このブラウザでは再生できません。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
コーヒーをすする音
「完全に暴走し出した感じですかね。朝戸。」
「…。」
「片倉班長?」
「あ、あぁ…。」
再びコーヒーを啜った富樫は片倉を珍しいものを見るような目をして続ける。
「案外、班長もセンチなんですな。」
「…。」
「センチになるのは明日で良いじゃないですか。」
この言葉に片倉は一息つく。
「…あぁそうや。無事明日になれば、そこで思いっきり怒って笑って泣けば良い。マサさんの言う通りや。」
こういうと片倉は立ち上がった。
「椎名はこの朝戸の行動については、本当に関知しとらん感じですね。」
朝戸の裏切り行為は直ぐさま椎名に伝えられた。この報を受けた椎名の表情は変わることはなかった。ただ「そうですか」とひと言漏らし、朝戸の行方に関する情報は無いかと尋ねるだけ。それも無いと知ると「わかりました」と言ってヤドルチェンコと再び連絡をとっている。
「椎名からは朝戸の損切り感が出とります。」
「それすらも奴の演技ということはない…か。」
画面に映る椎名から視線を逸らし、富樫は片倉を見る。
「仮にこの朝戸の裏切りも椎名の計画の範疇やったとしても、私らには何の対策もできません。何れにせよ椎名は朝戸の排除をヤドルチェンコに依頼しとりますから、熨子山の件を椎名から聞いたヤドルチェンコは、ウ・ダバネットワークを駆使して朝戸をあぶり出すでしょう。」
「警察がテロリストに対応を任せるか。」
「朝戸が死ぬことになるかもしれませんが。」
片倉は口をつぐんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「現場は警察が入っているから、ここはどうにもならない。熨子山の班は予定から外してくれ。」
«Сейчас на месте происшествия работает полиция, поэтому здесь ничего не поделать. Исключите группу Ношияма из плана.»
「賠償してくれるんだろうな。」
«Ты возместишь убытки, правда?»
「なに?」«Что?»
「こっちはあんた側の不手際でみすみす損害を被ったんだ。賠償してもらわないといかんだろう。」
«Мы понесли убытки из-за твоей ошибки. Ты должен возместить нам ущерб.»
ヤドルチェンコの怒りの様相が電波を通じて伝わった。
「勿論それはする。だが今はそんな状況ではない。」
«Конечно, я это сделаю. Но сейчас не та ситуация.»
「倍だ。」
«Двойная оплата.»
「何だと。」
«Что?»
「報酬を倍にしろ。合わない。」
«Увеличь гонорар вдвое. Это не компенсирует наши потери.»
「俺に手持ちはない。成功の暁には本国から引っ張る。それでどうだ。」
«У меня нет наличных. Когда мы добьёмся успеха, я получу деньги из нашей страны. Как насчёт этого?»
「絶対だな。」
«Абсолютно точно?»
「ああ絶対だ。」
«Да, абсолютно точно.»
「野郎、クソ野郎!」
«Ублюдок!»
あまりに酷い言葉のため、椎名は携帯を自分の耳から遠ざけた。
「なんでこんな大事なミッションに素人をあてがったんだ!?ただの素人ならまだ良い。キチガイと来ている!」
«Почему на такую важную миссию назначили новичка?! Если бы это был просто новичок, это было бы еще полбеды. Но это же сумасшедший!»
「それは空閑の人選だ。」
«Это был выбор Кугана.»
「くそっ!」
«Черт возьми!»
しばし沈黙が流れた。
「すなまい…。取り乱した…。仕事はやる。やり遂げる。だがその暁には倍の報酬をよこせ。」
«Извини… я потерял самообладание… Я выполню работу. Но когда я справлюсь, ты удвоишь гонорар.»
それは心配ない。おれが必ず対応する。椎名はヤドルチェンコを落ち着かせるようにゆっくりと低い声で発声した。
バイブ音
椎名の携帯にメッセージが届いた。
「それが起爆スイッチになる。朝戸のやつは無効化済みだ。予定時刻に金沢駅に居てくれ。」
«Это будет детонатор. Асато уже обезврежен. Будь на станции Канадзава в назначенное время.»
「わかった。」
«Понял.»