マイヅル様は、深い溜め息と共に、憂い声を漏らした。「驛長は、私に直接力ば下すことはできんけんな。そいけん、歩射祭の矢に怨念ば乗せて、矢が放たれる瞬間に、逆矢の力で私に怨念ば向けたとたい。不意打ちやったけん、私は矢の力ばまともに食らってしもうた」「万事休すやった。そいけん、私が姿ば消してしまう最後の瞬間に、あんたたちのつないだ手に、力ば預けることにしたとたい」「どうして、そんな面倒なことを?」博が憤りの声を出す。「あんたたちのどちらか一人に力ば託すことは簡単たい。ばってん、そればしたら、驛長はすぐに気付いて、あんたたちから力ば奪ったはずたい。そいけん、あんたたちが手ばつないだ時だけ力ば発揮できるごつして、あの場ではすぐに手ば離させたとたい」「それやったら、あの博多駅前の陥没事故の時に、私に声ばかけて助けたとも?」「そうたい。私たい。あんたたちの一人でん欠けたら、私は永遠に力ば取り戻せんけんな」だとしたら、マイヅル様は、かなめの命の恩人だった。