オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー 楠元純一郎 東洋大学教授
パーソナリティー レオー 美術家
常連ゲスト 松尾欣治 哲学者・大学外部総合評価者
<われらの会社法9(株式の内容および種類)>
ラジオ収録20200620
1 普通株式と株式の多様化
会社と投資家(株主を含む)の思惑
会社→緊急に資金調達はしたいが、新株発行により議決権が増え、会社を買収されたり、取締役の地位を失いたくない。第三者割当先が見つからない。
投資家(株主)→無機能資本家にとっては受ける配当金を増やしたい、譲渡先が見つからない場合、会社に株式を買い取ってもらいたい、機能資本家にとっては、経営権を取得または維持強化したい。その他、株式の内容が不利に変更されたら困る。
標準的株式→普通株式
多様な株式→会社の思惑と投資家(株主)の思惑による株式の多様化。
定款の定め(定款変更手続による←株主総会の特別決議)
① 全株式に一律に一定の条件を付加
② 一部の株式に権利の内容の異なる条件の付加または新しい種類の株式の発行(種類株式)
2 全株式に一律に一定の条件を付加(会社107条1項)
① 譲渡制限(株式の譲渡には会社の承認を要する)→閉鎖会社化・非公開会社化
株式譲渡は原則自由。しかし、会社にとって好ましくない者を排除したい場合。
全部譲渡制限にかかる定款変更手続は、特殊決議(会社309条3項1号、111条2項・324条3項)
合併、相続のような包括承継の場合は譲渡制限の対象外→会社の株主に対する売渡請求権を定款で定めることができる(会社174条)
② 取得請求権(株主の会社に対する株式の買取請求権)→株主にとって株式の売却先がない場合、会社が公正な価格で買い取ってくれる点で、株主にメリット。→取得の対価(新株予約権、社債、新株予約権付社債、株式等以外の財産としての金銭等)、請求期間等を定款で定める。取得した株式は自己株式。
③ 取得条項(会社の株主に対する強制取得権)→会社による自己株式の取得・株式の消却。敵対的企業買収防衛策の一つ。対価は株式等または金銭等。
定款には取得事由も定めるので、あらかじめ定めたその事由が生じない限り、発動しない。
3 内容の異なる種類株式(会社108条)
① 剰余金の配当の優劣に関する種類株式
優先種類株式、劣後種類株式、混合種類株式(剰余金の配当については優先するが、残余財産分配については劣後する)
会社の業績がよく、株価値上がりが期待される場合には、劣後種類株式を発行しても引き受け手がおり、会社にとっては余裕で資金調達が可能。無議決権種類株式と優先種類株式を組み合わせて発行すれば、会社の経営支配権が脅かされることなく、資金調達がしやすいというメリットもあり。
子会社業績連動型配当の「トラッキング・ストック」も剰余金配当種類株式。
参加的優先種類株式→普通株式に優先する優先種類株式が、優先配当を受けた後、残りの株式について普通株式とともにまた配当を受けられる。
非参加的優先種類株式→参加的優先種類株式以外
累積的優先種類株式→優先配当金額に達しない場合の不足額を累積し、次期以降に優先的に支払われるもの
非累積的優先種類株式→累積的優先種類株式以外
② 残余財産の分配の優劣に関する種類株式
③ 議決権制限種類株式
株主総会の全部または一部の事項について議決権を行使できない種類株式。
議決権がまったくない株式→完全無議決権種類株式
そもそも配当・株式の値上がりにしか興味のない株主も存在するし、会社は経営支配権の変動に憂慮することなく資金調達ができる点でメリット。
単元株式数を異にする種類株式も議決権種類株式
上場企業 A種類株式=100株1単元、B種類株式=10株1単元
※議決権制限種類株式の発行は、発行済株式総数の2分の1以下でなければならない(会社115条)←経営者等一部の少額出資者による支配に歯止めをかける趣旨。
④ 譲渡制限種類株式
⑤ 取得請求権付種類株式
対価は株式等、金銭等
⑥ 取得条項付種類株式
一定の事由が生じた場合に(発動事由)
対価は株式等、金銭等
⑦ 全部取得条項付種類株式(株主総会特別決議によって発動)
倒産状態にある会社の任意整理→100%減資を可能にする手段→しかし、倒産状態にない会社がその種類株式を発行する場合→少数派株主の締出しに利用されるおそれあり。
MBO等において、第1段階のTOBで取得できなかった残りの株式を第2段階で株主総会特別決議で強制取得する手段。
対価は株式等、金銭等
事前の開示(株主向けの通知・公告)
反対株主の裁判所への取得価格決定申立権
株主が不利益を受けるおそれがあるとき→株主による差止請求権(会社171条の3)
⑧ 拒否権付種類株式(種類株主総会の承認がなければ、普通株主総会決議が否決される)(黄金株)
⑨ 取締役・監査役の選解任種類株式
非公開会社のみ発行が認められる(会社108条1項ただし書)
4 種類株式発行会社における種類株主総会
→各種類株主間における利益調整
① 定款による種類株主総会
種類株式の発行において、定款で種類株主総会の決議を要する旨の定めがある事項(会社323条)
→株主総会決議に加えて、種類株主総会決議。
→原則として、普通決議。
→株主総会および種類株主総会の決議がなければ効力を生じない。
② 法定種類株主総会
会社が一定の行為(定款変更→株式の併合・分割・無償割当て、単元株式数の変更、新株・新株予約権を引き受ける者の募集、新株予約権の無償割当て、合併・会社分割・株式交換・株式移転)をする場合
<種類株式の発行により>
→ある種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合(会社322条1項本文)
→株主総会特別決議に加えて、種類株主総会の特別決議を要する。
(会322条1項、324条2項4号)
→種類株主総会の決議がなければ効力を生じない。
→ただし、種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることが
できる(会社322条2項)。
<既存の株式の内容に「特に重大な不利益変更内容」を付加する場合>
定款変更に関する株主総会の特別決議に加えて
① 譲渡制限を付加する場合→種類株主総会の特殊決議(議決権を行使することができる株主の半数以上で、当該株主の議決権の3分の2以上の多数で可決)が必要で、反対株主には株式買取請求権が認められる(会社111条2項1号、324条3項1号、116条1項2号等)。
② ある種類株式に全部取得条項を付加する場合→種類株主総会の特別決議が必要で、反対株主に株式買取請求権が認められる(会社111条2項1号、324条2項1号、116条1項2号等)。
③ ある種類株式に取得条項を付加→その種類株主全員の同意が必要(会社111条1項)。