様は、への字の唇を無理に持ち上げるようにして、微笑みを浮かべた。「大変やのう。これからあんたが、新しか博多駅ば守ってやらんといかんとやけんな」思いがけない言葉に、駅長が驚いた顔を上げた。「駅ビルに祀られとる鉄道神社は、新駅ビル誕生を機に、住吉神社から分社されたもんやけん、歴史も浅かし、力も弱かとたい。驛長……。あんたが新たに、この鉄道神社の守り神になるこつで、博多駅ば守る力も強まって、怨念ば寄せ付けることもなくなるやろうたい」

    5 min
  • 博多駅沈没!㉑博が考える、博多市の怨念を消え去るための秘策とは?

    人間たちが、「博多駅を守る結界」など知りもせずに、柱を移動してしまったことから、駅を守る「三角形」が崩れてしまったのだ。「その影響ば、一番大きく受けたとが驛長ですたい。怨念が、驛長ば暴走させてしまったとですたい」「そいやったら、悪かとは驛長じゃなくって、博多市の怨念っちゅうこつか?」フクハクたちが、怒りの持って行き所を失ったように顔を見合わせた。「ちょっと待って! 博多市の怨念も、なりたくて怨念になりよるわけじゃなかとよ」「な、なんね、かなめさん、突然?」かなめと博は、明治の頃に時を遡って博多大水道を辿ったことで判明した過去について説明した。初代博多驛の時計が地下に封じられ、そのせいで「怨念」の時が止まってしまい、福博の今の発展を知らぬまま、怨念を放ち続けているのだと。「と言うことは、その時計ばどげんかせん限り、怨念はこれからも、生み出され続けるというこつか……」「いえ、マイヅル様。逆にこう考えましょう。その時計が再び動き出せば、怨念は消え去るんだって」「そりゃあ、そうばってん……。博さん、何か考えがあるとな?」「マイヅル様、怨念の行方については、僕に任せてもらえますか?」どうやら博には、怨念を消し去るための秘策があるようだ。

    6 min
  • 博多駅沈没!⑳柱を動かしたことで結界が破られ「博多市の怨念」が驛長を暴走させた!?

    「ホームの柱が保存されていた住吉神社、駅舎の柱が保存された山王公園の日吉神社、そして、この旧博多驛。この3つで囲まれた三角形のなかに、今の博多駅は、すっぽりと包まれとるとです」言われてみれば、確かにその三ヶ所は博多駅を中心に、三方向、同じくらいの距離にある。「駅が新しか場所にできたら、怨念の悪意が新しか駅に向かうとは目に見えとりました。そいけん、その三角形で博多駅ば守って、怨念ば寄せつけんやったとです」つまり、その三角形が「結界」の役割を果たしていたのだ。「そいばってん、人間たちが、私が保管していた柱を勝手に移動したことから、この騒動が始まったとですたい」人間たちが、「博多駅を守る結界」など知りもせずに、柱を移動してしまったことから、駅を守る「三角形」が崩れてしまったのだ。「その影響ば、一番大きく受けたとが驛長ですたい。怨念が、驛長ば暴走させてしまったとですたい」「驛長も、博多市の怨念の被害者の一人だったということか……」博が、溜め息交じりにつぶやいた。

    5 min
  • 博多駅沈没!⑲住吉神社の守り神「住吉さん」が真実を語り始めた

    「私の心に、いつのまにか怨念が入り込んでいた……。そして私の心を鎧のように囲って、操るようになってしまったのです」それが本当なら、驛長は、いったいなぜ、操られたのだろうか。「私の話ば、聞いてもらえんですかな」一人の人物が、驛長の横に立った。ひょろりと背が高く、七福神の福禄寿を思わせる、仙人風の白髭を長く伸ばした老人だった。「あなたは、住吉さん……?」マイヅル様がつぶやいた。どうやらこの人物が、住吉神社の守り神の「住吉さん」のようだ。「マイヅル様、そしてフクハクたちも……。どうか、驛長を責めんどってくれんですか」「住吉さん……。あんたも、驛長におどされるごつして、博多駅沈没計画に加わったとやなかとな? どうして驛長ばかばうとな?」「許してくれんですか……。驛長も、そして私も、無意識のうちに、怨念に操られとったとですたい」「逆でしょうもん? 驛長が怨念ば操りよったとでしょうが?」住吉さんが首を振った。「原因は、人間たちが、今の博多駅ば守るための均衡ば破ってしもうたけんですたい」

    5 min
  • 博多駅沈没!⑱博多驛は崩れ去り、驛長は正気を取り戻した

    驛長に突き刺さった逆矢は、驛長の体を貫いて飛び去っていった。本来の「矢」の収められる、住吉神社に戻ってゆくようだ。逆矢を返された驛長は、力を失ってその場にうずくまった。博多市の怨念によって守られていた博多驛だ。その守りの怨念を失えば、驛はもう、砂上の楼閣のようなものだ。偉容を誇っていた驛は、砂のようにグズグズと崩れ去り、そして消滅した。そこは、ただの「公園」に戻っていた。怨念が作り上げた旧博多驛はすべて消え去り、ただ驛長だけが残されていた。「驛長……。たいへんなことば、しでかしてくれたな」さすがにマイヅル様の声も、怒気を含んでいた。十年近くの間、マイヅル様は力を奪われ、博多の街を危機にさらしていたのだから。驛長は肩を落とし、自らのやったことが信じられないとでもいうかのように、両手を見つめていた。「私は……、今まで、何ということを……」「なんば言いよるとか、今までさんざん、怨念ば使って、悪事ば働いてきたくせに」フクハクたちが、驛長につかみかからんばかりに詰め寄った。その怒りは当然だ。だが、かなめはどうしても、驛長の態度が、騙そうとしているようには思えなかった。「ちょっと待って、フクハクたち、驛長さんの話ば聞いてみらんね」

    5 min
  • 博多駅沈没!⑰博多驛の封鎖を破り、マイヅル様が驛長に反撃を加える!

    旧博多驛の上空で、フクハクたちは抱えていたホームの柱を離した。三本の柱は、引き寄せられるように、ホームに向けて落下していった。矢のように進む柱が、怨念の透明な壁を突き破った。壁に亀裂が入り、そこからひび割れは放射状に広がっていった。「かなめと博よ、最後に、封鎖ば破ってくれんね。二人のつながりが本物やったら、できるはずたい」マイヅル様が、二人を試すように言った。かなめは博と手をつなぎ、その手を、封鎖の壁に向けた。亀裂が、驛を覆うドームいっぱいに広がり、次の瞬間、粉々になって割れた。「封鎖が、解けるぞ!」博多驛が、防御のない無防備な姿をさらした。マイヅル様は気合いを込めるように口を真一文字に結び、逆矢に手をかけた。くぐもったうめき声を発しながら、胸に刺さった矢を、少しずつ体から抜き出す。「驛長、逆矢ば、お返しするばい」マイヅル様は弓に逆矢をつがえて引き絞った。驛長に狙いを定め、矢を放つ。矢は驛長に向けてまっすぐに飛び、驛長の胸に突き刺さった。

    5 min
  • 博多駅沈没!⑯ハンの者とカタハネが合体!フクハクとなって空へと舞い上がる

    カタハネが、今までずっとつけていた、にわかのお面をはずした。「対」になって立ったカタハネとハンの者は、まったく同じ顔をしていた。対になったカタハネとハンの者の輪郭が、次第にぼやけてきた。そうして、二つの身体が重なり合い、ついには完全に一体となった。完全体の「フクハク」となったその背中には、一対の羽が完成していた。右側が「博多部」、そして左側が「福岡部」の町の形。いびつな羽ではあるが、フクハクたちは、ひさしぶりに両方揃った羽を、勇ましく揺らした。「そんなら、行くばい」そう言って、羽を大きくはためかせて、空へと舞い上がった。その姿は白く光り輝き、ほれぼれとするほど美しかった。すべてのフクハクが空を飛び、駅ビルの屋上に舞い降りた。三本の「ホームの柱」を抱えて飛び立つ。「私らも旧博多驛さん行くばい、驛長と決着ばつけんなならん」マイヅル様と共に、決戦の地へと向かった。

    6 min
  • 博多駅沈没!⑮雷神を封じた博とかなめ。今度はカタハネとハンの者の番たい!

    「たどり着いたぞ!」傘鉾を閉じる。現代に戻ったそこはまさに、鏡天満宮のすぐそばだった。二人で神社の社に駆け寄った。扉を開けて、祀ってある古い鏡を手にする。「よし、このまま櫛田神社まで行って、雷神に光をあてよう」雷が、二人を直撃する。だが、マイヅル様の力が分厚いバリアーとなって跳ね返し、雷は二人に何の痛痒も与えなかった。二人はマイヅル様の待つ櫛田神社に戻った。「博とかなめよ。心が通じ合ったごたるな」マイヅル様が、二人の姿に大きく頷いた。手を携えて、鏡を空へと向ける。マイヅル様の力を借りて、光が夜空にほとばしった。「見て、博君、雲が……」雷を呼んだ雲が薄れてゆく。やがて、星の瞬く夜空が現れた。「さあ、カタハネとハンの者たち。今度は、あんたたちの番ばい!」かなめが発破をかける。カタハネとハンの者は、その「対」ごとに頷き合った。カタハネが、今までずっとつけていた、にわかのお面をはずした。「あんたたち……」

    5 min
  • 博多駅沈没!⑭福博の発展した姿を、止まった時計に見せてやれ!

    今の福博の町の発展も融和も知らず、百年以上前の「怨念」を抱え込まされた、「止まった時計」が、怨念の発生源だったとは……。「博君、今の福博の発展した姿ば、心に思い浮かべて」「止まった時計に見せてやるんだな。わかった」百年以上の時の流れ……。その間に、福博の街には発展と、いくつもの苦難が訪れた。大戦での空襲によって、福博の街は灰燼と化した。それでも福博の人々は希望を失わず、一から街を作り直したのだ。今では博多と福岡は、時に競い合い、時に協力し合う、格好のライバル同志だ。福博の街の発展と融和は、まるで、かなめと博みたいだ。反発しあいつつも、互いの「違う面」があるからこそ、助け合い、互いを認め合うことができるんだ。福博の離反を、自分たち二人の心の離反と結びつき、かなめと博は、怨念とともに、明治からの博多の発展の道を歩き続けた。やがて……。向かう先に、ぼんやりと明かりが見えてきた。博多大水道の、もう一つの出口だった。「たどり着いたぞ!」

    5 min
  • 博多駅沈没!⑬博多市の怨念の発生源は、地中深くに埋められた旧博多驛の…

    「ねえ、博君、怨念に意識を集中して」「え? どういうことだ?」「怨念が、何か伝えてきよるとが、わからん?」二人で目をつぶって、周囲に渦巻く怨念の「伝えるもの」と向き合った。「時計……、止まった時計?」そのイメージは、かなめの心の中に、ありありと浮かんだ。「これは、昔の駅の……改札口みたいだな」博もまた、かなめと同じ光景が見えているようだ。「それじゃあ、訴えかけよるとは、昔の博多驛の改札口にあった時計ってことね?」明治の頃、博多市にするか福岡市にするかで騒動が生まれ、その帰結として生み出されたのが、博多驛であり、博多市の怨念だ。時計は、「時が止まった」時の事を克明に記憶していた。「初代の博多驛は明治の終わりの頃に取り壊された……。その時に、時計は当時の駅長の手によって、駅の地下深くに埋められたんだな。博多驛は、博多市が実現しなかった代償として生み出された……。驛の象徴でもある時計には、驛に込められた『博多市』の悲願が込められてしまったんだ」「それじゃあ、博多市の怨念は、時間が止まったままの時計のせいで、いつまでも発生し続けよるっていうとね?」

    5 min

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2021年3月から9月までRKBラジオで放送した連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』を、2022年3月までの期間限定で配信します。福岡在住の作家・三崎亜記の新作SF小説を福岡出身の声優・加隈亜衣、俳優・松重豊を迎えRKBアナウンサーが中心となって朗読します。1890年の「市制施行時の名前をめぐる騒動(福岡市か博多市か)」と、2016年の「博多駅前陥没事故」から着想を得て、「博多を名付ける勢力が…