連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』

By RKBラジオ『博多さっぱそうらん記』FictionScience Fiction
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連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』 episodes

  • 博多駅沈没!⑫「博多嫌い」の博、9年ぶりに心の葛藤を告白

    「俺も、正直にならなくっちゃな……」博はそう言って、つないだ手に力をこめた。「中学生の頃、親の転勤で博多に住むことになって、自分なりに博多に溶け込もうと努力してきたんだ」「必死だったよ。過ごしてきた年月は、どうあがいても、追いつくことはできないしな。今思えば、覆せない差を、博多の知識っていう鎧をまとうことで、克服しようとしていたんだろうな」「そうやったとたいね……」つたない博多弁で、友人たちに馴染んでいたように見えていた博。心の内の葛藤を、かなめはどれだけわかってあげていただろうか。「かなめが手を振りほどいたのも、何か理由があるんだろうって、薄々は気付いていたんだ。だけど、それを深く考えると、自分の六年間が否定されてしまう気がして……。だから逆に、かなめも含めて博多すべてを否定して、嫌悪することで、心の均衡を保とうとしたんだと思う」そうして博の、博多の知識は人一倍持っているのに「博多嫌い」という、複雑な性格ができあがってしまったのだろう。九年前で止まったままだった時計が、動き出した気がした。

    5 min
  • 博多駅沈没!⑪仲直りしたのに、今度は目的地にたどり着かない!

    「戦う相手のことまで考えてたら、こっちが自滅しちまうぞ」「でも、敵のことばよくわかっとかんなら、作戦の立てようもなかやないね」「足りない頭で作戦立てようったって、ろくな案は浮かばないだろう。いいから黙ってついて来いよ」売り言葉に買い言葉で、二人ともヒートアップしてきた。「なんねーっ!」「なんだよ!」傘鉾の中で睨み合う。だが、睨み合いはすぐに、以外な事態で幕を閉じた。「傘鉾が、どんどん縮んできよる!」「そうか……。俺たちは、信頼して手を握りあっているからこそ、マイヅル様の力を借りることができるんだ」深呼吸して、気分を落ち着かせる。二人は改めてつないだ手に力を込めた。マイヅル様から託された力が、つないだ手から、二人の身体に満ちた。「よし、これで、怨念なんか寄せ付けないぞ」博が意気込んだ。やっぱり、怨念は敵でしかないのだろうか?わだかまりを抱えたまま、博と共に歩き続ける。「おかしいな……。そろそろ、曲がり角にたどり着いてもいい頃なのにな……」「もう、一時間は歩きよるごたる気がするとに……」「もしかすると、怨念に、同じ場所ば堂々巡りさせられとるとかもしれんね」「そんな馬鹿な……」

    6 min
  • 博多駅沈没!⑩博多市の怨念は敵じゃない?かなめの話に博が反発して…

    「ねえ、博君。どうして博多市の怨念は、いつまでも発生し続けるとやか?」「そりゃあ、博多市が実現しなかったからに決まってるだろう?」「でも、もう明治の頃から百年以上が経っとるとよ? 今は福博の争いもなくなって、分け隔て無く街は発展しとるとに、どうしていつまでも、怨念が生み出されるとやか?」「そう言われたら、そうだな……」そのうち、水道の中の水深は浅くなり、舟が底をこすりだした。博と共に舟を下り、膝近くまで水に没しながら、先へ進む。先を急ごうとする博だったが、かなめは、何かを感じて立ち止まった。「ねえ博君、博多市の怨念ば、敵って思ったらいかんよ」「はぁ? だって、博多市の怨念は、福岡市をむちゃくちゃにしようとしてる、テロ組織みたいなもんじゃないか」「ばってん……、立場も考え方も違うけど、怨念もずっと、博多の街ば守ろうとしよるっちゃない?」博はかなめの言葉を、鼻で嗤うようだった。「いいから黙ってついて来いよ」「なんねーっ!」「なんだよ!」傘鉾の中で睨み合う。だが、睨み合いはすぐに、以外な事態で幕を閉じた。「傘鉾が、どんどん縮んできよる!」

    5 min
  • 博多駅沈没!⑨明治時代にタイムスリップ!博多の地下を船で進む

    「博君、博多大水道って、どこば流れとったと?」「片方の出口は、博多川の、西門橋の少し上流のあたりだな」「それで……、もう一つの出口は?」そう尋ねると、博はかなめを見つめ、にやりと笑った。「博多リバレインの真下だ」「それってつまり、鏡天満宮のすぐそばってことやんね!」マイヅル様に傘鉾を借りて、二人は承天寺に向けて走った。承天寺の境内を抜けて、御笠川の岸に降りる。「よし、傘鉾を開くぞ」傘鉾を開いて、中に入る。博と手をつなぐと、マイヅル様の力が伝わってきた。布張りの隙間から、外の世界を見渡す。「これって……」さっきまであったビルやマンションは姿を消し、周囲は木造の住宅ばかりになっていた。「これが、明治の頃の博多の街なんだな」川岸には、木舟が幾艘も舫われていた。そのうちの一艘を拝借し、川を下る。やがて、川の側面に、幅二メートルほどのトンネル状の空間が、口を広げた。「あれが博多大水道の入口だ」

    5 min
  • 博多駅沈没!⑧鏡天満宮に近づくために、明治時代の暗渠を進め!

    「道真公の力のこもった鏡天満宮の鏡の光ばあてたら、雷神の力ば封じることができるっちゃない?」博と共に、博多リバレインの裏手の、鏡天満宮に向けて駆け出す。だが、百メートルも進めなかった。雷が、行く手を阻むように間近に落下する。危なっかしくて、とてもじゃないが前に進めない。いったいどうやって近づけば? 焦っていると何も思い浮かばない。かなめは無い頭を絞って、神社の境内をうろうろと歩き回った。「う~ん、姿ば隠して近づく方法はなかかねぇ……」「姿を隠して……。かなめ、それだ!」平らな一枚岩が池の上に渡されていて、かなめはその上に立っていた。博は、その岩を指さしていた。「かなめが今立っている一枚岩は、昔博多の町にあった、博多大水道を塞ぐための石蓋だったんだ」「ばってん……、そんな暗渠なんて、今の時代まで残ってるわけなかろうもん。地下鉄とか下水道工事で埋められとるっちゃない?」だが、博には何か考えがあるようだ。「マイヅル様、さっき冷泉公園でやったみたいに、傘鉾の周囲だけを、明治の頃に戻すことはできるんだろう?」マイヅル様の傘鉾を借りて、周囲だけを明治の頃に戻し、昔の暗渠の中を隠れ進む作戦のようだ。

    5 min
  • 博多駅沈没!⑦櫛田神社の雷神の悪事は、道真公の力で抑えられる?

    駅ビル上空に暗く湧き上がった黒雲から、突然、雷が夜空を貫いた。雷は、ジグザグに光を落としながら、柱を持ち上げるフクハクたちを襲う。「この雷は、怨念の力だけじゃないのか?」博は、空を見透かすように見上げた。分厚い群雲の上で、誰かが、驛長の悪だくみに助太刀しているのだろうか。「雷……、悪だくみ……。そうたい! 博君。風神・雷神!」そう言われて、博もはっとしたように、空の雷を見上げた。「そうか! 博多に騒動を起こそうとしていた雷神が、驛長の甘言につられて、悪だくみに加担しているってことか」「雷神様の元締めと言ったら、道真公なんだけどな……」博が空を見上げてつぶやく。「菅原道真公やったら、雷神様ば抑えられると?」「道真公、道真公……。博多の町は、都から左遷された道真公が船で降り立った地だけに、道真公ゆかりの地がたくさんあるんだ。鏡天満宮は、やつれた姿を鏡に映した場所だし、あとは……」博のつぶやきを聞いて、かなめはひらめいた。「博君、鏡天満宮って、今も鏡が祀られとると?」

    5 min
  • 博多駅沈没!⑥博多駅屋上のホームの柱を運ぼうとするが…「あっ!危ない!」

    福岡大仏は、穏やかな表情でかなめたちを見下ろすと、駅ビルを呑み込む泥濘の中に足を踏み出した。カタハネやハンの者と共に、福岡大仏の背中に乗って、泥濘の「海」を渡る。駅ビルは三階まではすでに泥濘の中に沈み込み、かなめたちは、四階の窓にしがみついた。傾いた駅ビルの中を、階段を使って駆け昇る。屋上に置かれた旧博多驛のホームの柱は、支えるものを失った中途半端な姿のままだ。カタハネとハンの者たちが、柱の固定を外す。横倒しにした柱の右側にカタハネが、左側にハンの者が、それぞれ五体ずつ立ち、柱を肩に担いだ。そうして、それぞれの羽をゆっくりと動かし始めた。「よし、柱ば運ぶばい」柱が夜空へと舞い上がった。「あっ! 危ない!」駅ビル上空に暗く湧き上がった黒雲から、突然、雷が夜空を貫いた。雷は、ジグザグに光を落としながら、柱を持ち上げるフクハクたちを襲う。

    6 min
  • 博多駅沈没!⑤博多駅屋上にある、あの三本の柱で結界を破れ!

    「あそこに、怨念が集まっとるよ!」「あれは、ホームの柱じゃないか」確かに、三本の柱だけが存在せず、それを補うように、怨念の光がひときわ強く渦巻いて、ホームの屋根を支えていた。「あれって、博多駅ビルの屋上にある、三本の柱ってことやか?」だとしたら……。「あの、駅ビル屋上の三本の柱をここに持ってくれば、驛と柱が互いに引き合って、結界を破ることができるかもしれないな」カタハネとハンの者と共に、博多駅に向かった。だが、駅ビルに近づくことはできなかった。博多駅の周囲は、ぐずぐずと大地が崩れて泥濘の海と化し、駅ビルはゆっくりと沈み込もうとしていたのだ。「これじゃあ、駅に近づけんよ!」その時、二人を呼ぶ存在を感じた。それは……。「福岡大仏さん、助けてくれると?」福岡大仏は、穏やかな表情でかなめたちを見下ろすと、駅ビルを呑み込む泥濘の中に足を踏み出した。福岡大仏の背中に乗って、泥濘の「海」を渡る。駅ビルは三階まではすでに泥濘の中に沈み込み、かなめたちは、四階の窓にしがみついた。傾いた駅ビルの中を、階段を使って駆け昇る。屋上に置かれた旧博多驛のホームの柱は、支えるものを失った中途半端な姿のままだ。カタハネとハンの者たちが、柱を肩に担いだ。「アタシらが、旧博多驛まで飛んで、柱ば驛に戻すたい」

    5 min
  • 博多駅沈没!④鉄壁の要塞と化した旧博多驛を突破するには…?

    「驛長は、どんたく博多部封鎖によって蓄積された怨念ば、一気に博多駅に向けて、駅ば壊滅させるつもりたい。あの怨念の量は、四年前の駅前陥没の時の十倍はあるばい。あれば一気に向けられたら、博多駅どころか、駅周辺の繁華街一帯が壊滅してしまうばい」「ばってん、マイヅル様が復活したとやったら、もう大丈夫とでしょう?」色めき立つカタハネやハンの者を、マイヅル様が叱責する。「安心しとる場合ではなかぞ。この逆矢が刺さっとる限り、私の力はまだ不十分たい」マイヅル様が戒める。マイヅル様は半透明の頼りない姿のままで、まだ「実体」を取り戻してはいない。「あの結界ば破って、私が受けた矢ば、逆矢ば向けた本人である驛長に戻さん限り、私は本当の力ば取り戻すことはでけんとたい」驛に近づくことができないまま、二人は鉄壁の要塞と化した博多驛の周囲を歩き回った。ホーム側に回ってみる。「博くん、あれ……」ホームもまた、昔の博多驛を再現しているのだろう。だが、一カ所だけ、おかしな雰囲気の場所があった。

    5 min
  • 博多駅沈没!③姿を見せたマイヅル様「このままでは駅周辺が壊滅」と警告

    「争っとる場合ではなかぞ、カタハネ、ハンの者……。いや、フクハクたちよ」「フクハク」と呼びかけられて、カタハネとハンの者は、雷にでも打たれたように、その身を痙攣させた。「フクハク……? フクハク……。そうか、アタシらは……」空中で静止した傘鉾の下に、ホログラムの投影映像のような実体を持たない存在が出現した。「お前たちが一堂に会して、ようやっと、姿ば現すこつができた。お前たち、私ば見忘れたとか?」今まで「声」だけでしか接してこなかった人物の姿が、あからさまになった。そしてその胸には、九年前の住吉神社の歩射祭で放たれた「逆矢」が、深々と刺さったままだった。「おお、あなたは……! マイヅル様!」その姿に、まるで呪縛が解けたかのように、記憶がよみがえったようだ。カタハネとハンの者は、かつては「フクハク」として、マイヅル様を支えていたのだ。「驛長は、どんたく博多部封鎖によって蓄積された怨念ば、一気に博多駅に向けて、駅ば壊滅させるつもりたい。あの怨念の量は、四年前の駅前陥没の時の十倍はあるばい。あれば一気に向けられたら、博多駅どころか、駅周辺の繁華街一帯が壊滅してしまうばい」マイヅル様が、恐ろしい事実を告げた。

    5 min

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2021年3月から9月までRKBラジオで放送した連続ラジオ朗読劇『博多さっぱそうらん記』を、2022年3月までの期間限定で配信します。福岡在住の作家・三崎亜記の新作SF小説を福岡出身の声優・加隈亜衣、俳優・松重豊を迎えRKBアナウンサーが中心となって朗読します。1890年の「市制施行時の名前をめぐる騒動(福岡市か博多市か)」と、2016年の「博多駅前陥没事故」から着想を得て、「博多を名付ける勢力が…