Pieribone + Chen の in vivo 膜電位イメージング論文を題材に、遺伝学的膜電位センサー(GEVI)、広視野+高速2光子顕微鏡、U-Netベースのノイズ除去手法について掘り下げました (4/30収録)
Allen Institute for Neural Dynamics の SAC
クラカウア―のアンチreductionistペーパー
題材とした論文:High-speed low-light in vivo two-photon voltage imaging of large neuronal populations
Vincent Pieribone
Jerry Chenラボ
FlaSh (Siegel and Isacoff 1997)
SPARC (Ataka and Pieribone 2002)
VSFP1 from Knopfelラボ (Sakai et al.) ただし、黎明期プローブは膜上に移行しづらく使いにくいという問題があり、使いづらかった。
GEVI開発で気を付ける点は以下(St-Pierreによるレビューを参照)
細胞質ではなく膜上にセンサー分子がある局在する必要があるため、センサーのTraffickingが良く無ければいけない
膜状にしか存在できないため、利用可能なセンサー分子の数が少ない。暗いし、SN比の要求が高い
上の問題に付随して、照射強度を強くする必要があるため、褪色が速い
脱分極に対して蛍光が増えるか減るか
二光子励起ができるか2005年に岡村先生が報告したホヤ(Ci)由来の電位依存ホスファターゼ(VSP)の電位感受ドメイン(VSD)は膜移行性が良く、これを用いたプローブが2007年から出てきた。また、2011年にはロドプシンが電位依存的に蛍光を変化させるタンパク質として使えることが報告された。現在では、この2つの電位センシングモチーフが主に使われている。
1. Voltage sensitive phosphataseのVSDを使った系列
1-1: VSDの末端に2つの蛍光タンパク質をつけてFRETするタイプ
VSFP2
Mermaid
VSFP-Butterfly 1.2
Mermaid2と2β1-2: VSDのC末に蛍光タンパク質を入れるタイプ(特にpHluorine改変体)
ArcLight
ArcLightメカニズム論文
Marina 正の方向への変化VSDのC末に入れるタイプは、FRETもArcLightもキネティクスが遅い。しかしArcLightについては未だにGEVIの中で一番大きい蛍光強度変化を示す。
1-3: VSDの細胞外ループにcpGFPを挿入するタイプ
ASAP1 from Michael Linラボ, NN 2014。Francois St-Pierreが筆頭。VSDベースでキネティクスが良いモノを作るのが目標。VSDは4回膜貫通型タンパク質であるが、そのHelix3-4間のextracellular loop のうち、A147-T148の間) に円循環変異を施したsfGFP-OPTを入れる。
ASAP2s
ASAP2f
ASAP3
ASAP4 正の方向への変化
JEDI-2P 二光子でスクリーニング
SpikeyGi1&2 今回の論文
GFPが光るしくみ:Ser65–Tyr66–Gly67が自己触媒反応(特にArg96とGlu222に依る)を経て蛍光団HBIを形成し、チロシン由来フェノール基が脱プロトン化されると励起可能になる。脱プロトン化に主に関わる残基はHis148, Thr203, Ser205(GFPの構造論文)。 ちなみにGCaMP2では、GFPで言う203番目のthreonine側鎖の方向が本来あるべき位置に近づくこと、His148の代わりにCaMのArg377が水分子を介してHBIと水素結合を形成すること、が発色団の脱プロトン化に重要らしい(GCaMPの構造論文)
cpGFP:GFPの円循環変異では、N末・C末をリンカーで繋ぎ、144番目の残基と145番目の残基新しくC末・N末としているものが主流。つまり、GFPのHis148はcpGFPではHis4となる。
ロドプシンのPhotocycle(神取先生レビュー):ground state→L→M1→M2→N→O
電位依存的に光る仕組み:Nの時に540 nmの光を受けるとQというstateに代わって、Qの時に570 nmの光を受けると強い蛍光を発する。
DTDモチーフ:シッフ塩基からプロトンを受け取る細胞外側のD(ArchだとD95、Ace2だとD81)や、脱プロトン化されたシッフ塩基に細胞内側からプロトンを渡すD(ArchだとD106、Ace2だとD92)を含むモチーフ。
PROPS from Adam Cohen ラボ
Arch
QuasAr1,2
QuasAr3, paQuasAr3
Archon from Boydenラボ
QuasAr6a,b 2-2: ロドプシンのC末端に蛍光タンパク質/色素を融合し、ロドプシンとFRET
ロドプシンのC末端に蛍光たんぱく質をつけて励起。電位依存的な構造変化が起こって、蛍光たんぱく質がロドプシンに近づいた時にFRETが起こり、暗くなる。つまりロドプシンが電位センサーかつFRETアクセプターとして働く。ロドプシンより励起に必要なレーザー強度が少なくて済み(1/50~1/100程度)、ロドプシン単体のものほどではないがキネティクスが速い(ASAP系よりも速い)。
Ace2N-mNeon from Schnitzer lab
VERNAM 赤
Ace-mNeon2, VERNAM2
pAceとpAceR 上と同じ論文中で。正の方向への変化
Voltron JaneliaのEric Schreiter lab Janelia Fluorの利用
Positron 正の方向への変化
第三の原理:hVOS
Yuste達がside-by-sideで比較した論文
StayGoldJerry ChenのCRACK。とそれを読んだNR回。
Elly Nedivi, Peter Soとの共著の仕事。抑制性シナプスのクラスタリングを見たもの。
広域顕微鏡開発で使われたTemporal Multiplexing
単純な仕組みとはいえ、<10nsの時間解像度でシグナルを処理するFPGAの設計は結構トリッキーらしい(Kaspar談)。
2x
Jerry Chen, Fabian Voigt, Helmchenの広域顕微鏡
Spencer SmithのTrepan2p
Chen, Spencerの広域顕微鏡
SpencerのDiesel2pSpatial MultiplexingはそれこそPeter Soが先駆け
GFPの蛍光が2~3nsなので8nsのtemporal delayではcross-talkないのでは...と言っていますが、これは光子数が1/eになる時間なので、e^3~=20から、ざっくり全蛍光の5~10%くらいは漏れ込んでもおかしくないことになります。
Self-supervisingの説明を簡略化のためにDeepCADを例に用いて行いましたが、DeepVIDではspatialなinterpolationも行われています。ターゲットにするフレームの10%(この値はハイパーパラメタサーチの結果empiricalに決めている)をblindにしておいて、L2の計算をこのblind pixelsのみに対して行うことで、spatialな情報も利用するようになると考えられます。Shot-noiseはtempora/spatialともに独立なノイズになりますが、signalはspatialにもlocal correlationが高いことが多いので、ノイズだけが主に消えることになると考えられます。
元になったアーキテクチャ・フレームワーク
RonnebergerらによるU-Netと3D-U-Net
U-Netを元にしたノイズ処理の元ネタ: Noise2Void
タンパク質構造予測でドッキングシミュレーションとかまでできるようになってきたみたいですが、構造のデータに基づいて、rationalに、センサーのリンカーはどのくらいの長さでどの配列が良いのか、とか、どこにどういう変異を入れるとどういう性能が上がるか…みたいなのは予測できたりするんでしょうか。Lin Tianのは配列データだけで構造の情報はあんまり使えて無さそうだし。それはさておきQuasAr4,5をご存知の方はこっそり教えてください笑(脇)
VoltronシリーズのEricがオプシンベースのやつも2p励起で動くとか最近のオプティカで言ってたらしい。タイトルはBando, Yusteのreview、"...in a way a “holy grail” of neuroscience, could be carried out by imaging membrane potential."より。 (萩)