連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

By RKBラジオ『博多さっぱそうらん記』FictionScience Fiction
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連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』 episodes

  • どんたくの「とおりもん」㉑マイヅル様は、かなめの命の恩人だった

    マイヅル様は、深い溜め息と共に、憂い声を漏らした。「驛長は、私に直接力ば下すことはできんけんな。そいけん、歩射祭の矢に怨念ば乗せて、矢が放たれる瞬間に、逆矢の力で私に怨念ば向けたとたい。不意打ちやったけん、私は矢の力ばまともに食らってしもうた」「万事休すやった。そいけん、私が姿ば消してしまう最後の瞬間に、あんたたちのつないだ手に、力ば預けることにしたとたい」「どうして、そんな面倒なことを?」博が憤りの声を出す。「あんたたちのどちらか一人に力ば託すことは簡単たい。ばってん、そればしたら、驛長はすぐに気付いて、あんたたちから力ば奪ったはずたい。そいけん、あんたたちが手ばつないだ時だけ力ば発揮できるごつして、あの場ではすぐに手ば離させたとたい」「それやったら、あの博多駅前の陥没事故の時に、私に声ばかけて助けたとも?」「そうたい。私たい。あんたたちの一人でん欠けたら、私は永遠に力ば取り戻せんけんな」だとしたら、マイヅル様は、かなめの命の恩人だった。

    6 min
  • どんたくの「とおりもん」⑳住吉神社と博多駅屋上の三本の柱の関係とは?

    「住吉さんの歩射祭!」博との最初で最後のデートの日、矢が射られた瞬間、つないだ手が燃えるように熱くなって、思わず手を離した。その時、目の前にいた着物姿の人物が、忽然と姿を消してしまったのだ。「そうたい、私と驛長たい。あの日、私は驛長に誘われて、現実世界にひととき身を移し、歩射祭ば見学しよったとたい」「驛長は、あろうことか歩射祭の矢に、逆矢ば仕込んでおったとたい」「だけど、歩射祭にそんな仕掛けをしたら、住吉神社の神様がすぐに気付くんじゃないのかな?」「いや……住吉さんも関わっとる。そうじゃなかったら、逆矢に怨念の力ば満たすことはでけん」「どうして住吉さんは、驛長の言いなりになっとるとですか?」「駅ビルの屋上の、旧博多驛のホームの柱が原因たい」周囲に染まることなく、孤高の姿で立っていた三本の柱だった。「あの柱は、元々、旧博多驛が取り壊されてからずっと、住吉さんに保管されとったとたい。それば、今の博多駅が新しくなる時に奪われたもんやけん、そこから、驛長の復讐がはじまったとたい」

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」⑲9年前のあの日、2人の前にマイヅル様が立っていた!?

    すべての人がパレードに巻き込まれる中、一人の男が、はじき出されたように、呆然とした表情でたたずんでいた。「博君、どうしたと……?」博は混乱した表情で、かなめとのいさかいも忘れたようだ。「俺……、いったいどうしたんだ。かなめと別れた後、いつのまにか驛長と一緒にいて、博多部を封鎖して怨念を集めるお先棒を担がされていたんだ……」「この傘鉾は……?」博はかなめの後ろに立つ、傘鉾を見やった。「あの、声の主たい」かなめは博と共に、傘鉾の中に入った。「かなめと博よ……。お前たちが離ればなれになって九年。ようやく二人して博多に揃ったとに、なして、そげんいがみ合うとか? お前たちば再び結びつけんと、私の力は戻らんとぞ」「何のことだ?再び結びつけるって」「覚えとらんとね。住吉神社の歩射祭たい」博との最初で最後のデートの日、矢が射られた瞬間、つないだ手が燃えるように熱くなって、思わず手を離した。その時、目の前にいた着物姿の人物が、忽然と姿を消してしまったのだ。「それじゃあ、あの時、私たちの目の前に立っとったとって……?」

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」⑱失われたはずの博多大仏が復活。枡形門の扉は閉ざされた

    「な……なんね、この音?」地響きが、ゆっくりと、断続的に続いた。アンパンマンミュージアムの前に特別展示されていた、「ジャイアントだだんだん」の像が動き出して、こちらに向かって来ている。「いや、顔も体つきも、少しずつ変化していきよるばい。あれは……」マイヅル様は、信じられないものを見るように、声を震わせた。「あれは、博多大仏たい!」「ええっ? 博多大仏って、あの、筥崎さんの近くのお寺に、台座だけが残っとる、あれ?」「でも、博多大仏は、戦時中の金属供出で失われたとじゃないと?」「……ヨリシロば使ったとごたるな」マイヅル様は、自らの無力さを嘆くようだった。博多大仏が、枡形門を守るように仁王立ちした。開きかけていた扉は、その力によって、固く閉ざされてしまった。

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」⑰声の主、ついにかなめの前に現れる。その正体は?

    「傘鉾?」どんたくの「祝い松囃子」の行列の中に必ずいる、「傘鉾」だ。傘鉾の布張りがふわりと巻き上がり、かなめを包み込んだ。中は暗闇だった。「ようやっと、話のでけるごとなったな」闇の中で、あの「声」が明瞭に響いた。「あなたは、いったい誰と? いったい何で、私たちばこの騒動に巻き込んだとね?」「私はマイヅル様と呼ばれとる。この福博の街の守り神と思ってもろうたらよかたい」「守り神やったら、この騒動ばなんとかしてよ!」「那珂川の橋のむこうば見らんな」傘鉾の布の隙間から外をうかがい、かなめはあっけに取られた。橋のむこうに巨大な門が出現して、人々の通行をできなくしていたのだから。お城の入口にあるような、立派な門だ。「あの門が閉じて、博多部全体ば封印しとるけん、パレードが福岡側に渡れんで、堂々巡りばしよるとたい」

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」⑯パレードがエンドレス!おばあちゃん、正気に戻って

    「福岡市を、博多市に!」散発的にきこえてきたその声は、次第にまとまりをもち、周囲の人々を巻き込んで、ゆっくりと進みだした。「博多市へ!」のかけ声に釣られたように、観客たちが次々と、集団に吸い込まれてゆく。それどころか、別のどんたく隊まで、「博多市を」とシュプレヒコールを上げるようになってしまったのだ。止める者がいないまま、パレードは際限なく続いた。人々は、「博多市を!」と叫び続けながら、飲まず食わずで何時間も歩き続けている。疲労を顔に表していたが、パレードから逃れられないでいる。そこには、おばあちゃんの姿もあった。「おばあちゃん、正気に戻って!」その時、目の前に「何か」が立ち塞がった。

    6 min
  • どんたくの「とおりもん」⑮「福岡市を、博多市に!」過激派がどんたくのパレードに乱入!?

    「もう、博君の、よかごとせんね」「あ、ああ、わかったよ。す……、好きなようにやってやるさ」虚勢を張ったような上ずった声で言って、博は何度も人にぶつかりながら走り去った。気のせいだろうか。その姿が、青い光に包まれたように見えたのは……。もうすぐおばあちゃんの団体のパレードの時間だ。だけど今は、見物する気にもなれない。人波に背を向けて、部屋に戻ろうとした。その矢先、かなめの耳に、声が飛び込んできた。「福岡市を、博多市に!」「な、何が起こったとですか?」見守る群衆の一人に聞いてみる。「博多市ば推進する過激派が、パレードに乱入したとたい」人混みをかき分けて前に出て、かなめは絶句した。仮装した四十人ほどの集団だった。博多にわかのお面を付け、修験者のような服装に、右側だけの大きくていびつな羽……。「あれって、もしかして、カタハネたち?」カタハネたちは隊列を組んでパレードを先導する。その隊伍の中心にいるのは、古めかしい制服と制帽姿の人物と、もう一人……。「あれは、驛長と……、博君!」

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」⑭九年前の誤解を、博は理解してくれるのだろうか?

    パレードを挟んで道の反対側に、博がいた。博も、かなめの姿を見つけたようだ。パレードの列が途切れ、警備員が道を横断する歩行者を通す。警備員の笛に追い立てられるように、二人はリバレイン側に渡った。人ごみを避けて、博多川添いを歩き続ける。リバレイン裏手の鏡天満宮の前で、ようやく二人きりになって向き合った。止まった時計を動かそう。そう思って、かなめから口を開いた。「九年前……、あの時のことから、話さんといかんと思うと」「あの時、私は本当に博君の告白にオーケーしたとよ。でも、あの矢が、自分に向けて逆さまに飛んできたごたる気がして、思わず手ば離してしまったと……」かなめは目をつぶって、博の返事を待っていた。「……素直に謝るかと思ったら、まだそんな言い訳をするつもりなのか」目を開けると、博は表情を一変させ、氷のように冷たいまなざしを、かなめに向けていた。

    5 min
  • どんたくの「とおりもん」⑬「博君は、博多リバレインの前」おばあちゃんは、かなめの背中を押した

    「おばあちゃん、どこにおるとぉ?」かなめは冷泉公園の中を歩き回っていた。川端通り商店街に隣接する公園は、パレードの出発点に近いので、各団体の集合場所になっていた。色とりどりの仮装や着物姿の人たちでごった返し、おばあちゃんを捜すどころじゃなかった。「ああ、かなめ、ここよ、ここよ!」スマホを片手に手を振るおばあちゃんを、ようやく発見した。「今年は工事が入って公園が狭もうなっとるけん、往生したたい」公園の北東側でNTTのケーブル工事が始まっていて、周囲は高い壁で覆われている。「かなめ。博君は、博多リバレインの前で見物しよるげなよ」おばあちゃんが、内緒の儲け話でもするみたいに耳打ちした。「ほら、リバレインの向こうには、鏡天満宮もあるとやけん、鏡見てお化粧直して、とおりゃんせ、とおりゃんせで、行ってこんね」そう言って、おばあちゃんは、かなめの背中を押した。


    5 min
  • どんたくの「とおりもん」⑫櫛田神社の雷神様がおらんごとなっとる!

    博多どんたく当日。かなめは浮かない気分のまま部屋にいたが、しばらく迷って腰を上げた。おばあちゃんがパレードに参加するので、それくらいは見ておかないと。かなめは、参拝客で賑わう櫛田神社に足を向けてみた。お参りを終えて本殿を見上げ、不思議な気分になった。何かが、足りない……。「雷神様が、おらんごとなっとる……」本殿上の破風には、木彫りの風神雷神が置かれていた。雷神が博多の街に騒動を起こそうと風神を誘っているが、風神はそれに逆らってあっかんべえをしているのだと、博がうんちくを語っていた。それなのに今日は、雷神が姿を消していた。修理でもしているのだろうか? 風神はあっかんべえをする相手を失って、なんだか悲しげに見える。

    5 min

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2021年3月から9月までRKBラジオで放送した連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』を、2022年3月までの期間限定で配信します。福岡在住の作家・三崎亜記の新作SF小説を福岡出身の声優・加隈亜衣、俳優・松重豊を迎えRKBアナウンサーが中心となって朗読します。1890年の「市制施行時の名前をめぐる騒動(福岡市か博多市か)」と、2016年の「博多駅前陥没事故」から着想を得て、「博多を名付ける勢力が…