「海の環境が予測を超えるスピードで悪化している」と警鐘を鳴らす海草研究所所長の新井章吾さんをゲストにお招きし、歩きながら1時間、対談する。
新井章吾/栃木県足利市出身。45年間、誰よりも日本の海に潜り続け、海藻を始めとする海洋生物たちの声に耳を傾け、研究を続けてきた「海の生態系のスペシャリスト」。ワゴン車に布団を乗せ、常に現場を走り回り、各地の海に潜ってきた。「ジュゴンは、海草を海底湧水で水耕栽培している」と語る。生き物好きの少年がそのまま大人になったようなひと。学会では異端扱いされているが、全国各地の漁師たちから「新井さんが言ってることは正しい」と絶大な信頼を得る。
近年、日本の海の森が加速度的に消失していることに警鐘を鳴らしている。例えば、日本独自の伝統食文化の土台を支えてきた昆布。大昔から最高級品に指定され、「献上昆布」の別名もある天然真昆布の産地が今年、初めて漁獲できないという態に陥っている。また、四万十川、吉野川、球磨川のスジアオノリが、3年前から収穫量が激減している。藻場がなくなれば、魚も貝もいなくなる。寿司屋も消える。絶滅寸前の沖縄のジュゴン、東日本大震災の黒い津波、集中豪雨による山崩れの被害、昨年の横須賀の異臭騒ぎ、ぜんぶつながっていると新井さんはいう。
これらの問題は、1次産業を支える自然そのものの基礎生産力が落ちていることを意味すると、おおもとの自然環境を改善する『0次産業』を提唱。地下水脈でつながる山と海の物質循環の再生に人生を捧げる。実際、山口県光市の牛島で、環境改善と海底湧水の塩造りに取り組んでいる他、各地で海底の「畑」化、海藻肥料、山からのしぼり水による無施肥栽培、塩水の「海底湧水」による塩づくりなどによる地域活性化を仕掛け、伝統的な里山里海の技術の応用による循環型社会の再構築を目指している。自然の生物基礎生産力を回復させる公共事業を「0次産業」として日本中で全面展開する《日本列島改復計画》が必要だと訴える。
ポケットマルシェ代表の高橋博之が、社会を“生きる“ゲストと対談する「高橋博之の歩くラジオ」。ゲストのみなさんは、農家・漁師、起業家、研究者、行政官、メディア、NPO、学生……と様々な立場から、自分たちの生活する場、自分たちの生きる社会をよりよくしていこうと、熱い想いや強い志をもって働きかけている方々です。
「高橋博之の歩くラジオ」では、あらゆる角度から社会についての議論が交わされ、心に響く言葉が生まれています。自分の“生きる“日々を振り返って、ちょっと立ち止まって考えたり、背中を押してもらったり。このラジオが、そんなきっかけになることを願っています。
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